かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

鹿児島への旅① 霧島神宮

2016-03-22 00:55:30 | * 四国~九州への旅
 鹿児島は近くなった。
 かつて博多から西鹿児島(鹿児島中央)駅まで特急で4時間半余かかっていた。鳥栖からは4時間余だった。
 2011年に九州新幹線が開通してからは、博多から鹿児島中央まで「さくら」だと約1時間40分、新鳥栖駅からは約1時間20分である。途中熊本だけに止まる「みずほ」だと、博多から鹿児島中央まで1時間20分を切る。
 僕は便利さやスピードが必ずしもいいとは思っていないのだが、福岡、佐賀から鹿児島へ行くには新幹線でないと直行の特急や急行はなく、各駅停車や快速電車の乗り継ぎになり、以前より随分時間もかかるのだ。
 つまり今の列車利用は、少し長い距離は新幹線を利用せよというシステムになっている。新幹線が主力となった列車は、大都市である点と点を結ぶ移動機関・手段であり、旅をしているという感覚は薄くなっている。
 北海道新幹線の開通に伴い、津軽海峡を越えた青森から札幌の急行列車「はまなす」の廃止に続き、昨日、2016年3月21日(上野着)で上野から札幌間の寝台特急「カシオペア」も定期運用をやめた。
 これで、日本の急行列車はなくなり、定期的な寝台特急はサンライズ瀬戸・出雲だけとなってしまった。
 新たな新幹線の増設に象徴される点と点を結ぶ高速網化は、日本の東京の一極集中型を地方に散在させているにすぎない。九州でいえば、福岡市(博多)がミニ東京化し、博多から結ばれた鹿児島、熊本、長崎(長崎ルートは現在建設中)あたりが点として恩恵を被る程度である。その結果、その点と点との間や、点の圏外にある中小の市や町は次第に置き去りにされる運命ということになる。
 これは地方の衰退を目にすればわかるが、日本全国そのようになりつつある。

 *

 3月4日、鹿児島に向かった。
 霧島神宮での甥の結婚式に出席するためである。
 佐世保線・長崎線の在来線で新鳥栖駅に出て、新鳥栖12時20分発の新幹線「さくら」に乗ると、13時41分には鹿児島中央駅に着いた。

 鹿児島県内を列車でちらと通ったことはあったが、鹿児島市に来たのは久しぶりだ。
 思い起こせば1985年のゴールデンウイークのときだったから、もう30年も前のことだ。あの時、鹿児島の街中を歩いていて、通りの道端に火山灰が積もっているのを見て、住んでいる人は大変だなあと思ったことを覚えている。
 今は、駅前は整備されてきれいになっている。駅前の広場には「若き薩摩の群像」という銅像が建っている。高知駅前にも、幕末の土佐の群像が建っていた。佐賀駅前も、「面浮立」ではなく、維新の佐賀七賢人の像でも建てればいいのにと常々思っている。幕末、明治維新の偉人は、今でも人気があるのだ。

 かつて鹿児島に来たときは、鹿児島、知覧から、宮崎の延岡へ出て、高千穂峡へ行った。現在は廃線になっている高千穂線がまだあり、高千穂に行く途中に、日ノ影、影侍、天の岩戸などの興味深い駅名があった。
 当時僕は、五木寛之の小説「日ノ影村の一族」を読んで、行ってみようと思ったのだった。五木も、日之影という地名を見て、小説を思いついたと語っていた。
 天孫降臨の地とされる神話の高千穂だが、宮崎には高千穂峡があり、鹿児島寄りの霧島には高千穂峰がある。こちらは、北九州と大和の邪馬台国論争のような本家争いは起こっていない。

 *

 鹿児島中央発14時19分、日豊本線宮崎行きの特急「きりしま12号」に乗る。車窓からは錦江湾を挟んで桜島が大きく見える。
 15時3分に霧島神宮駅に着いた。
 霧島神宮駅は地方によくある鄙びた駅だった。駅前に出ても商店街があるわけではない。霧島神宮までもハイキングをする覚悟でないと、歩いていける距離ではない。
 数人の乗客がこの駅で降りたが、観光客らしい人は駅舎を写真で撮ったあとは駅の近辺をうろうろし手持ちぶさたのようである。
 仕方なく、タクシーで霧島神宮の麓のホテルに行った。ホテルを出てぶらぶらと散歩すると、のどかな風景の中に牧場があり羊がないている。
 高層階のホテルの窓から、遠く霧島の山並みの緑に囲まれた霧島神宮の鳥居が見える。(写真)
 この山並みで最も高いのは韓国岳(からくにだけ)である。この名が残っているというのは、この辺りと朝鮮半島との関連があるのだろうか。天孫降臨の説とあわせて興味深い。
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