写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

イングリッシュローズ

2013年05月20日 | 季節・自然・植物

 朝早く、まだ寝ているのに庭の方から何やら大きな話し声が聞こえてくる。奥さんが朝の散歩中の誰かとバラ談義をしている。庭に植えている数十株のバラが今最盛期である。1年間、丹精込めて咲かせた花を、奥さんは朝早くから夕方遅くまで、愛しそうに手入れをしている。

 私はというと、それぞれの花の名前はまったく知らないし、育て方も知らない。一方奥さんは、横文字の名前を全部知っているし、時期に応じた肥料や消毒のこともよく知っているばかりか接ぎ木までやってのけ、その成功率は高いようだ。

 そうはいいながら薬の散布は苦手で、身体に悪い汚れ仕事はいつも私に回ってくる。千分の一に薄めた薬液の散布は遠くに立っていろいろと細かな指示を飛ばしてくる。そのほか、ツルバラを登らせるアーチやオベリスクを作る木工の仕事は私の分担となっている。

 植えてあるバラはすべて「イングリッシュローズ」だという。一体バラの分類はどんなものなのか調べてみた。バラは「オールドローズ」「モダンローズ」「イングリッシュローズ」の3種類に分けられるが、正確には「オールドローズ」「モダンローズ」の2種類で、この両者の特徴を併せ持ったものが「イングリッシュローズ」である。

 オールドローズからはクラシカルな花の形と華やかな香り、モダンローズからは鮮やかで多彩な色を受け継いでいる。育て方の面においてもオールドローズの育てやすさ、モダンローズの四季咲き性をも持っている。イングリッシュローズはまさに、いいとこ取りの1970年代からのバラだと書いてある。

 1969年にイギリスの薔薇育苗家デビッド・オースチンがイングリッシュローズを生み出し、現在まで200種以上もの品種を世に送りだした。イギリスでは、美しい貴婦人のことをイングリッシュローズというそうだ。

 満開の「アブラハム・ダービー」には多くのファンがいる。色はピンクっぽい黄色で、フルーティーで濃厚な香りがする。恥じらいながら少しうつむき加減に咲くところが何ともいえずかわいらしい。最近、お互いに恥じらいながらうつむくようなことのない毎日、これでいいのかと思いながら朝な夕な眺めている。