今年初の小説『自分以外全員他人』(西村亨著:筑摩書房)を読む。「猛烈に面白かった・・・・善良さや純粋さを蹂躙する社会の悲劇を見ているはずがなぜだか笑ってしまう。猛烈に面白かった」という新聞書評を見て図書館に行ったら貸してくれた。
マッサージ店で働く44歳独身の主人公。繊細で人づきあい苦手、暴発してしまう前に自死し生命保険を家族に渡すことだけを希望に生きながらえている。
人に過剰な親切を見せながら、決して踏み込まれないよう壁を作り、人を好きになることも好かれることにも罪悪感を覚え、気の合う人と出会っても、関係が深まりそうになるとわざと嫌われるような真似をして遠ざけた。自分といたらきっとその人は不幸になる(P105) 「ここがこの小説執筆の肝だろう」と付箋を貼っていた波風氏。真面目に考え過ぎたら、(動植物の命を食べること含めて)誰にも迷惑をかけずに生きることも、死ぬことも容易ではない。優しく孤立しがちな(表面的にも内面的にも)人間に、何かの拍子に生死の選択をあいまいにさせてしまう今の社会と時代。
事件らしい事件無く、淡々とした日常が続き、最後の最後近くまでどんでん返しや伏線改修といった「へーっ!」は全くない。だが、生きる時間が未だたくさんあるのに生きることに限界を感じ唯一の希望である自死に向かう姿は、悲劇そのものだが外側から眺めている者には書評の通り実に喜劇。誰の人生もそんなものかもしれない。本作が昨年度の太宰治賞、妙に納得。最後の高揚場面、あれで主人公の唯一の希望はどうなる?
一気呵成に読んだ。ママヨさんも読みたいと言うので、図書館に返却日延長お願いしなければ。つきあいが長くなったり、仲の良かった人にもう1人加わって3人グループになったら私は必ず外されるのでその前に身を引く、と言っていた人を思い出した 来週初め、雪だるまが斜めになり斜線の暴風雪警報マークが、小さな雪だるま&雲マークに変わった。そのままよろしくお願いしますね。