・
『誰も知らない』『歩いても 歩いても』の是枝裕和監督が、業田良家のマンガを映画化し、主演に『リンダリンダリンダ』の韓国女優ペ・ドゥナを迎えたファンタジー作。
予告編を観ていた時点では、どこか『ラースと、その彼女』と共通な世界があるのかなと思っていたけれど、あちらの映画では擬似肉体を持った「リアル・ドール」を恋人とする男の物語であったのに対して、この映画では愛されることを望みながら決してかなえられない人形の立場からの作品となっていた。
そして前者からは周りの人たちが主人公を受け入れる過程から暖かさを感じたのに比べ、この作品ではまさに中身が空虚な「空気人形(ビニール製のダッチドール)」の切なさが、現代人の思いを通低したものとして描かれていた。
そんな中、何はともあれその主人公を演じたペ・ドゥナの完璧と言い切れるほど演技の素晴らしかったこと。
まるで空気人形そのものであるがごとくのぎこちない動き、そしてそれに伴って話されるたどたどしい日本語の台詞回し。
とにかくそのスレンダーな肉体とともに彼女しかいなかっただろうなあと強く思わせるそのドンピシャなキャスティングがこの映画の大きな魅力となっているのに違いないのだ。
特に印象的だったのがアルバイト先のビデオショップ(ここでの小ネタの数々もマルでした)でふとしたことから空気が抜け息を吹き込まれるシーン。
それまでの純粋無垢な少女から“心を持った”エロティックな女性として昇華するその姿は、何とも刺激的で且つ美しいラブシーンだったのでありました。
そして希望というよりは、切なさばかりを置き去りにしたようなエンディングにジワ~ンと心動かされ大いに印象的。
ともあれ登場する人物像がいささか類型的であったり、物語そのものが単純すぎると言えないことなないかもしれないけれど、青を基調とした表情豊かなリリー・ビンビンの印象に残るカメラワークを含め不思議な浮遊感があるこの作品、内容的に受け付けられない人もいるかも知れないけれど、一味変わった「大人のファンタジック・ラブストーリー」として大いにオススメであります。
機会があれば是非。
今日の1曲 “ You Can't Always Get What You Want ” : The Rolling Stones
1969年にリリースされたアルバム『 Let It Bleed 』から「無情の世界」というなかなか秀逸な日本語タイトルが付けられたストーンズのこの曲をライヴバージョンで
『誰も知らない』『歩いても 歩いても』の是枝裕和監督が、業田良家のマンガを映画化し、主演に『リンダリンダリンダ』の韓国女優ペ・ドゥナを迎えたファンタジー作。
予告編を観ていた時点では、どこか『ラースと、その彼女』と共通な世界があるのかなと思っていたけれど、あちらの映画では擬似肉体を持った「リアル・ドール」を恋人とする男の物語であったのに対して、この映画では愛されることを望みながら決してかなえられない人形の立場からの作品となっていた。
そして前者からは周りの人たちが主人公を受け入れる過程から暖かさを感じたのに比べ、この作品ではまさに中身が空虚な「空気人形(ビニール製のダッチドール)」の切なさが、現代人の思いを通低したものとして描かれていた。
そんな中、何はともあれその主人公を演じたペ・ドゥナの完璧と言い切れるほど演技の素晴らしかったこと。
まるで空気人形そのものであるがごとくのぎこちない動き、そしてそれに伴って話されるたどたどしい日本語の台詞回し。
とにかくそのスレンダーな肉体とともに彼女しかいなかっただろうなあと強く思わせるそのドンピシャなキャスティングがこの映画の大きな魅力となっているのに違いないのだ。
特に印象的だったのがアルバイト先のビデオショップ(ここでの小ネタの数々もマルでした)でふとしたことから空気が抜け息を吹き込まれるシーン。
それまでの純粋無垢な少女から“心を持った”エロティックな女性として昇華するその姿は、何とも刺激的で且つ美しいラブシーンだったのでありました。
そして希望というよりは、切なさばかりを置き去りにしたようなエンディングにジワ~ンと心動かされ大いに印象的。
ともあれ登場する人物像がいささか類型的であったり、物語そのものが単純すぎると言えないことなないかもしれないけれど、青を基調とした表情豊かなリリー・ビンビンの印象に残るカメラワークを含め不思議な浮遊感があるこの作品、内容的に受け付けられない人もいるかも知れないけれど、一味変わった「大人のファンタジック・ラブストーリー」として大いにオススメであります。
機会があれば是非。
今日の1曲 “ You Can't Always Get What You Want ” : The Rolling Stones
1969年にリリースされたアルバム『 Let It Bleed 』から「無情の世界」というなかなか秀逸な日本語タイトルが付けられたストーンズのこの曲をライヴバージョンで
ぺ・ドゥナの存在にもうグラグラしています。
心を持った人形って決して新鮮な題材でもないですけど
語り口が、展開が、そしてぺ・ドゥナがたまらなくよかったです。
好きな映画の要素のひとつ。キャラクターに肩入れしてしまうこと---まさに・でした!
その圧倒的な存在感、彼女なしでは間違いなく成り立たなかった
そんな作品でした。
いやマジ、ペ・ドゥナ以外じゃ
成立しない映画だったんじゃないかと。
ま、その他の人たちも…豪華キャストでしたね。
超ハッピーな映画ではなかったけど
いろいろ考えさせる、いい映画だったなぁと。
是枝さんてすごい人じゃあ~!
と、つくづく思いました。
あ、ビデオショップの中でのやりとりは、
どれも楽しかったです。
個人的には去年の日本映画の中でベスト5に入れるくらい
気に入ってしまいました。
映画ファンの心くすぐるビデオショップのエピも確かに良かったし、
今思い返しても完成度の高い秀作でありました。