俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「 キャプテン・フィリップス 」  CAPTAIN PHILLIPS

2013年12月07日 15時33分17秒 | 時系列でご覧ください

2009年に実際に起こったソマリア海域人質事件をテーマに、4日間わたって繰り広げられた救出劇をトム・ハンクス扮する海賊に拉致されたコンテナ船船長を主人公に映画化した作品。
監督がご存知一連の 「 ボーン 」 シリーズや 「 ユナイテッド 93 」、そして 「 グリーン・ゾーン 」などのポール・グリーングラスということもあって公開前より楽しみにしていたけれど、その期待を裏切らない完成度の高さに大いに満足させられた。



その畳みかける緊張感溢れる演出といった意味でベン・アフレック監督作品 「 アルゴ 」 を引き合いに出す友人がいたけれど、良い意味でエンターテイメントに徹していた 「 アルゴ 」 は、それはそれで大いに楽しめたけれど、良くも悪しくも娯楽映画の域を超えてはいなかった。

そういった意味では今回のこの作品、サスペンスに加え、単なる勧善懲悪ではなく、双方の当事者に対する監督の(「志」と呼んでも良いかも知れない)確かな視点がそこにはあり、ついつい感じ入ってしまったのだ。



冒頭、主人公が妻に 「 俺たちの世代は、普通に就職して、普通に勤務していれば、船長になれたけど、子供達はそうはいかない。常に時間に追われ常に競争にさらされている 」 といった内容のことを語るシーンから何とも暗示的で秀逸な出だし。

そしてそんなシーンと同時に描かれるのが事件の背景となっている最貧国で大国の船によって漁場を奪われ搾取され続け、行き場を失っているソマリアの漁師の若者の姿だ。



その後、実際に起こった事件をもとに、前半は当時武器携行していなかった言わば丸腰状態の貨物船乗組員たちが武装した海賊と戦う様子を手際のよい演出で緊迫感を持って描き、後半は海賊と船長との心情描写に比重を移し、そこにアメリカ海軍の大袈裟な救出作戦が加わって、話は進行していく。



そんな中、船長とまだ若き海賊のリーダーがぽつりと語りあうシーンが印象的だ。

片や、無駄に抵抗せず、他の船の船長がごとく大人しく職務放棄してくれていれば、損害は保険でカヴァー出来るから何も問題はなかったはずだと半ばぼやくリーダーの若者。

片や、せっかく3万ドル渡したのだから、それでそのまま逃げれば、こんな大ごとにならなかったはずだと、そんな年端もいかない若者を諭す船長。

人生はままならぬことが多い。
そういった意味では、船長がもしここまで経験豊富で仕事に実直な人物でなければ、あるいは海賊のリーダーがもっと早くから組織そのものに疑問を持つ若者だったらと、たら、れば的な互いその巡り合わせを嘆くのだけど、見ている側にとっては、そんな二人に等しく思いは募ったのだ。



ともあれ、若者たちをそうした行為に駆り立てる背景にしっかり目を向け、等身大にその姿を描くその視線には大いに共感を持つし、世の中はそんな単純な勧善懲悪では決してないことを示している分、単なる海賊と戦うアメリカ万歳的な作品ではなく、大いに見応えのある作品となっているたのだった。



トム・ハンクスのまさに迫真と言える演技も含め、最近のハリウッド作品の中では出色の出来だと思うので機会があれば是非!
かなりオススメです。



今日の1曲 “ Mandela Day ”  :  Simple Minds

クラプトンの「 Wonderful Tonight 」 がちょっと流れる以外ほとんど音楽が流れない作品だったということで、今日は5日に亡くなったマンデラ元南アフリカ大統領を偲んでこの曲を。



最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (けん)
2013-12-08 01:40:22
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
返信する
Unknown (キヨ)
2013-12-09 10:03:24
トム・ハンクス 泣かせますよね。ハリウッドの西田敏行みたいな。良かったデス。
後日観に行ったオットは船酔いがつらかったと。「あの人は手持ちカメラで撮るのが好きねんて~」と、冒頭の高速道路の場面から既に三半規管にきてたそうです(笑)
私の時はサンドイッチ食べながら観てた人が前列に居たよと言ったら苦笑しておりました~。
返信する
キヨさん (nikidasu)
2013-12-10 10:18:00
トム・ハンクス=西田敏行ですか?
何となく同意です(笑)

そして確かにこの監督、いささか画面が揺れるかと思いますが、
三半規管が強いのかどうか不明ながら、個人的にはやはりおにぎりを
パクつきながらわくわくしながら観ていました (^^ゞ
返信する

コメントを投稿