かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

◇ インファナル・アフェア

2009-03-17 03:35:27 | 映画:アジア映画
 アンドリュー・ラウ、アラン・マック監督 アンディ・ラウ トニー・レオン アンソニー・ウォン エリック・ツァイ ケリー・チャン サミー・チェン 2002年香港

 幕開けと共に、「八大地獄の最たるものを「無間地獄」という。絶え間なく責め苦にあうため、そう呼ばれている」という文字が出てくる。
 そして、仏陀いはく。「無間地獄に死はない。長寿は無間地獄最大の苦しみなり」と続く。

 舞台は香港。マフィアの手先のラウ(アンディ・ラウ)が警官になりすまし、情報をボス(エリック・ツァイ)に流す。警官のヤン(トニー・レオン)がマフィアの組員になり、警察(上司アンソニー・ウォン)に情報を流す。この二人の男が、マフィアの麻薬取引に絡んで交錯する。
 男たちに安息はない。二人の男は、次第に身元が暴かれ出し窮地に追いこまれていく。だから、男たちには冒頭の「無間地獄」が待っているのだ。
 かといって砂漠のような乾燥した物語ではない。なかに二人の恋が挟まれているし、自分を見失いがちなヤンの相手は精神科医(ケリー・チャン)であり、ラウがただ一人心を休ませるのが婚約者で小説を書く女(サミー・チェン)という凝った設定だ。ヤンの家庭をしのばせるシーンもある。
 それに、スパイと囮調査だけの警察とマフィアの単純な構成に終わっていない。香港映画にありがちな派手なアクションやカーチェイスはなく、二人の男が織りなす抑えたハードボイルドになっているのだ。

 見終わった後、モノクロ映画だったような記憶が残る。
 しかし、確かに赤い血が流れたと思い出す。
 この映画のリメイク権をハリウッドが買ったというのも頷ける、上質なハードボイルド映画である。
 二人のスパイ、アンディ・ラウの剛とトニー・レオンの柔の交叉、マフィアのボスのエリック・ツァイの悪玉と、警視アンソニー・ウォンの善玉の対比も見所がある。

 最後に流れる歌が「無間地獄」を表わしてて、なかなかいい。いや、仏教の教えを、はたまた人生を表わしているといえよう。

 おまえの命の分も おれは生きていく
 たとえ苦しくとも 過去の日々は忘れ かすかな未来を追って
 命は短すぎ 明日は限りなく遠い
 永遠というほど遠くないが
 星の数ほどの道は行き先も見えず 回り続ける木馬
 選んだ道を歩み続けても 夢みる彼岸になぜ辿り着けぬのか
 ……
 命の限りに日々歩み続ける 生きて幸せを手に入れるため
 道の果てがやっと見えてきたとき ふと気づく そこは出発点
 すべて振り出しに戻る

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