写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

closed

2016年11月19日 | 生活・ニュース

 先日、1人で家にいたとき、食卓の横の壁に取り付けているインターホンが鳴った。液晶画面を見ると若い男が立っていた。玄関のドアを半開きにして伺うと、名刺を出した。広島からやって来た家のリフォームをする会社の社員で、我が家の外壁の塗装をしつこく勧める。

 まだその気のない旨を言うと「いま、特別ご奉仕期間なので格安でやらせていただきます」とかなんとかいって、簡単には引き下がらない。まだ20歳過ぎくらいにしか見えないが、いくら断っても執拗に迫ってくる。日頃穏やかな私であるが、さすがに苛立ってきた。

 「今する気は全くないので帰って下さい」と言いながら、私の右手の甲で若者の二の腕辺りで、追い払うような仕草をした時、ほんの少し指先が相手の袖に触れた。その時、若者はいかにも強く押されたかのように一瞬よろめく姿勢となり、さも痛そうに指が触れた辺りを手でさすりながら出ていった。

 カメラ付きのインターホンを備えていながら、用件を確認することなく玄関ドアを開けてしまった軽率な行動をしたことで、とんでもない押し付け販売の男に遭う羽目となった。今思うと、相手の身体に触れたか触れなかったか分からないほどの接触を盾に、「腕が痛くなった」などと付け入られるようなことにならなくてよかった。

 これを機に、高齢者の留守番体制の強化に、ちょっとした対策を講じることにした。まずは、インターホンできちんと用件を確認して玄関を開けるかどうかを決めることが第一であるが、その前に、玄関のアプローチを通って入ってくる訪問者に、家の人が対応可能な状態であるかどうかを判断できるようにしておくことが必要である。 

 そのための一計とは、玄関のアプローチに置いている手製の額縁プランターの下に「closed」と書いたプレートをぶら下げておくことにした。レストランなどが休みの日や準備中の時に掲げているあのプレートである。訪問者がこれを見ると「あっ、今は駄目なんだな」と思ってくれれば正解だが、「休憩中なんだ」と思った人は、やっぱりインターホンを押すかもしれない。そうはいっても、こんなことで居留守が使いやすくなればと思っているが、手練手管の押し売り撃退となるかどうかは今後のお楽しみである。

 そうそう、訪問販売以外の方は、「closed」と掲げていても、どうぞインターホンを押して下さい。満面の作り笑顔でお迎えいたしますので。