栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

先週の重賞回顧まとめて3つ~スローを立ち回るHalo、東京でストライドを伸ばすナスペリオン

2016-11-14 17:10:55 | 血統予想

京都11R デイリー杯2歳S
◎7.ディーパワンサ
○2.リナーテ
タイセイスターリーは行かせれば一番速いだろうが、まだまだ荒削りでここは競馬を教えたいところだろうし、ベルカプリの単騎ならばここ2年のようなスローの上がりの競馬。秋華賞のヴィブロス(ヘイロー3×4・5)、菊花賞のサトノダイヤモンド(ヘイロー3×4・5)と、秋もヘイロークロス馬が大レースを勝ちまくる2016年だが、直線の長いコースでもスローの上がりの競馬になると、このクロスの特長である反応の機敏さがモノを言う。ここもシンハライトの姪でヘイロー4×4・5のディーパワンサと、サトノダイヤモンドの3/4妹でヘイロー3×4・5のリナーテの叩き合いとみた。

東京11R 武蔵野S
◎11.タガノトネール
○13.キングズガード
タガノトネールはタガノエスプレッソの半兄で、母はヌレイエフ4×3にトニービンも入って「ハイペリオンとナスルーラ」の持続力と斬れ味が強い。だからスピード過多で底力に欠けるケイムホーム産駒ながら、東京マイルのHペースでも追って味がある。フェブラリーSと武蔵野Sで▲としたが根岸SやプロキオンSでは印を落としたように、1400mより1600mがベターで、小回りより大箱がベターなマイラーだと書いてきた。昨年の2着馬が今年は1キロ軽い56で出てくるのに、なぜか人気がないようでここは狙い目だろう。キングズガードは母がスクアンダーの牝馬クロス4×4を持つ好配合なのでずっと◎で狙っているが、1800mの濃尾特別でも◎にしたようにマイルも守備範囲だと思っている。東京ダートに強いエーピーインディの父系だし、これももうひと押ししたい。

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デイリー杯は60.5-11.5-11.2-11.4という公式ラップですから、俊敏なHaloクロス馬たちが上がり最速を叩き出せるレースになりました

となると、イン3番手をロスなく運んだジューヌエコール(上がり33.6)が、その直後から外に出したディーパワンサ(上がり33.6)や後方から差したリナーテ(上がり33.7)の追撃を封じたというのはまあ納得で、先行して入着したダイワメジャー2騎が同じ上がり(34.1)だったのも何か微笑ましい

ディーパワンサはゴール前の伸びは一番目立ちましたが、ディープブリランテ×Rahyというのは、あそこからまとめてズバッと差す配合でもないと思うなあ…

ジューヌエコールはクロフネ×ソニンク牝系譲りのパワーと、母が持つHalo3×4譲りの機動力が持ち味で、いずれはもっとパワーに寄ってきて阪神1400型に完成するのではないかとみていますが、ダートも巧者の血筋だけにいろんなテリトリーで稼ぎそうな牝馬ですね
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2014106231/

エリ女が終わってW5の配当が発表されて、そのあまりの安さに驚愕したオッサン二人は、福島記念のマルターズアポジーやオーロCのナックビーナスの穴人気ぶりにまた驚愕し、最近の馬券ガチ勢はほんとに上手やし見てるよねえ…と感心します

しかし59キロのモーニンを1人気に祭り上げるならば、昨年57キロでこれと叩き合った(5人気2着)タガノトネールが、今年は56キロで8人気というのは明らかに盲点だったといえるでしょう

父のケイムホームはGone WestにNasrullahばかりを重ねたスピード過多な配合で、産駒の全勝ち鞍133勝のうち91勝が1400m以下という中下級スプリンター量産種牡馬

ただし母タガノレヴィントンはNureyev4×3にトニービンやMill Reefも入ってナスペリオン(NasrullahとHyperionの組み合わせ)ばかりをクロスしていて、ナスペリオン的持続斬れを強く伝える繁殖牝馬で、半弟タガノエスプレッソも全3勝が大箱の1600~1800m
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010105768/

