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19世紀のアメリカ、精神を病んだ女性3人を運ぶ女「ミッション・ワイルド」

2018-01-13 16:19:08 | 映画

           
 トミー・リー・ジョーンズ監督の劇場映画2作目。杭を立ててそこに2年間住めば土地は自分のものなるという法律が出来た19世紀のお話。

 その時代の女性は家庭にいるものとされ、ほとんど使用人並みの扱いだし、子供製造機と勘違いする男の犠牲者でもあった。そんな環境に精神を病み、男を困らせる事態にもなる。

 メアリー・ビー・カディ(ヒラリー・スワンク)は、そんな女性とは違いたった一人で農業や畜産を営むこの時代では異色の女性だった。彼女にも悩みがあった。30歳を過ぎても独身だということだ。なにせ広大な荒野に一軒ぽつんと立つ家が多いとなれば縁遠くもなる。

 やって来たボブ・ギッフェン(エヴァン・ジョーンズ)に「私の蓄えで農作物や豚や牛を増やして、子供も、結婚しよう」ギッフェンは言う「東部で妻を探す。それにいつも俺には命令する」。

 ようするに今でいう「出来る女」は、男は敬遠するの図式そのもの。カネもないくせに男の沽券に関わるという痩せ我慢。

 ネブラスカのこの地域に精神を病んだ女性が三人いる。女性たちを受け入れてくれる教会が隣のアイオワにある。地域の牧師がこの女性たちをその教会に届ける人を募る。男三人のうち一人は辞退する。その穴埋めにメアリー・ビーが応募して帽子の中から黒豆を掴み運搬人となる。

 本来このホームズマンと言われる仕事は、馬や銃の扱いに馴れたものが適任とされる。メアリー・ビーは、勝気な女で男より馬や銃に馴れているし、輸送するのが女だから私が適任だと言う。かくしてメアリー・ビーは、屋根と鉄格子と鍵の付いた箱形の馬車で出発した。

 たった一人のアイオワへ650キロの旅は不安でもある。法律なんてないも同然、男たちのやり放題の世の中、荒野で遭遇でもしたらレイプなんて当たり前だし、命の危険も大きい。そんな不安に一人の男に目を止める。馬にくくりつけられロープを首に巻かれた男がいる。先端は木の枝から根株ににしっかりと結わえてある。何かの拍子に馬が暴れだしたら首が絞められて一巻の終わり。

 男は助けてくれと言う「どんな命令でも従うと神に誓う」。男は、留守の家に住み込んでいたところ男たちに発見され縛り首にされた。要するに小悪党の西部の流れ者だ。名前を聞き出したが本名なのか曖昧でジョージ・ブリックス(トミー・リー・ジョーンズ)と名乗った。

 小悪党だけあって根は従順で使いやすい。精神を病んだ女たちの排せつの手助けも、インディアン7人に囲まれた時、「俺がやられても決して銃で反撃などするな。荷台に入って女たちを殺して自決しろ」誇りをなくすなと優しい言葉をかける。

 ある夜、メアリー・ビーはジョージに求婚する。「農業や酪農で牛や馬を増やそう」「俺は農業は出来ない」とジョージは断る。メアリー・ビーはそれならとセックスを求める。どうしたことか、その翌朝ジョージはメアリー・ビーが首を吊って自殺しているのを発見する。この自殺がどうしても理解できない点だ。

 京都ヒストリカ映画祭で上映後のトークでトミー・リー・ジョーンズは次のように言っている。「冒頭、、メアリー・ビー(ヒラリー・スワンク)が「いい音楽がなければ生きていけない」と言っています。19世紀の女性は家庭にいるもの。しかし、ヒラリーは一人で畑を耕して暮らしている。普通の女性はそういうことはしません。それが死を選んだ理由です」

 とは言っても精神を病んだ女性を届ける途中で、なぜ死ななければいけないのか。メアリー・ビーは責任感のある女性だ。あるいは結婚の見込みがないのを悲観したか。原作にもあって今や故人となっている作者のグレンドン・スウォーサウトにも聞けない。

 ジョージはやっと教会のアルタ・カーター(メリル・ストリープ)に三人を届け、メアリー・ビーの墓標を持って渡し船に乗る。やっと解放された気分もあったのかウィスキーでほろ酔い。フォークソングを歌いながら踊る。船の船頭が誤って墓標を川に落とす。流れていく墓標。
 それと知らぬジョージは踊り続ける。小悪党ジョージ・ブリックスは、墓標があろうと無かろうと西部の流れ者になるしかない。メアリー・ビーの異端の女性とジョージ・ブリックスの異端の男。早々に決着をつけたメアリー・ビー。これからもさ迷い歩くジョージ・ブリックス。所詮、人は消えていくもの。

 この映画、配給会社の人が劇場未公開にしたのも分かる。映画はエンタテイメントだ。大衆が楽しめなければ何にもならない。興行収入243万ドル、2億7千万円これでは赤字だろう。2014年制作 劇場未公開 2016年京都ヒストリカ国際映画祭で上映
  
監督
トミー・リー・ジョーンズ1949年9月テキサス州生まれ。初監督作品は、テレビの1994年「ワイルド・メン」。劇場映画は2005年「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」

キャスト
トミー・リー・ジョーンズ 
ヒラリー・スワンク1974年7月ネブラスカ州生まれ。
ジェームズ・スペイダー1960年2月マサチューセッツ州ボストン生まれ。テレビの「ボストン・リーガル」「ブラック・リスト」がある。
メリル・ストリープ1949年6月ニュージャージー州生まれ。短い出演時間。友情出演か。
エヴァン・ジョーンズ出自未詳

精神を病んだ三人の女性。
ミランダ・オットー1969年12月オーストラリア、ブリスベン生まれ。
グレイス・ガマー1986年5月ニューヨーク市生まれ。メリル・ストリープの娘。
ソニア・リヒター1974年1月デンマーク生まれ。

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