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映画「喜望峰の風に乗せて」安易に挑戦すると計り知れない落とし穴がある。

2019-07-28 16:30:58 | 映画

             

これは実話の映画化。イギリス人の企業経営者、電気技師、バラ議会議員、アマチュアセーラー、ドナルド・クローハースト(コリン・ファース)は、自らの事業宣伝のために沿岸でヨットを走らせる技量しかないのに単独無寄港世界一周ヨットレース、ゴールデン・グローブ・レース参加を決意する。

 妻クレア(レイチェル・ワイズ)は、夫が直前で断念するものと思っていたが、そうはならなかった。それでも、出発前夜には不安に襲われて逡巡もした。しかし、最短日数で単独無寄港世界一周を達成した者には、5000ポンド(2013年時点で約4000万円)の賞金が与えられる。

 ドナルドにとって喉から手が出るほど欲しい金だった。レースに使うヨット、三胴船(トリマラン、主船体の両脇に2つの副船体を持つ)の建造費は、投資家からの借金で賄い、担保に会社と住居があてられた。このレースで最短日数で終えないと破産が待っていた。

 建造日数も部品調達の遅れなどでスタート期限に間に合わない部分もあったが強引に出帆していった。何事も余裕がないというのは、精神状態に多大の影響を与える。その余裕のなさの一つにドナルドの外洋での未熟な操船技術が、予定の半分以下の距離をうろつくことになる。

 無線でやり取りする位置情報は嘘で塗り固められる。先行する参加者が次々と故障などで脱落する。たった一人残ったドナルド。このまま本土に入港すれば、精査の末、捏造が白日の下にさらされる。前進も留まることもできない窮地に陥る。

 1969年6月29日に無線通信が、7月1日に航海日誌が最後となって、7月10日ドナルドのヨットが無人で発見される。いまだに遺体は発見されていない。

 冷静に真摯に対処していれば、たとえ、最短日数で単独無寄港世界一周を達成しなくても、人気があったドナルドだから生きて帰れば会社と家を失うかもしれないが、再起できたはずだ。平凡だが嘘やごまかしは、絶対やってはならないという教訓なのだ。

 それにしても、コリン・ファースゆらゆら揺れる高いマストに登ったのかな。それはともかく、原題の「The Marcy」には慈悲、情け、(不運の中の)幸運の意があり、最後に自らの命を絶つのを神の恩寵ととらえたのだろう。批評家は好意的で、平均点10点満点中6.2点となっている。2017年制作 劇場公開2019年1月

      
      
      

監督
ジェームズ・マーシュ1963年4月イギリス、イングランド生まれ。

キャスト
コリン・ファース1960年9月イギリス、ハンプシャー州生まれ。2010年「英国王のスピーチ」でアカデミー賞主演男優賞受賞。

レイチェル・ワイズ1971年3月イギリス、ロンドン生まれ。2005年「ナイロビの蜂」でアカデミー賞助演女優賞受賞。

 

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