この馬も戦績を見てのとおり、小回り1400mよりも大箱1600mのほうが持続力あるストライドが活きるタイプで、だから近走の凡走は全部無視して大箱マイルの戦績だけを拾うと、フェブラリー6着と武蔵野2着と南部杯2着しか残らないのです

福島記念は61.0-59.8という思いもよらぬ後傾ラップで、マルターズアポジーがスイスイ逃げ切り

揉まれ弱いクランモンタナが大外枠だったのでポジションを主張しなかったし、2~4番手のビッグレッド勢が兼ね合って先行したので結果的にこれがカベになったのも幸いしました

父は朝日杯を逃げ切ったゴスホークケン、母はフィリーズレビュー2着のマルターズヒート、クロスがRoberto5×4、Northern Dancer5×4、Terlingua≒Secrettame≒Weekend Surprise4・5×4
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012100939/

走った両親による父母相似配合で、最近の福島芝2000mの重賞はペースが緩むとこういうマイラー寄りの馬の活躍が目立ちますね

コメント (3)
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第41回エリザベス女王杯回顧~まるでTreveのように

2016-11-14 15:24:35 | 血統予想

京都11R エリザベス女王杯
◎3.クイーンズリング
○1.ミッキークイーン
▲8.タッチングスピーチ
△2.マリアライト
×4.ヒルノマテーラ
注15.パールコード
昨年の覇者マリアライトは良馬場のスローだと鋭さ負けの心配があり、ミッキークイーンは臨戦過程が狂ってぶっつけ本番。シュンドルボンはハーツクライ産駒だから京都のここでベストパフォーマンスを叩き出す馬でもないだろう。となると、昨年もゴール前の脚色は最も良かったタッチングスピーチや、ブロードブラッシュ~コンサーンの晩成の追い込み血統が開花してきたヒルノマテーラなどもチャンスだろうが、ここらを含め有力どころは差し追い込みばかり。先行勢がやり合う理由はこれっぽちもないから、14年や13年のような上がりの競馬を想定したい。
クイーンズリングは母父アナバーがダンジグ系のチャンピオンスプリンターで、母アクアリングはリヴァーマンとノーザンダンサーとオリオール≒ハイハットをクロスする父母相似配合。このような「父中距離×母父スプリンター」の配合形は、トレヴ(モティヴェイター×アナバー)やジェンティルドンナ(ディープインパクト×ベルトリーニ)などが典型だが、スローの上がりの競馬で瞬時に反応できる脚質になりやすい。オリオールは馬群を嫌がる気性を強く伝える血で、本馬も16年ヴィクトリアマイルや15年エリザベス女王杯を見てのとおり馬群の中で揉まれたときは案外だが、揉まれず先行して4角で3番手までにいたときは[3-1-0-0]。ここも勝ちパターンに持ち込めるとみて◎とした。1800mぐらいがベストだろうがスローなら2200mもOKだろう。意外に緩みなく流れて持続戦になったときの▲の単勝も押さえたい。

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今年のエリザベス女王杯はプリメラアスールの単騎逃げが見え見えで、しかも有力馬のほとんどが差し追い込みですから、他の先行勢がレースを動かしてくることも考えにくい

締切5分前、例の同級生とマークシートを塗りながら
「いや~ホンマに前が薄い。前が薄いんやけど、スローで行っても残りそうな馬が見当たらん…」
「俺がアスカビレンの鞍上やったら、ハナ切るぐらいの気持ちで出していくけどなあ…。でも大作はこの馬で差したがるからそれはないやろ」

レースは1000m通過が62秒ぐらいで上がり3Fが11.5-11.2-11.4、3番手のシングウィズジョイとパールコードが2着4着、逃げたプリメラも5着に残っていて、ようするにクイーンズリングとミッキークイーンが差してきた以外はスローの行った行ったという競馬でした

クイーンズリングは仏1000ギニー馬Torrestrellaの姪で、母父Anabaaはショウナンアデラの近親でジュライC(英G1・芝6F)などに勝ったDanzig系のスプリンター

「父中距離×母父スプリンター」の配合形ですから、母アクアリングがRiverman4×3で牝馬らしい斬れ味を伝える繁殖とはいえ、Motivator×AnabaaのTreve(母がRivermanクロスなのも同じ)やディープインパクト×Bertoliniのジェンティルドンナなんかと近いイメージで、マイルのHペースをズバッと差すというよりは1800mのスローをフワリと抜け出すようなタイプだろうとデビュー当初から書いてきました
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012104105/

