写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

お昼のママ

2018年11月02日 | 生活・ニュース

 4日前のことである。朝起きた時、のどに少し痛みを感じた。ここ10年余り、風邪らしい風邪を引いたことはないが、風邪を引いたときのあの痛みである。そういえば、前日、庭仕事をしているとき背筋が寒く感じたが、そのまま仕事を続けたことがあった。

 案の定、久しぶりに風邪を引いたようである。翌日になってのどは痛いが、熱もないので1日中家の中で休んでいた。そのあくる日、咳が出るようになった。痰は出ないが咳が出る。置き薬のルル3錠を飲んだが、咳が止まらない。今朝も起きてから咳が出る。

 10時過ぎにかかりつけの病院へ出かけた。血液検査と肺のX線検査をしたが特に異常はない。診察をおえて待合室に戻り空いた席に座ろうとしたとき、隣に座っている女性が「茅野さん…」と声をかけてくれた。よく見ると、現役時代に時に行っていた駅前のスタンドバーのママである。

 顎まで覆う大きなマスクをしていたにも関わらずかかわらず、よく分かったものである。「風邪を引いたもので…」といいながら久しぶりに話をした。「店を10月末で畳んで九州に帰ることにしました」という。確か熊本出身で、五輪真弓の「恋人よ」の歌が上手いママであった。

 朱色のカウンターがあり、8人が入れば満席となる瀟洒な店であった。41年間一人で頑張ってきたという。「茅野さんは何歳になられましたか」と聞かれ「今年喜寿を迎えます。ママは?」と言うと、笑いながら「71になります」「ええっ、60位にしか見えませんよ」と、お世辞抜きで見た目の若いママに言う。

 そんな話をしているとき、支払いのため名前を呼ばれて「じゃあ、お元気で」といって別れた。抗生物質とシロップの飲み薬をの処方箋を出してもらって家に帰ってきた。この病院では、5年くらい前にも、違うスタンドバーのママと出会ったことがあるが、お昼にママに出会ったとき、飲んでいるときのようにバカ話はできないし、どんな話をしたらよいのかいつも悩むものである。