写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

2杯目

2012年09月17日 | 生活・ニュース

 この3連休、次男が職場の後輩を1人連れて、名古屋から車で帰って来るという連絡が1週間前に入った。金曜日、仕事が終わってから出発するので、深夜の2時に着くと言っていた。さあ大変。家族以外のものが来るとあって、奥さんは前日から布団を干すわ、掃除はするわ、風呂も磨くわ、台所は片付けるわなどと、日頃手を抜いているところの大掃除を始めた。

 私の担当は、布団の持ち出し取り入れや、部屋の中にだらしなく並べている自分の書類の片づけだ。協力し合って金曜日の夕方までに何とか片を付けた。その疲れもあって、私は10時にはベッドに入った。気になっていたのだろう、2時過ぎに目が覚め、窓からガレージを見たちょうどその時、息子の車が帰ってきたところであった。

 奥さんと眼をこすりながら2人を迎えたが、挨拶をしただけでまたベッドに入った。翌朝、8時には遠来の2人とも起き出してきた。交替しながら運転してきたと言い、旅の疲れも余りないという。まだ若い。元気が余っているのだろう。その日の予定は、錦帯橋・岩国城と津和野だという。

 その前に、まずは朝食をとることにした。奥さんがかいがいしく、旅館の朝食に似たメニューを並べた。塩シャケ、ベーコンエッグ、酢もの、味噌汁にもう1品は煮ものだったか。私の隣に座った後輩君の食べっぷりはいい。聞けば、走るのが好きで、今までにフルマラソンに5回も出た、富士山にも登ったというスポーツマンだ。中肉中背だが筋肉の塊のような男である。

 私が少な目のご飯を半分食べたころには、もう1膳を食べ終わっている。しばらくそれに気がつかなかった奥さんが、あわてて2膳目を勧める。味噌汁もご飯も素直にお代わりをして食べ終えた。こんな景色を見たのは何年振りだろうか。息子たちを含め我が家に来る人はみんな小食で、2膳目を差し出すような者はついぞいなかった。

 味噌汁を作った奥さんも、2杯目は予期していなかったのだろう。鍋を空っぽにして注いでも、椀に一杯にはならなかった。ともかくも、気持ちがいいくらいの食べっぷりであった。久しぶりに若者のエネルギーを感じることが出来、わが身も少し元気になってきた。


「宝石箱」

2012年09月15日 | 岩国検定

 知人が新聞を手にして立ち寄ってくれた。「こんな記事が出ているのを知っていますか」という。見ると8月28日の「日刊いわくに」である。指すところを見た。第1面の最下部に、「清流」という朝日新聞であれば「天声人語」に相当するコラム欄がある。8月23日に、岩国検定のテキストブックを発刊するという記者会見をしたとき、各新聞社に1冊ずつテキストブックを寄贈した。それを読んで書いたものが載っていた。

 ☆
空港ができて遠来の客を迎える機会はこれからさらに増えそうだ。「岩国の見どころを教えて」と問われることもあるだろう。まずは錦帯橋が思い浮かぶが、その他となる「なかなか」という人は多いだろう。そんな方におススメなのは、岩国検定テキスト。

 岩国検定実行委員会が「いわくに通になろう」とこのほど発刊した。A5判120ページ。カラー印刷。税込みで一冊525円。上質紙で刷られ、カラー写真もふんだん。ずっしりと重みがある。「魅力ある岩国をもっと知ってほしい」と歴史や史跡、自然、文化、人物、生活・行事、観光市勢をまとめた。

 これ1冊で 岩国市の概要を網羅している。ふだん何気なく見ている歴史的建物や景観に、なるほどそんな謂れや言い伝えもあったのかと、学べる喜びがある。長年、地元で新聞発行を続けていても、おおこれは知らなかった」と新鮮な発見も数々あった。

 岩国の歴史的な誇りがたっぷりと詰められた宝石箱のような冊子だ。巻末には、平成22年に行った第1回岩国検定の問題と解答もある。これを解けば、それぞれのいわくに通の度合いが分かるし、知識がさらに深まること請け合いだ。さて今年12月2日には第2回検定を予定している。受験料1000円。☆

 いいコラムを書いてもらったものだ。この欄は毎日、社長が直々書いているという。私が言いたいことを落ちなく的確に表現してもらっている。中でも「宝石箱のような冊子」という言葉は、なんと素晴らしい表現のことよ。過剰に評価してもらっているのは分かっているが、それでも嬉しい。そうだ、これからはテキストブックのことを仲間うちでは「宝石箱」と呼ぶことにしよう。


無氷

2012年09月14日 | 生活・ニュース

 今年の夏も暑かった。年をとると喉の渇きの感覚が鈍感になり、水分の補給が不足し、熱中症になりやいと聞いている。そんなこともあって、涼しい部屋の中にいても水分補給を心がけた。水分補給といっても、生ぬるいお茶やコーヒーではすっきりしない。必然、冷蔵庫から氷を取り出し、多すぎるくらいの氷をコップに入れて、かりかり噛みながら飲むありさまであった。

 9月になってもこんなことを繰り返していたが、2週間くらい前から、冷蔵庫の製氷皿に溜まった氷が、お互いにくっついて塊状態になり始めた。おかしいなとは思ったが、それを取り出しては力で割って使っていた。そんなことをしていたら、今度は製氷皿の中に氷が落ちてこなくなったというか、氷が出来なくなった。

 この季節、まだまだ氷が欲しい日は多い。故障だと判断し、購入した電器店に電話をした。直後、今度はメーカーから電話がかかって来、翌日には修理に来てくれるという。対応の速さに驚くやら嬉しいやらだ。3年前に買った代物、故障するには早すぎる。メーカーの保証は1年。修理にいくらかかるのか、ちょっと心配しながら修理の日を迎えた。