母がRivermanのクロスを持つのも、DanzigとLyphardを通じてNorthern Dancerクロスを持つのもTreveと同じですね
http://db.netkeiba.com/horse/ped/000a01224c/

だから1400mの重賞を後方から差し切ってしまうのがむしろ驚きで、Hペースの秋華賞でも上がり1位の末脚で追い込んでましたから、前走府中牝馬勝ちをみてもやっぱりスローの1800~2000mがベストパフォーマンスを出せる舞台だろうと

ただしヴィクトリアマイルやエリザベス女王杯の凡走は馬群の中で周りを気にしたようなところもみられただけに、出遅れてしまい道中は馬群の中、直線も外に出せずに馬と馬の間に突っ込むしかなく、こらアカンやろと外の馬たちに目を移したら、そこからグイグイ伸びて差し切ってしまったのには驚かされました

マンハッタンカフェは母方がドイツ牝系で強いクロスを持たないので、ルージュバックのような父母相似配合の成功例もありますが、ヒルノダムール(母がNijinsky≒The Minstrel2×3)やレッドディザイア(母がNorthern Dancer3×3)のように、クロスがうるさい繁殖との配合で成功しやすい種牡馬といえます

母アクアリングはRiverman4×3、Northern Dancer3×5、Aureole≒ハイハット5×4を持つ父母相似配合で、ダ1200mのデビュー戦を勝った後は伸び悩みましたが、そこにマンハッタンカフェを配した緊張→緩和のリズムで生まれたのがクイーンズリング

「父中距離×母父スプリンター」の本領といえる瞬時の加速と、Rivermanの本領といえる牝馬の斬れ、“ミルコの恋人”クイーンズリングの魅力を、競馬場に詰めかけたファンは堪能したのではないかと思います

ミッキークイーンはパドックの並足も返し馬のキャンターも、絶好調時のしなやかさと比べるとちょっと落ちるように私には感じられたし、浜中はソツなく立ち回って力は出し切ったと思いますが、たぶん昨年の秋華賞ほどは走ってないだろうという3着

マリアライトは2角の不利でポジションが下がってしまったのは痛恨で、もともとラトロ&Ribot肩で掻きこむ走りで京都の良のスローでも33秒前半では上がれない馬ですから、悪い条件が重なってのこの結果はやむをえない

エリザベス女王杯といえばムーアがスノーフェアリーでインを切り裂くイメージが強烈で、7Rのショウボートでもインに突っ込んで伸びあぐんでいるのを見てちょっと嫌な予感はありましたが、タッチングスピーチは何度も書いてきたように直線は一番外に出さないと全力で走らないところがある

今日は上がりが速かったので、あそこから外に出したとしてもどのみち苦しかったと思いますが、いずれにしても馬は良くなっているだけにこの8着は不完全燃焼というべきでしょう

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11/11発売『サラブレ』『UMAJIN』12月号

2016-11-14 12:43:20 | お知らせ

11/11発売『サラブレ』12月号、特集は「世界を知れば日本競馬が見えてくる!」


http://www.enterbrain.co.jp/sarabure/book/

今号は私の執筆はありませんが、栗山さんの「血統史たらればなし」など読みどころタップリの一冊に仕上がっております

同じく11/11発売『UMAJIN』12月号、特集は「秋G1 キーマン&キーホースの罠と真実」


http://www.uma-jin.jp/

私は連載「血統・駆け込み寺」にて、「ジャパンCと牝馬の活躍」「フランケル産駒の配合」の二本立てで書いてますので、こちらもよろしくお願いします

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11/12,13の血統屋コンテンツ推奨馬の結果速報

2016-11-14 11:12:34 | POG

『望田潤のPOG好配合馬リスト(2016)キングカメハメハ編』で望田潤が推奨したグローブシアター(牡2歳)が日曜京都5Rの新馬戦(芝1800m)を勝ちました。

◎グローブシアター(牡、母シーザリオ)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2014105957/
リオンディーズの全弟で、母シーザリオはオークス馬。Nureyev≒Sadler's Wells4×3、ラストタイクーン≒マルゼンスキー3×4と、Northern Dancer系のクロスを使った父母相似配合。父母相似配合は競走能力の高い両親のほうが成功しやすく、レッツゴードンキの母マルトクもダートで準オープンまで出世している。一見すると総花的な配合にも見えるが、リオンディーズの場合はG1馬の両親の持ち味が上手く噛み合ったと言える。(望田)

