波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

『深い河』を読む-の続き

2023年09月09日 | 読書

安心した、この本を読んで。今まで感じたことの無い広くて深い安堵感。父の残したキリスト教と仏教、そして新興宗教にも救いを求めた母。こうした環境は、大人になった波風氏が1つの神、1つの宗教を選択出来ない大きな理由だった。そこから波風氏は、「自分は無神論、無宗教の人間ではないか」と思うことにしていた。だがこの本で、少し違うのではないかと思った。むしろ逆なのかもしれないと。

 

「私はヒンズー教徒そして本能的にすべての宗教が多かれ少なかれ真実だと思う。すべての宗教は同じ神から発している。しかしどの宗教も不完全である。なぜならそれらは不完全な人間によって我々に伝えられてきたからだ」、「さまざまな宗教があるが、それらはみな同一の地点に集まり通じる様々な道・・・同じ目的地に到達する限り、我々がそれぞれ異なった道をたどろうとかまわないではないか・・・・カトリック教徒でありながら隠してヒンズー教の聖なるガンジス河で行き倒れの死者をおくる作業に身を置く主人公(と、波風氏は思う)が、ベットに横たわる前に何度も繰り返し読むガンジーの言葉。
別の登場人物には「宗教でさえ憎みあい、対立して人を殺しあうのだ。そんなものを信頼することはできない」と言わせる。波風氏はこうした言葉を否定するものを何一つ持たない。その通りだ、としか思えない。

 

遠藤周作はこの遺作1冊を、自分が亡くなった時の棺に入れて欲しいと願った。自分の死生観、宗教観を文学として最後に昇華体現できた幸せを思う。
この本にあるのは宗教多元主義というものらしい。波風氏はここに反応した。無神論でなく多神論で良いんだ、そういう宗教選択があるんだ、宗教の決められた様式は承知しながらも、自分が納得する祈りでが良いんだと思った。喪失した心は人それぞれであり、それを埋める営みも当然にそれぞれ。これ、人としての根本的な権利なのだ。題名『深い河』の意味を思った。


 消費的な暮らし方は「とりあえず活字読んで面白ければ役に立てば」の読書になりがち。甘く柔らかいものばかりだと確実に体が弱る画像は外の水甕の上に取り付けた木工作「プールに飛び込む人」。一冬過ぎ枯れた感じが出て来たら完成  公式裏ブログ『波風食堂、準備中です』の閲覧ランキングで「続 波風氏の妹」がこの4年間不動の1位独占していた「サラメシ エンディング曲『ドリーム』」(2019.2.5)を抜いた。妹が知人に知らせ拡散した模様。

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