
国籍不明の路地裏で 戸惑いがてらに 灯りがともる
ここは横浜 長者 福富 野毛通り
関外の大岡川沿いの黄金町を出発して、若葉町から長者橋を渡って日ノ出町、宮川町までやってきた。
鮨屋の庭に建ててある美空ひばり像を出て、北へ進むともう野毛町である。
*懐かしき盛り場の匂い、野毛の通り
「野毛町」は、終戦直後は闇市が並び、その後も盛り場として横浜で最も賑わったところだった。
現在、横浜の新しい顔は、関内である北の横浜港方面の、みなとみらい・山下町界隈に移っているが、野毛町は、街中に交わる通りや小路にかつての盛り場・歓楽街の一端をあちこちに残している、栄華の街だ。
日ノ出町、宮川町から北の桜木町駅方面に続く通りは、野毛大通りである。この野毛大通りを北へ進むと、野毛本通りに交差する。
ずっと歩き続けたので、ここらあたりでちょっと休憩をしようと野毛本通りを見ると、次の野毛仲通りと交わるところに「カフェ・カルディー」なる店が目に入った。カフェとあるが街中によくあるカフェ・チェーン店とは違い、昔ながらの町の喫茶店である。
ドアを開けて中に入ると、ママさんが一人でやっていて、地元の人が憩いでやってくるアットホームな雰囲気の店だ。どこか田舎の街にやってきたような気分になる、妙に落ち着く店である。コーヒーを飲んで一息つく。
店を出たら、野毛本通りを東側へ進み、野毛小路の先を左折(北)した通りに「福音喫茶メリー」という喫茶店があった。キリスト教の伝道を行っているのだろうか。造りも雰囲気も厳かなので、ドアを開ける気にはなれなかった。
その通りを過ぎると、ちょっと空気が変わった通りに出た。通りの入口に提灯を並べた商店街アーチがあり、両サイドには飲食店が並ぶ野毛柳通りだ。
地方都市によく見かけた、懐かしさを漂わせる繁華街・飲食街・小路だ。こんな通りで飲むのもいい。なんとなく、銀座にある迷路、三原小路を想起した。
*都橋から宮川橋へ流れる都橋商店街
柳通りを離れて都橋から大岡川に沿って歩いたら、宮川橋に向かってなだらかなカーブの川の流れに添って店が連なっていた。この2階建ての長屋のような繋がった建物群が都橋商店街で、またの名をハーモニカ横丁というそうである。
よく見れば、1階の店舗は道路上に正面は向いていて、2階は正面が河川に向いているという個性的な集合店舗である。
もともとは東京オリンピック開催にあたり、戦後野毛本通りなどの路上で営業していた露店を撤去し、その店を収容するために1964(昭和39)年に川沿いの道路上に建設されたものという。
そうか、私が上京した年に建てられたのか。店並みに疲れは隠せないが、明かりがともり、まだ営業している店も多い。年月を経て、通り自体に味が滲み出ている。
*横浜のコリアン・タウン
宮川橋を渡ると、「福富町」に出た。順に、福富町西通り、福富町仲通り、福富町東通りとなっている。
街は明らかに歓楽街である。バーなどの飲食店もあるが、ソープランドの店が目立つ。交差点に建つ実直そうなビルには、伝統を思わせる英国屋のネオンが通りを睥睨している。老舗スーツ仕立店と見間違えてしまった。
さらに歩き進むと、韓国料理店が多く目につく。すると、通りにネオンに彩った「KOREA TOWN」のアーチが輝いている。その横には、「福富町国際通り」と添えられている。(写真)
東京の新大久保にも堂々と街に「コリア・タウン」を謳ってはいないので、画期的な宣言街だろう。
すぐ近くの若葉町には、タイ・タウンのごときタイ料理店とマッサージ店が多く目についた。
この界隈は、横浜における多国籍・無国籍的な盛り場の街である。東京・新宿の歌舞伎町に比肩すると言っていい。
もうとうに日は暮れて、街には明かりがともっている。ここまで来たら、青江三奈の歌う「伊勢佐木町ブルース」で名高い伊勢佐木町に足を踏み込まずに、ここを後にするわけにはいかない。
すぐ隣の「伊勢佐木町」の盛り場であった通りを確認し、JR関内の駅に向かった。
関内の駅の近くに「吉田橋」がある。
もともとここには川(派大岡川)が流れていて、伊勢佐木町と馬車道を繋ぐ吉田橋が造られ、ここにいわゆる「関内」の基点ともなる関門番所が置かれていた。
現在の橋は、幕末期の1862年に造られた木造橋より5代目にあたる。派大岡川は1971(昭和46)年に廃川となり、現在その跡には半地下構造の首都高速横羽線が、両岸の地上部は新横浜通りが通る。
ここから野毛町方面に向かって、「吉田町」なる町名も残っている。
*
JR関内駅から石川町に出て、中華街に向かった。
馴染みの東北・満州料理である。
酒(ビール、紹興酒)の肴に、羊肉串、よだれ鶏(口水鶏)、海鮮(エビ・ホタテ・イカ)XO魚醤炒め。寒いこともあって、今回の本命料理である羊肉牡蠣酸菜土鍋。それに海鮮炒飯。
つい、食べすぎて、飲みすぎてしまった。
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