まずストーンサークルについてウィキペディアから引用しよう。「ストーンサークル(Stone Circle)は、石を環状に配置した古代の配石遺構や遺跡を指す語である。環状列石(かんじょうれっせき)、環状石籬(かんじょうせきり)ともいう」とある。イギリスでは数多くのストーンサークルが残されているといわれる。
そのストーンサークルの真ん中で無残な焼死体が発見される。謹慎中の国家犯罪対策庁重大犯罪分析課刑事ワシントン・ポーがかり出されて捜査に当たる。重大犯罪分析課を率いるのは、かつての部下だったステファニー・フリン。彼女とはつかず離れずという距離感の間柄だった。事件は複雑な様相を秘めながら、いわゆる上流階級の性的スキャンダル、具体的には小児性愛という恥ずべきものが明らかになっていく。
ワシントン・ポーは官僚的な刑事でなく、形にはまらない勘に頼るやや古風ではあるがそんな刑事なのだ。そのポーに心酔するティリー・ブラッドショーという新人がいる。彼女は数学の天才であり、コンピューターの天才でもある。天才にありがちな世間ずれしていないところから、他の捜査官から言葉のいじめになっていたとき、ポーの一喝でそいつを黙らせた。それがティリーの琴線に触れたのだろう。ポーも何かにつけティリーを指導し、ティリーのコンピューターに助けを求めるようになる。二人の存在は、この物語にほのかな清涼をもたらしてくれている。
意外な犯人で結末を迎えるが、警察組織の上流階級の小児性愛事件もみ消しに怒りを持つワシントン・ポーの事実を暴露するジャーナリストへの送信ボタンを逡巡しながら押す。こういう終わり方をするというのは、その後を書いてもらはないと納得できないなあ。 と思って調べてみると、続編があった。「ブラックサマーの殺人」と「キュレーターの殺人」なのだ。読むしかないだろう。
私はいつものようにgoogleマップで、イギリス、カンブリア州の湖水地方をストリートヴューでさまよった。延々と続く丘陵地帯の道は狭いが、行ってみたい気がする。
著者のM・W・クレイヴンは、イギリス、カンブリア州生まれ。軍隊経験と保護観察官を長年勤めた後、2015年作家デビュー。本作で英国推理作家協会賞最優秀長編賞ゴールド・ダガー賞を受賞。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます