田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

フラッグ・デイ 父を想う日(Flag Day)

2023年01月02日 13時49分42秒 | 日記

Flag Day – film-authority.com

Sean Penn marque son retour au cinéma dans la bande-annonce

FLAG DAY - Festival de Cannes 2023

 名優ショーン・ペンが初めて自身の監督作に出演し、実娘ディラン・ペンと父娘役を演じた人間ドラマ。ジャーナリストのジェニファー・ボーゲルが2005年に発表した回顧録を原作に、愛する父が実は犯罪者だったと知った娘の葛藤と家族の絆を、実話を基に描き出す。

1992年、アメリカ最大級の偽札事件の犯人であるジョン・ボーゲルが、裁判を前にして逃亡した。ジョンは巨額の偽札を高度な技術で製造したが、その顛末を聞いた娘ジェニファーが口にしたのは、父への変わらぬ愛情だった……。

父の正体を知り苦悩しながらも弱さや矛盾に満ちた父への愛情を深めていく娘をディランが熱演。共演に「ボーダーライン」のジョシュ・ブローリン、「ウィンターズ・ボーン」のデイル・ディッキー。「フォードvsフェラーリ」のジェズ・バターワース&ジョン=ヘンリー・バターワースが脚本を手がけた。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。(映画.comより)

 

 

<2022年12月31日 劇場鑑賞>

 辛かった・・・。本当に辛かったです。ショーン・ペン演じる父親は、才能豊かで実はなんでもできるんです。自覚しているかどうかは知らないけれど。どういう育ち方をしたのかは描かれないからわからないけれど、勉強もできたはず。どこでどんな風に間違って、これだけ何も続かない自堕落男になったのか。本当にもったいないと思いました。あるいは、賢いけれども落ち着けないという一種の病気みたいなものだったのかもしれません。

 子供たち(姉と弟)が幼い頃から、父はとても陽気で楽しく、一緒に遊んでいても本当に楽しい人でした。絵が上手で、いろんなことも教えてくれました。でも、どんなに楽しく暮らしていても、ある日突然いなくなるんです。何年もして、またふらっと戻って来る・・・そんなことの繰り返しでした。それでも、子供たちはお父さんが大好きで、いる間は目一杯楽しんだものでした。しかし、計画性のない投資、コツコツと何かを継続して行う姿勢の欠如などで、何かに挑んでは失敗し払えもしない借金に苦しむ、しかも肝心の本人は姿を消す・・・そんなことが重なり、お金もない母親は病み、子供の面倒も見ずにアルコールに溺れては寝てしまう生活。路頭に迷った子供たちは家を出、おじを頼って父親のところへ連れて行ってもらいます。今は別の若い女性と暮らしている父は、相変わらずお調子者で、子供たちを大歓迎。楽しく過ごします。女性も子供たちに親切です。でも、やっぱりヤバいことに手を染めてるんですね。ただならぬ雰囲気の兄さんたちがやって来たかと思うと、「待ってくれ」と懇願している父の姿が。ボコボコにどつかれるくらいでは済まないようです。結局、子供たちは母親の元へ。

 主人公である娘のジェニファーは、半グレみたいな恰好をしてちょっとスネちゃってます。それでも、行くところもないし、とりあえず学校へ行かなきゃいけないし、何年かは荒れているとはいえ、母親と住んでいます。が、いつからか母にも彼氏がいて一緒に住んでいます。あるいは結婚して夫だったのかもしれません。でも、ある日、ジェニファーはこの男に襲われます。たまたま母親が物音に気付き「何をしているの」と言ってくれたから良かったものの、その後がいけませんでした。「あなた、部屋を間違ってるわよ」そう、責めなかったのです。あくる朝、男は何食わぬ顔で出勤して行きました。母を責めるジェニファー。でも、母は「面倒をみてくれてるのに」なんて言うのです。話になりません。どうしてお母さんは私を守ろうとしてくれないの!耐えられなくなったジェニファーは、家を出ようとします。母「どこへ行くの。当てもないくせに」ジェニファー「当てくらいあるわよ」母「あの父親に何ができると?いい加減だしあなたのことなんか考えてないわ。ウソばっかりだし」など、父親の悪口、連打しまくり。こんなに娘に対して父親の悪口を言うのかな、と思うほど。ちょっとびっくりしました。まぁお母さんの気持ちはわからんでもないですけど、でも娘の部屋に忍んでいった男をかばっちゃいけません。論外です。ここで生活費(お金)の重要度を本当に考えてしまいました。お金のためなら、ここまでになるのかなって。自分の娘ですよ!

 再び家を飛び出したジェニファーは、ショーン・ペン演じる父親のところへ。今度ばかりは彼女も必死です。生きてゆかなきゃならない。仕事を見つけて働きながら、文章が得意だった才能を生かし、なんとか大学へ入って勉強するすべはないかと模索します。父親にも立ち直らせようとあの手この手、まさに必死です。でもね、どれだけ娘が誠心誠意尽くしても、ダメなものはダメなんですね。もうどうしようもありません。せっかく仕事を見つけても続かない、頭ではわかってるはずなのに、噓をつく、見栄を張る、あげくに再び収監されるようなことになって、娘が面会に行ってもいいわけばっかり。まるで自分こそ被害者みたいな表情で、言い訳してるか相手を責めているかなんですね。なんでこうなんでしょうね。悔しくて仕方がなかったです。頭のいい人なのに。なんだってできるはずなのに。

 ジェニファーはやがてジャーナリストとして成功します。でも、どんどん落ちてゆくお父さんは、警察も感心するほどの精巧な偽札を作った挙句に、申し開きの機会にも来ずに逃げ回り、最悪の結果を招きます。たった一人で、顔も素性もすべてわかっているのに逃げおおせることなどできるはずはありません。そして娘は、それをテレビで見ることになるのです。

 悲しすぎます。辛すぎました。なんでここまで娘が尽くしてくれているのに・・・。多分、お父さんもわかってるんです。そのこたえ方が間違っているのか、自堕落が身に沁みついてしまって、もはや真面目に勤め始めたら発疹が出るとか、そのレベルなんです、きっと。

 人のサガって、本当に悲しいですね。深く心に残る映画でした。

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