■『望田潤のPOG好配合馬リスト(2016)重賞勝ち馬の弟妹編』で望田潤が推奨したウインブライト(牡2歳)が土曜東京4Rの未勝利戦(芝1800m)を勝ち上がりました。

○ウインブライト(牡、父ステイゴールド、母サマーエタニティ)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2014100222/
ステイゴールド×アドマイヤコジーンという組み合わせは本馬の全姉ウインファビラスとペルソナリテしか出走例がなく、この2頭が阪神JFに駒を進めて2着と6着に入線したのは快挙と言うべきだ。ロイヤルサッシュとミセスマカディーの血脈構成がよく似ており、ダイナサッシュ≒アドマイヤマカディの3×3になるのがニックスの根拠。そしてロイヤルサッシュ≒ミセスマカディーのニアリークロスを持つ馬も、上記2頭以外にスノードラゴンしか見つからないのだからまた驚かされる。現時点ではスーパーニックスと言っても差し支えなく、後追いと言われようが恥も外聞もなく全弟も狙う。(望田)

■土曜京都11Rデイリー杯2歳S2着 ボンセルヴィーソ(POG・望田)
■日曜京都6R500万下 スルターナ(一口・望田)
■日曜京都7R500万下 ショパン(POG・望田)
■日曜東京10R奥多摩S グランシルク(一口・栗山)
■日曜京都11Rエリザベス女王杯3着 ミッキークイーン(ディープ・栗山)

日曜は新馬戦のパドックに間に合うように競馬場入りしたんですが、グローブシアターの勝利をスタンドで確認してから6Rのパドックに向かったら、一口ピック馬のスルターナとスターリーウインドがともに上位人気で、このワイドだけ買って観てたら意外について、「キングヘイロー×モガミヒメ最強!サンデー×ウインドインハーヘア最強!」と叫びたかったけどグッと自重(・∀・)

ブログのコメントでも触れておいたように、グローブシアターは体のラインなんかはリオンディーズによく似ているけれど馬体重どおり一回り小さくしたような馬で、2歳新馬のデビュー時点の比較ではきょうだいの中で一番緩さも感じられる体質

さすがにいい馬なんですが、今日のところはトルネードアレイのほうが仕上がりもよく見えたので馬券はこちらの単を買っていたほどで、でもトルネードを前に見ながら下って直線へ向かうときのストライドの優雅さしなやかさは一頭だけ違っていて、現時点ではリオンディーズほどのパワーは感じないけれど、このしなやかストライドを角居厩舎がどう完成させていくか、という楽しみが持てる素材にはちがいない

ウインブライトはデビュー戦は直線の坂でフワフワしていて、2戦目は福島の4角でスムーズに加速できず、ダイナサッシュ≒アドマイヤマカディの黄金ニアリークロスに含まれるPrincely Gift由来と思われる、トモの甘さ緩さが大きな課題でした

しかし今回はスタートして3完歩ぐらいでそれが解消したと確信できる行きっぷりで、直線の坂も一気に駆け上がって松岡が先頭に立つのが早すぎたと後ろを振り返るほどで、この休養で増えた+14キロの多くは後駆のパワーアップにつながったようです

ボンセルヴィーソは「Halo(≒Red God)のニアリークロス」「(トニービンで)Lady AngelaのPretty Pollyいじり」「母父サクラローレルが重厚な中距離型」ですから、ほぼ満点に近い「ダイワメジャー黄金配合」

コパノリチャードの母がトニービン×Blushing Groomの組み合わせですが、母系の奥にWild Riskのクロスを抱えるコパノほど狂気の逃げではなく、ここはスローに落としてまんまと粘り込みました

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