盗人に 逢うた夜もあり 年の暮れ 松尾 芭蕉
今日の新聞に載っていた俳句である。盗人にとられるようなものが何もない清貧とも言うべき暮らしを理想としていた芭蕉が、盗人に入られた夜もあったなあと、1年を回顧した句だと解説してある。そんな芭蕉をまねて、私もこの1年、どんなことがあったかを回顧してみた。
座右の友として親しんできたパソコンの画面が突然消えて真っ黒に変わった。思えば7年間、文句を言うこともなく私の思い通りに働いてくれたVistaである。労をねぎらって新卒の若手と交代してもらった。
1歳の誕生日を迎えた孫娘が、伝え歩きができるようになったという動画が送られてきた。人間として立って歩く準備を始めたようである。何でもないようなことであるが、「立って歩く」ってことは素晴らしい。なんと言ったって、両手が自由に使えるための必須条件である。これからその両足で、どこの世界を歩いていくのだろう。
奥さんがスマホデビューした。世の流れに遅れまいとしたかどうか知らないが、突然「私もスマホをやってみたいわ」などとのたまう。現在、電話とメールが打てるようになったばかり。これからは、夫婦の会話は、食卓に向かい合ってメールでのやり取りに変わるかもしれない。「コーヒーを飲もうか」「自分で淹れてください」な~んて。
10人が集まった学生時代の同期会に参加した。定刻になっても幹事がこない。電話をしてみると「あっ、明日だと思っていた。今からすぐ行く」といって、肝心の幹事が大失態。こんなこともあった。
10年と15年と20年ぶりに、会社の後輩だった男がそれぞれ遠くから所用で岩国へやってきた。その折、一杯やる機会を作ってくれた。お互いに定年を迎えているが、現役時代の話をしながら楽しい時間を過ごした。長い時間は経っていても、会って一杯やりたいという仲間がいるという人生、悪くはない。
小、中学校時代の男と女の幼馴染が2人、この夏、痛ましい交通事故で亡くなった。最近、顔を合わせることはなかったが、2人とも自転車に乗っていての事故だったという。いずれもが車の運転者の不注意のようである。くれぐれも注意して出歩けと言ってくれているように思っている。
私ごととしては大きな出来事もなく今年も終わるが、何よりも、年なりの元気さで過ごせたことが一番のビッグニュース(?)ということか。そういう意味では、おめでたい1年であったといえる。