ひとりでは寂しすぎる。ふたりでは苦しすぎる。─誰もが身につまされる愛の世界を、即興の演出によって織りあげた諏訪敦彦(『M/OTHER』)デビュー作。台詞を生み出し、まさにその瞬間を生きようとする俳優たちの生々しい息遣いに圧倒される、緊張感溢れる傑作。とは、シネモンドのパンフに書かれていた紹介文だけど、まさにそのとおりの快作だ。
とにかくまるでドキュメンタリー映画とすら思えるリアリティ溢れる描写に驚かされる。
シナリオのないところから始まり、出演者それぞれがダイアローグライターとして台詞を考えた結果なんだろうけど、普通に話される会話一つ一つ(呟きひとつに至るまで)の生々しいこと!
「ビフォア・サンセット」でのイーサン・フォークとジュリー・デルピーの場合だとやはり彼の地の言葉で話している分、少なからず距離を感じさせるけれど、こちらはまさに痛いほど伝わってきた。
加えてほぼワンカットで撮られる長いワンシーンでの優に扮する柳愛里と圭に扮する西島秀俊の演技。それはまるで見ず知らずの人の普段の生活を覗き見ているように思えてしまうほど感情豊かで、互いの「心の痛さ」がもろに伝わってくる見事なものだった。
そして二人の同棲生活が圭の「結婚しよう」という言葉から崩れはじめる様子は、自分の青春時代を思わず想起し、お互いにとって決して意図したものではないはずなのに、どんどんどん心がずれていく様子が、あたかも実在のカップルがそこにいるかのようなリアルさを持って描かれていた。
70年代のATG系作品を思わせる映像(撮影 / 田村正毅)、途中出演者に話しかけ質問する構成、同一シーンで真っ暗な画面を挿入し心理的変化を描く手法などなど、意欲的な試みも決して空回りせずうまく機能していたと思う。
惜しむらくはちょっと間延びしてしまった終盤、個人的には優がひとり部屋を出て行ってしまうシーンで終わってもよかったと強く思ってしまったのだけど、とにかく観る価値は大いにありの作品であることに間違いはなく、今日までの上映だとわざわざメールで教えてくれたシネモンドのY嬢に多謝。
今日の1曲 “ All I Want ” : Joni Mitchell
1971年にリリースされボブ・ディランをもいたく刺激したと言われているジョニ・ミッチェルの4作目の傑作アルバム『 Blue 』から瑞々しい恋心を歌っているこの曲を。
ちょいと長いですがまさにこの映画の世界観と一致する歌詞の一部を引用です。
All I really really want our love to do
Is to bring out the best in me and in you too
All I really really want our love to do
Is to bring out the best in me and in you
I want to talk to you, I want to shampoo you
I want to renew you again and again
Applause, applause - life is our cause
When I think of your kisses
My mind see-saws
Do you see - do you see - do you see
How you hurt me baby
So I hurt you too
Then we both get so blue
全曲聴けるサイトは見つけられなかったので、アルバム試聴をコチラで
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