
レオナルド・ディカプリオとマーティン・スコセッシ監督が5度目のタッグを組み、実在した株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォートの回想録 『 ウォール街狂乱日記 - 「狼」と呼ばれた私のヤバすぎる人生 』 をベースに映画化した実録ドラマは、いやはや原作の題名通りとでも言うべきか、とにかく何とも凄まじい作品だったのでありました。

話そのものは、ディカプリオ扮する主人公が、22歳の時にちょうどブラックマンデーの直前という最悪のタイミングで証券マンとしてスタートし、そこから巧みな話術で人々の心を瞬く間につかみ、犯罪すれすれでかつ斬新なアイデアを次々と繰り出しては業績を上げて成り上がり、26歳で証券会社を設立し、たちまち約49億円もの年収を得るまでとなり、そこには想像を絶する浪費の限りを尽くした世界が待っていた…、というのが、おおよそのストーリィー展開なのだけど、とにもかくにも、これでもかと畳み掛けるスコセッシ監督の老いても盛んな演出に口あんぐり。

相変わらず妙な存在感たっぷりなマシュー・マコノヒー扮する上司に 「 1にカネ、2にカネ! 客にはもうけさせずに観覧車に24時間乗せっぱなしにしろ! 」 と初日にアドヴァイスされ、そのままその教えを躊躇なく過激なまでに実践し、仕事が成功するにしたがって、もう一つの教えである 「 この世の中ドラッグとセックスしかない 」 もまた思いっきり実行に移し、コカインの常用はもちろんのこと、例えば、業務中の会社の中に娼婦は出没するわ、旅客機を借り切ってラスベガスへ行く機内でも酒池肉林のパーティを繰り広げるわと、とにかく主人公の名前ジョーダン同様、冗談にしか思えないくらい常軌を逸する行動の数々が、執拗なほどに描かれていて、ここまで徹底して見せられると、逆に思わず笑ってしまうくらい。

ただ、例の four letter words の連呼には、正直言ってほとほと疲れてしまったし、主人公にほとんどシンパシーを感じない分、どうかなと思わないでもなかったけれど、それを払拭させてくれたのが、ディカプリオのまさに水を得た魚的に生き生きとしたなり切りぶりだったのであります。

そのとっちゃん坊や的な顔立ちから、これまで何度もスコセッシ監督と組んで中年へ向かう年頃の男を演じるものの、今ひとつ違和感があって納得できないことが多かったけれど、39歳となった今回は風貌も良い意味で綺麗でなくなった分だけ年齢を感じさせ、加えて尻の穴にローソクを立てられたり、背中にロウをたらされたり、まさに身体を張った熱演ぶりは、これまでのファンからは見捨てられる可能性大かもしれないけれど、その弾けっぷりこそがこの作品の大きな魅力だったし、3時間を超える作品の中で唯一グッとさせてくれえる、一旦リタイアを宣言するシーンでの彼の在り方には、大いに説得力があったと思う。

学歴や人脈もない兄ちゃんが富を得るという、ある意味アメリカンドリームを体現し、かつ転落へというお決まりのパターンとはなっていないところも今のアメリカらしくて、そのあたりにスコセッシの意地の悪さも見え隠れし、とにかく観る人を選ぶというか、好き嫌いが分かれそうな「お馬鹿ムーヴィー」なのであります。
そのあたり了解できる人には、これはこれでお勧めなので、機会があれば是非!

それにしてもこの作品、IMDb でもめちゃ評価高いし、アカデミー賞にノミネートされるというのは、本国の人間にしか伝わらないものがニュアンスを含めて多いといった側面はあるのだろうけど、やっぱりアメリカは変な国であります。
今日の1曲 “ Mrs Robinson ” : The Lemonheads
エルモア・ジェームスの「Dust My Blues」、キャノンボール・アダレイの「Mercy, Mercy, Mercy」、ボー・ディドリの「Road Runner」、ジョン・リー・フッカーの「Boom Boom」、フー・ファイターズの「Everlong」などなど、スコセッシ監督らしく、思わずサウンドトラック盤を買いたくなるライナップが揃った音楽も楽しみの一つでした。
というわけで、そんなサントラから、The Lemonheads なるグループによる「ミセス・ロビンソン」のカヴァーを…
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