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読書「帰郷戦線ー爆走ーThe Drifter」心的外傷ストレス障害(PTSD)の元海兵隊中尉が主人公

2019-05-29 15:49:48 | 読書

           

 かつての戦友ジミーの自殺を知り、その家族へのねぎらいとして100年以上経った家の修理をするピーター・アッシュ。ピーターは、海兵隊の中尉で帰国してから起こる頭痛、吐き気、冷や汗、めまいに悩ませられている。特の狭い空間が要注意。したがって大自然でテントを張って寝るか、ピックアップ・トラックの荷台で寝るかしかない。いわゆる戦場を経験した兵士に起こるPTSDだ。

 家の床下から、獰猛な犬と40万ドルの入ったスーツケースを発見した。未亡人ダイナに聞いても心当たりがない。黒いフォードの大きなSUVに乗る謎の男。ダイナの友人ルイス。退役軍人センターの元空挺部隊員ジョシー。ダイナの家族以外はすべて元軍人なのだ。こういう設定も珍しい。

 当然謎を追えばアクション場面も出てくる。しかし、この本の狙いはアメリカ軍の兵士そのものから、除隊後のあり方に問題があるというもの。

 「アメリカの徴兵制度は、ヴェトナム戦争の和平協定成立時の1973年1月に廃止され、現在では基本的に志願制となっている。そのため、まともな職につけない生活困窮者や除隊後の奨学金が目当ての若者、市民権を得るために入隊した不法移民といった社会的弱者だ。国へ帰ったあとも、国のために戦った者たちが報いられることは少ない。みなそこに自分たちの居場所を見つけられず、満たされぬ思いを胸に抱えて、荒廃した街の裏通りをさまよっている。本書の原題The Drifer(さまよえる者)なのだ。」(以上訳者あとがきより)

 著者が帰国した若者に「国のために戦ってくれて、あいがとう」と言ったら、その言葉を聞くと虫唾が走ると言い返されたという。「おかえりなさい」と言って欲しい。上記にあるように国のために行ったのではない、自分の都合で行っただけ。それでもアメリカでは、制服に対する敬意はみんなが持っているようだ。

 さて、日本も厳しい戦争を体験した。当然PTSDもあったが、それはひた隠しにされた。明るみに出てきているが、どうして日本人は、特攻隊とか人間魚雷という人命軽視の発想と戦争による心の病を隠蔽するねじれた発想をするのか。戦時下という特異な状況下といえるが、理解に苦しむ。

 今の日本人は、そんなことしないよと言える? DNAが人命軽視となっていたら分からないよ。そんな心配をした。

 著者ニコラス・ぺトリ ワシントン大学、ミシガン大学卒。本作で国際スリラー作家協会賞とバリー賞の最優秀新人賞を受賞。ミルウォーキーに妻子と住み大工や建築検査官として働いている。

 


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