写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

不眠症対策

2015年07月14日 | 生活・ニュース

 70年余り生きているといろいろなことがあり、ちょっとした病気で入院手術をしたことも数度ある。いずれも術後1週間足らずで追い出され、相も変わらず生きてきた。ある入院沙汰のときの話である。4人部屋の廊下側のベッドが私の「部屋」であった。カーテンを隔てた窓側には、鼻の手術をする同年輩の男が1日遅れて入って来た。

 身の回りの世話をしに来る奥さんとの会話はみんな聞こえる。どうやら花粉症がひどくなっての手術をするような様子である。入院した翌日の午後に手術をした。術後、奥さんともども部屋に戻って来たが話す声も大きく元気そうであった。鼻の片方にガーゼを詰めているらしく、息がし難いと訴えていた。

 時々若くて優しい看護師がガーゼの取り換えや様子を見にやって来るが大きな問題はないようであった。その夜、息がし難くて熟睡はできなかったのだろう、時々ごそごそと何かをしている音が聞こえてきた。その後は小さいけれどいびきも聞こえていた。

 翌朝のことである。担当医が回診に来たとき「先生、夜眠れませんでした。睡眠薬を出してもらえませんか」というと「今日1日もう少し様子を見てからにしましょう」ということで薬は出してもらえなかった。ところが朝食後、しばらくすると高いびきが聞こえてきた。夜中の睡眠不足を取り戻すかのような心地よさそうないびきである。「このおじさん、眠れてるじゃん」。睡眠薬とはどうやら無縁のようである。

 人間誰しも睡眠なしでは生きていけない。眠くなったときには必ずどこかで眠っているはずだが、その満足度の多少で睡眠不足を訴えることがあるのだろうか。この男も睡眠薬を飲むことなく、その日の午前中とその夜は高いびきであった。お陰で私はというと睡眠不足ぎみ。

 しかし一つ、そんな夜を快適に過ごすノウハウを見つけた。隣のベッドのいびきで眠れない夜は、無理をして眠ろうとしないことである。入院患者の仕事は食べることと寝ることしかない。夜眠れなければ昼眠ればよい。眠れない夜は何時間でも付き合ってくれるNHKの「ラジオ深夜便」を聞くに限る。懐かしい歌あり、ためになるお話あり。これが私のいびき騒音対策である。