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映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」風変わりな風刺コメディ

2018-11-04 11:40:36 | 映画

          
 スウェーデン映画で監督したリューベン・オストルンドは、多分変わり者だと思う。下の写真のように撮られ方も何かを表現したいという意図がうかがえる。

 スクエアは、正方形、四角の意味と柔軟性に欠けることの意もある。クリスティアン(クレス・バング)が勤める前衛的な美術館「X-ROYAL」の新しい企画は「ザ・スクエア」。この「スクエア」には人類の理想とする「平等で助け合う」という思いやりの精神があふれる場所としたい。

 素晴らしい! ところが現実は、しかもクリスティアン自身も含めて真逆の行為が普通の世の中。それをクリスティアンが人助けをしたのが原因で財布とスマホを掏り取られる発端から我々人間の恥部をつぶさに描く。

 クリスティアンが出勤のために歩いていると突然どこかで「助けて!」の声が聞こえる。見渡しても「助けて」の主が見えない。何度か聞こえた時、立ち止った。すると「助けて」と大声をあげる女が隣の男にすがりつく。クリスティアンもこの男も何が起こっているのか見当もつかない。すると前方から走ってくる男がいる。

 二人の男はこの男が女を追ってきたと思いこんだ。制止したが「おれはただ走ってるだけだ。何故止める?」と言ってすっと姿を消した。女もいなくなった。二人の男は、この突発事が無事に終わってほっとする。「胸がドキドキしたよ」と笑いながら別れる。歩き始めてクリスティアンが財布もスマホも無いのに気づく。まんまとスリにやられた。これを取り戻すにはどうすればいいか。

 アフリカ系と思われる部下が「財布やスマホを盗る奴等は貧しい奴らだ。貧困層が住むアパートに脅迫めいたチラシを配ったらどうか。おれが配ってもいいよ」知的水準の高いクリスティアンも、やすやすとこの話に乗る。

 出来上がったチラシを持って15階建てのアパートに着いた。てっきり部下が配るものと思っていたが「盗られたのがあなただから、あなたが配るのが筋だ」と言う。クリスティアンは、「車を見張っててくれ。これからも君を信頼していいんだな?」と念を押してアパートへ向かった。私用だから命令するわけにもいかないが、アフリカ系の人間を皮肉る結果となる。お陰で財布とスマホが返ってくる。一つ一つの出来事が皮肉と人の心の陰を浮き彫りにする。

 圧巻なのは美術館で300人を超すブラック・タイ・パーティが催される。いわゆる富裕層の格式ばったパーティだ。女性は華やかなドレス。そこに現れたのが隆々とした胸郭を持つ上半身裸の男(テリー・ノタリー)。奇声を発しながらゴリラのように歩き回る。人は物珍しそうに好奇の目を注ぐ。

 やがてこの人間ゴリラは、トーンをあげ男性にちょっかいを出すが男性は逃げる。ますますエスカレートして、テーブルに飛び乗ってグラスや皿を飛び散らす。目の前の若い女性の顔に触れる。嫌がる女性。すると人間ゴリラは、髪の毛を引っ張って倒しレイプに及ぼうとする。自分の娘なのか高齢の男性が人間ゴリラに飛びかかる。娘は「こいつを殺して!」と叫ぶ。多くの男がこの人間ゴリラに襲いかかる。

 映画とは分かっているが画面に固唾をのんだ。観る者に衝撃を与える映像だった。しかし、この映画の中にも多くのホームレスの映像が現れるが、このパーティの場面で持てる者の参加者の傲慢さと言葉を発せない貧しい者の人間ゴリラの叫びは、現実のスウェーデン社会を描出していると思っていいのかも。いや、これはスウェーデン社会を例にとった世界の現実を突きつけているのだ。

 そしてもう一つの人間にとって根源的な問題「セックス」について、これでいいのか? と問うているようだ。要するにフリーセックスが一般化して、高い山をヘリコプターで頂上に降りるように、セックスも途中の互いに慈しむ行為がお忘れではないのか。

 クリスティアンは、アメリカ人のインタビューアー、アン(エリザベス・モス)とベッドインをする。裸の二人は布団に覆われている。クリスティアンは、なにかごそごそとやっている。やがて「準備が出来た」と言う。コンドームをつけたという合図。騎乗位でアンが、バックでクリスティアンが果てる。

 またクリスティアンがごそごそ。使用済みのコンドームを外す。アンが「塵箱に捨ててよ」、クリスティアンはイヤ、俺が捨てる。この言葉の応酬が何回か行われ結局塵箱に捨てる。この場面がよく分からない。

 なんでコンドームを取り合いするの。精子は空気に触れると即死するが、精液の状態なら乾燥までは生きているかもしれない。だからと言って使用済み精液の使い道があるとも思えない。あえて考えてみると、動物のような潤いのないセックスはやめた方がいいよ。 と言っているのかも。

 セックスは相手への思いやりが充分でないと満足したものにはならない。相手が今何を求めているかを見定めることは、潤いのあるセックスの絶対条件だろう。

 スウェーデンはウィキペディアによると「IMFによると2015年のスウェーデンの国内総生産(GDP)は4,926億ドル。同年の一人当たり国民総所得(GNI)は57,810ドルで、世界第7位の高所得国となっている」

 ちなみに日本は、世界第26位。高福祉国家と言われるスェーデンだが、映画でも描かれている多くのホームレスは現実なのかそれとも映画のために集めてきたものなのか。いずれにしても、改めて現実を直視するよう仕向けられた気がする。

 ところどころ分からないところもあるが、2017年第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、最高賞のパルム・ドールを受賞した作品だから一見すべきだと思う。2017年制作 劇場公開2018年4月
  
  
  
監督
リューベン・オストルンド1974年4月スウェーデン生まれ。

キャスト
クレス・バング1967年4月デンマーク生まれ。
エリザベス・モス1982年7月カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。
テリー・ノタリーカリフォルニア州サンラファエル生まれ。「猿の惑星」シリーズで猿役をやっている。シルク・ドゥ・ソレイユ(直訳太陽のサーカス)の出身。

 シルク・ドゥ・ソレイユは、カナダに本社を置くエンターテイメント集団で常設公演をラスベガス他で興行している。ラスベカスのベラージオ・ホテルの公演はO(オー)で「フランス語で水を意味するeau(オー)に基づくネーミング。シルク・ドゥ・ソレイユの名声を一気に広めた代表的な演目。ステージが一瞬のうちに巨大なプールになってしまうという、初見では理解できないほどのインパクトを与えた舞台装置。それにより、それまでのシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスにアーティスティックスイミングの要素が加わり、かつて体験した事のない世界観を作り上げたと絶賛された」とウィキペディアにある。一度見たいと思う。

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