波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

「海街diary」(吉田秋生作)

2013年05月28日 | 読書

Photo 出張先で立ち寄った書店。表紙絵の巧さに手が伸びたコミック誌「海街diary」(吉田秋生作:小学館)。表情豊かで個性的な人物たちが確かなデッサン力で動き回っている。中学生を人格のある中学生として描く姿勢と技量!これは即買い(笑)
    帯の「巡りゆく季節の中-古都・鎌倉を舞台に繰り広げられる、家族の情景」、「4姉妹の成長を優しく、厳しく、温かく見つめる…」で、だいぶ前に新聞書評で高評価の漫画だと思い出した。月刊誌に年3回ペースで連載中、コミック1巻目が6年前、最新の5巻目が昨年末。第6巻は来年春か。

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 期待通り、漫画の可能性あらためて実感。家族、仕事、恋愛といった縦軸と、季節感や舞台の鎌倉の情緒を横軸に、懐かしい人に偶然再会できたような落ち着いた嬉しさ。巧みな心理描写は「死」を描くことで深さを増す。登場人物たちの死に対する思い、その交錯が見事。死を身近に体験した者が知る、悲しみと優しさと強さが全編に。小説とひと味違うリアル感だ。その点で、中学生に、中学生を持つ親や先生に読んで欲しい。考えてみると、家族や親戚は他の誰よりも死の事実を共有する関係だ。老いという成熟にさえ目をそむけるような今の風潮、「死」はいつの間にか遠くへ。この漫画で、死は特別なことではないが、関わる家族には決定的であり、生きる糧になりうることが示される。

    爽やかな読後感が、市井の人を温かく描き、老後読書の楽しみの一つにしている内海隆一郎さんにも似て。読み終わってすぐ再読は我ながら珍しい。少女漫画では、30年前の「ガラスの仮面」以来(笑)本書は書店員が推す「2013年度マンガ大賞」受賞作。先日話題にした「暗殺教室」はノミネート作品とのこと。

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高校で教育実習中の学生の授業を観させていただく。生徒と先生の響きあいが強く印象に。校長先生を先頭に先生たちが一丸となって学校をつくっている空気も。こうした素敵な母校を、教育の、教職の魂を学ぶ機会にできる実習生は幸せだ。加えて、立男が定年まで勤めた中学校を、私の大切な母校です、と言ってくれた若い先生にもお会いできた。学校で働いて出会える幸せが、ここに。

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