 午前10時、広島から愛想の良いお兄さんが軽トラックに乗ってやってきた。冷蔵庫の引出しを抜いて手際良く製氷機を分解していった。前日、奥さんは見違えるほどきれいに冷蔵庫を掃除している。どこを開けてもらっても、余裕の表情で作業を見守った。

 製氷室の一番奥に取り付けられている機械部品を一式取り換えた。回転して氷を皿に落とす部品のようだ。これが壊れていたという。全てを復旧し、テストをするときちんと回転した。「修理は終わりました」「あの~、おいくらでしょうか?」「これは販売店が10年保証している商品なので、無料です」。

 それを聞いた途端、我ら2人は急に笑顔になった。奥さんはすかさずお茶とケーキを出す。男はひとしきり修理の概要を話しながら休んで帰っていった。復旧して丸1日が経った。今朝、製氷機を開けてみると、山盛りの氷が、ガラガラガラと音を立てて転がり出てきた。換無料、いや感無量の朝である。


病院行き帰り

2012年09月12日 | 生活・ニュース

 月に1回、コレステロールの薬をもらうため、内科医へ通っている。生活習慣改善のため、週の内4回は夕方の散歩に出かけている。往復2.5kmではあるが、早足で歩くとこの時期は汗で背中が濡れる。家にたどり着いて脈を測ると110くらいになっている。私にとっては丁度よい運動量だと自己評価している。

 狭い待合室は15人ばかりの高齢者でいっぱいだ。新聞を読みながら順番を待った。呼び出しがかかるまで小1時間待った。最近の真面目な生活態度に加えて薬の服用だ。数値が改善していることを期待して医者の右横に置いてある丸椅子に座った。医者が、ちらっと私の顔を見て書類に目を落とした。「数値が徐々に良くなっていますね」「そうですか。最近真面目に体を動かしていますので……」と答えた。

 60歳前のその医者がもう一度私の方を向いて「この間、新聞に出ていましたね」という。岩国検定の記事のことだろう。すかさず「あんなことをして暇をつぶしています。お金はかからず時間がつぶせるいい遊びです」と笑って答えておいた。今まで医者と私語を交わしたことはないが、よく顔を覚えておられるものだ。

 再度、待合室に座り清算を待っていたとき、隣に座っていたおばあさんが、携帯電話を取り出して私に向かって何やら話し始めた。娘に電話をしたいという。ポストイットの紙に書いた電話番号を手の甲に貼っている。「どうして掛けたらいいんでしょうか」と尋ねられた。携帯を引き取って番号を打ち込み受話器を外して呼び出し音が聞こえるのを確認して手渡した。

 ゆっくり立ち上がって外に出たが、どうやら留守で繋がらなかったようだ。「お世話になりました。85にもなるんで難しいことが出来んで……」と言いながら元の席に座る。「いえいえ、85にならなくても難しいことが出来ない人は沢山いますよ」と言いかけたが、周りの高齢者を見てそんなことを言うのは止めた。

 自転車での帰り道、定年後、自治会の役員をしている男と出会った。「この間、新聞読みましたよ」とすれ違いざまに声をかけられた。「あははは、それはどうも」とわけのわからない返答をした。「もう年だから」と言って自治会の活動は外してもらっている反面、こんなことで遊んでいることがばれてしまった。いやはや、恐るべきは新聞である。


完 売

2012年09月09日 | 岩国検定

 8月23日に岩国検定のテキストブックを出版・発売することを新聞記者を相手に会見をし、翌日からの新聞にその記事を掲載してもらった。新聞に掲載されるということは、情報を伝達する手段として大変有効なことであることを、この2週間で痛感している。

 当初、仲間とずいぶん議論し悩んだ上でまずは300冊を発刊した。ところが5日後には在庫がなくなる勢いで買ってもらった。慌てて100冊追加発注した。1週間後にそれが手元に届いたときには300冊は完売していた。急いで書店に持ち込んだが、それもつかの間、昨日(8日)には追加分もすべてなくなり、400冊はあっという間にどこかへ飛んでいった。

 さっそく目を通していただいた読者から、感想が入ってきた。「こんなものが欲しかった」「岩国のことが表面的だとは言いながらもざっと理解出来ていい」「もう少し、詳しい説明があった方が……」「地方の情報をもっと取り込んでほしい」「装丁もよく、写真が多いのがいい」「長いこと岩国に住んでいるが、新しい発見がたくさんあった」「単身赴任で岩国にいるが、岩国のことがもっと知りたくて買った。いい本だ」などなど。

 本を作った側として、この程度の本しか作れなかった言い訳はたくさんあるが、まずは本の形にして出版出来たことを仲間と喜びあいたい。これをたたき台として、さらにいいものが出来てゆけば本望である。ぱらぱらとめくっていると、ところどころにミスも見つかった。脇の甘さを反省することしきりである。

 さて、12月2日の検定試験に向けて残る大仕事は問題作りだ。第1回目とダブらないよう、しかも受験者にとって新しい発見があるようないい問題を今議論しながら作成中である。ここで大事なポイントが一つある。この岩国検定は、何の資格も名もない民間の一グループが、真面目に知的な遊びの範疇でやっているもので、権威も合格した場合の恩典も何もない。

 とはいえ、市や教育委員会がこの活動を認めた上で後援をしてもらっているものである。テキストブックを買った人、買わなかった人にかかわらず、どなたでも検定試験の受験を会員一同お待ちしています。10月1日より応募開始しますので奮ってご応募ください。よろしくお願いいたします。広報営業部長代理より…。