かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

寂寥な、桜に雪

2020-04-01 19:44:45 | 気まぐれな日々
 今後、こんな桜を見ることがあるだろうか。
 全世界が不穏と不安の状態のなか、自然だけがいつものように息をしているように見える。
 桜は、東京で観測史上最も早い3月14日に開花し、22日に満開(靖国神社の標本木)を記録した。その後、寒い日があったこともあり、東京・多摩の桜も散らずに咲き誇っていた。
 その満開の桜の3月29日、東京で雪が降った。

 その日、朝9時に目が覚め、外庭のカーテンを開けると綿のような雪が降っていて、庭の土は一面真っ白で、垣根のカイヅカイブキも白い帽子を覆い被った状態になっていた。
 雪は昼過ぎになっても降り続いていた。
 1時過ぎ頃になると霙(みぞれ)に変わった。霙になると雪も溶けだすので、私は1時半頃に桜の咲いているすぐ近くの公園へ出向いた。
 外の道は雪に覆われて、10センチぐらいは積もっていた。
 公園の桜は、小さな雨と残った雪と一緒に煙っていて、奥の雑木林と相まって幻想的な雪景色だ。(写真)
 傘をさしたまま私はしばし霙に紛れる桜を見ていた。誰もいない公園の平地に、小さな雪だるまが置き去りにされたようにあった。子ども連れの親子か誰か午前中にでもやって来て、作っていったのだろう。
 この雪も、間もなく消えゆく。

 この日は、都心でも1センチの積雪とあった。
 桜が満開の時期に都心で1センチ以上の積雪を記録したのは、1988年以来32年ぶりとのことだった。その年は満開3日前の4月8日で、9センチの積雪とある。
 私はこの日のことをよく覚えている。
 その日、朝起きたら雪が降っていた。桜がほぼ満開のときだったので、雪のなかの桜が見られるとばかりカメラをバッグに入れて家を出た。
 当時会社勤めで、勤務先の市ヶ谷の外濠の周りには桜が咲き誇っていて、毎日見ていたのだった。市ヶ谷駅に降りたったとき雪はすでにやんでいたが、外濠の雪景色のなかの桜の写真を撮った。
 「雪月花」を意識した最初の「雪花」で、その1枚の写真はまだ手元にある。
 その後、多摩で1度体験したので、意識的な「雪花」は今度で3度目である。

 都心での桜の満開発表後の積雪は、1969年以来51年ぶりで、その年は4月10日満開発表で、4月17日の積雪2センチとある。
 地球温暖化か、桜が咲くのも早くなっているようだ。
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