
今までオリジナル脚本で撮っていた 「 ウォーターボーイズ 」 や 「 スウィングガールズ 」 の矢口史靖監督が、「 まほろ駅前シリーズ 」 や 「 風が強く吹いている 」、そして 「 舟を編む 」 などバラエティに富む作品を書き続けている三浦しをんの 「 神去なあなあ日常 」 を一読し、初めて原作ものを撮ることとしたと NHK ラジオの 『 すっぴんインタビュー 』 でその経緯を知り、俄然観たくなった作品。

舞台は、ケータイの電波も届かない山奥の村。
そこに大学受験に失敗して、自分の行く道を見定められない今どき感たっぷりな若者が、不純な動機で林業に携わるべくやってくる。
そしてそこでは過酷な試練が待ち受けていて、それらを乗り越えることによって、やがて若者は、取り敢えず心根は見事な山の男へと、云々かんぬん…と、大雑把にストーリーだけを書いてしまうと、よくありがちな成長物語と思われがちだけど、それにとどまらない魅力に満ち満ちていて、本当に見応えのある作品で思わず嬉しくなってしまったのだ。

なるほど、海猿から見事に山猿へ、しかも三枚目路線を突っ走ってくれる伊藤英明の突き抜けた怪演ぶりが目立つ前半は、新鮮なカメラワークをさておくとするなら、さほど際立った物語展開ではないかも知れない。

ところが、ところが、後半、ちょうど子供が山で「神隠し」になる事件が発生するあたりから、話は単なる成長物語というより、山の、木の持つ神秘性、大げさに言えば日本人が持つ土着文化というか、山に対するアミニズムすら感じさせる時を超えた展開へと相成るのだ。

そしてその極めつけは、クライマックスを飾る、本当にこんな祭りがあっても不思議ではないだろうと、つい思ってしまうほど、妙にリアリティのある 「 奇祭 」。
その内容は見てのお楽しみだけど、ある意味でのその偶像崇拝の弾けっぷりが何とも凄いし、映画の持つ面白さが詰まったスペクタクルな演出はまさにお見事。
加えてこのシーンのみならず、はっとさせられるシーンの数々も、CGに頼ることなくほぼ実写で撮影され、かつ、演じる役者たちもスタントなしでやっていると知り、そうした真っ当な演出によって、これぞ映画といったワクワク感に満ち、感じ入ることが出来る快作にと仕上がっているのだと納得。

それにしても、今や中堅役者として数多くの映画で見かける光石研。
思えば曽根中生監督作品 「 博多っ子純情 」 で主役デビューした ( その時も褌姿を披露していたっけ:笑 ) 頃からの変遷を知る者にとっては、いつも以上にフューチャーされていた彼の姿を見て、何だか嬉しくなったのでありました。

まあそれはさておき、とにかくちゃんとしたエンタテイメントとして十分楽しめる作品なので、機会があれば是非、是非!
かなりオススメな日本映画なのであります。
、
今日の1曲 “ Let It Grow ” : Eric Clapton
国内の興行収入がなんと 13年ぶりに 200億円を突破したという大ヒット映画 「 アナと雪の女王 」 の主題歌の 「 Let It Go 」 と一文字違いながら、是非ともこちらも聴いてもらいたいかなと…。
~ In the sun, the rain, the snow,
Love is lovely, let it grow. ♪
いやはや、こんな歌に相変わらず中年オヤジはグッと来てしまうのであります(苦笑)
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