日本を代表する名脚本家・山田太一の長編小説「異人たちとの夏」を「荒野にて」「さざなみ」のアンドリュー・ヘイ監督が映画化。1988年に日本でも映画化された喪失と癒やしの物語を、現代イギリスに舞台を移してヘイ監督ならではの感性あふれる脚色と演出で描き出す。
12歳の時に交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム。ロンドンのタワーマンションに住む彼は、両親の思い出をもとにした脚本の執筆に取り組んでいる。ある日、幼少期を過ごした郊外の家を訪れると、そこには30年前に他界した父と母が当時のままの姿で暮らしていた。それ以来、アダムは足しげく実家に通っては両親のもとで安らぎの時を過ごし、心が解きほぐされていく。その一方で、彼は同じマンションの住人である謎めいた青年ハリーと恋に落ちるが……。
「SHERLOCK シャーロック」のアンドリュー・スコットが主人公アダム、「aftersun アフターサン」のポール・メスカルがハリー、「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベルと「ウーマン・トーキング 私たちの選択」のクレア・フォイがアダムの両親をそれぞれ演じた。(映画.comより)
<2024年4月21日 劇場鑑賞>
名作でした。日本の小説が原作だなんて知らなかった。なんてこと!日本に居ながら恥ずかしい。こんなすぐれた作品を知らなかったなんて。
映画は誠実そうな主人公アダム(アンドリュー・スコット)の毎日を淡々と描きますが、雰囲気はどこか世紀末っぽくて、滅びつつある地球なのかなぁって感じです。彼は小説家みたいです。ある日男(ハリー)が一人訪ねてきます。「このマンションには君と俺しか住んでない。仲よくしよう」みたいなこと言って。見ている私たちは「えぇっ?」って感じです。二人しか住んでいないマンションって・・・。それで、彼らは双方男色だったこともあって、親しくなります。
ある時、アダムはふと、小さい頃両親と住んでいた部屋を訪ねてみました。するとどうでしょう。あのころのままの姿で両親が住んでいたのです!そんなことはおかしい、とわかっていながら、それでもアダムはつい何度も訪ねてしまいます。この頃はまだ、私たち観客には両親は亡くなっていることは知らされてないのですが、それでもアンドリュー・スコットの父親がジェイミー・ベルなはずありません。ジェイミーの方が若いんじゃないですか?詳しくはわからないけれど。観客はここで気が付くようになってるんだと思います。
それでも、アダムはハリーと楽しく過ごしながら、時々両親を訪ねてそれなりにバランスよく生きてゆくのですが、両親は12歳の時交通事故で亡くなったことは、自分が一番よく知っているわけですからいつまでも続かないことはわかっています。また、子供の頃から抱えていた孤独と、ゲイであることのカミングアウトも試みました。しかし、少し前の世代であるアダムの両親の反応は紋切り型。最終的に受け入れるにせよ、最初は否定的なものでした。
そして、やがてはハリーの秘密も明らかになって・・・。
深い物語でした。ラスト近くは衝撃でした。予想できなかった。日本に居ながらこんな名作を知らずに来たなんて、私の人生薄っぺらかったんだなぁって(笑)。ちなみにハリー役の俳優さんは「アフターサン」で父親役をやっていた人ですね。おすすめです。
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