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読書「策謀の法廷Double Tap」スティーヴ・マルティ二著 扶桑社ミステリー2011年刊

2024-06-10 10:03:29 | 読書
 本格的な法廷もので、昨今各国で浸透するインターネットの波及に乗じた政府の個人情報への干渉にも警鐘を鳴らす。フェラーリを操る見た目30代、実年齢43歳のマデリン・チャップマンは、カリフォルニア州サンディエゴ近くの400エーカーの丘陵地帯に位置するソフトウェア制作会社アイソテニックス社最高経営責任者の地位にある。金曜日の夕刻、帰宅直後に何者かに襲われて殺害された。警察は初動捜査で犯行に使われたと思われる拳銃を押収している。

 そして逮捕されたのが、アイソテニックス社の警備を担当する会社から派遣されていたエミリアーノー・ルイスだ。ルイスは陸軍の特殊部隊にも所属していたことがあって、銃器の扱いに慣れていたし、チャップマンの事務所でチャップマンとセックスにふける監視カメラの映像も押収されている状況なのだ。ルイスは「絶対殺していない」と明言する。

 この事案を担当するのは、弁護側ポール・マドリアニ弁護士とハリー・ハインズ弁護士。対して検察側には、身長135センチの小人ラリー・テンプルトン検事。かなりやりての検事で、身長135センチとなれば陪審員席の前では頭が少し出るぐらいのため、台を置いて冒頭陳述や最終陳述で、タップダンスを踊るように陪審員の心を掴む術にたけている。

 国家の安全保障を盾に、インターネットを支配しようとする政府。政府の代理人と言ってもいい検事。チャップマンとルイスの濡れ場の映像の証拠採用で、不採用を得た弁護団。しかし、状況証拠はルイスを指している。この証拠採用の権限は判事にあり、現実のトランプ裁判でもニューヨーク地裁判事のトランプ側の証拠不採用が多かったと伝えられている。判事の公平性が問われる。

 果たしてルイスは死刑か無罪か。著者が警鐘を鳴らすと書いたが、終盤で次のように書いている。「テクノロジーはとどまるところなく進化を続け、政府部内で機密の計画が爆発的な勢いで増加している現状にかんがみれば、すでに個人情報がどの程度まで盗まれているのかが明らかになる日は永遠にやってこないかもしれない。一つだけ確かなのは、この種のテクノロジーが私たちの未来に危険を及ぼすということだ。各国政府があらゆる人々に電脳時代の進歩とその進歩のペースに参加せよと命じ、この主張への賛同を命じている事実にかんがみれば、未来に発生する大暴風雨はプライバシーに計り知れない危険をもたらすばかりか、私たちが心安らかに暮らすことのできる場所、周囲から守られた静かな場所を破壊しかねないのだから」

 早急に強力なチェック・システムの構築が必要に思える。でないと民主主義国家日本も中共化の怖れ十分だろう。

 著者スティーヴ・マルティニは、1945年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。カリフォルニア大学卒業。新聞記者として働いたのち、パシフィック大学で法律の学位を取得。カリフォルニア州司法省などに勤務した後、92年に第一作「状況証拠」を上梓、弁護士ポール・マドリアニ・シリーズが続く。
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