写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

無氷

2012年09月14日 | 生活・ニュース

 今年の夏も暑かった。年をとると喉の渇きの感覚が鈍感になり、水分の補給が不足し、熱中症になりやいと聞いている。そんなこともあって、涼しい部屋の中にいても水分補給を心がけた。水分補給といっても、生ぬるいお茶やコーヒーではすっきりしない。必然、冷蔵庫から氷を取り出し、多すぎるくらいの氷をコップに入れて、かりかり噛みながら飲むありさまであった。

 9月になってもこんなことを繰り返していたが、2週間くらい前から、冷蔵庫の製氷皿に溜まった氷が、お互いにくっついて塊状態になり始めた。おかしいなとは思ったが、それを取り出しては力で割って使っていた。そんなことをしていたら、今度は製氷皿の中に氷が落ちてこなくなったというか、氷が出来なくなった。

 この季節、まだまだ氷が欲しい日は多い。故障だと判断し、購入した電器店に電話をした。直後、今度はメーカーから電話がかかって来、翌日には修理に来てくれるという。対応の速さに驚くやら嬉しいやらだ。3年前に買った代物、故障するには早すぎる。メーカーの保証は1年。修理にいくらかかるのか、ちょっと心配しながら修理の日を迎えた。

 午前10時、広島から愛想の良いお兄さんが軽トラックに乗ってやってきた。冷蔵庫の引出しを抜いて手際良く製氷機を分解していった。前日、奥さんは見違えるほどきれいに冷蔵庫を掃除している。どこを開けてもらっても、余裕の表情で作業を見守った。

 製氷室の一番奥に取り付けられている機械部品を一式取り換えた。回転して氷を皿に落とす部品のようだ。これが壊れていたという。全てを復旧し、テストをするときちんと回転した。「修理は終わりました」「あの~、おいくらでしょうか?」「これは販売店が10年保証している商品なので、無料です」。

 それを聞いた途端、我ら2人は急に笑顔になった。奥さんはすかさずお茶とケーキを出す。男はひとしきり修理の概要を話しながら休んで帰っていった。復旧して丸1日が経った。今朝、製氷機を開けてみると、山盛りの氷が、ガラガラガラと音を立てて転がり出てきた。換無料、いや感無量の朝である。