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映画「ロープ/戦場の生命線」ロープひとつで戦争の悲惨と国連の無能力を描写する

2019-03-31 13:07:41 | 映画

          
 国際援助組織「国境なき水と衛生管理団」の責任者マンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)と通訳のダミール(フェジャ・ストゥカン)は、多目的車のフロント・バンパーにロープをくくりつけてゆっくりとバックさせる。残念なことにロープが切れる。くくられていた太った男の死体は井戸に逆戻り。

 早くこの死体を処理するためにロープを探さなくてはならない。とは言っても停戦直後のバルカン半島では容易ではない。カラカラに乾ききった大地を、「国境なき水と衛生管理団」のメンバー、マンブルゥ、ビー(ティム・ロビンス)、ソフィー(メラニー・ティエリー)、国連の審査官カティヤ(オルガ・キュリレンコ)、通訳のダミールそれに悪ガキにサッカー・ボールをとられた子供一人が2台に分乗する。

 子供の住んでいた家にサッカー・ボールがあるというし、ロープもあると言うから廃墟となった村に入って行く。ここが家だったと指さす庭には、ロープでつながれた獰猛な犬が吠えている。ソーセージに催眠剤を注入して、犬を眠らせてロープをほどこうとするが犬が眠らない。

 仕方がないからマンブルゥは、ソフィーとともに今にも崩れ落ちそうな子供に家に入って行った。飲みかけのコーヒー・カップや子供の描いた絵が壁に張ってあって、人の住んでいた痕跡が戦禍に追われる寂しさに包まれていた。ふと、ソフィーの立つ背後に人がぶら下がっているが見える。マンブルゥはソフィーに見せないように「俺の目を見ろ!」と言うがソフィーは振り向く。

 驚きのあまり部屋の隅に逃げる。初めて参加しているソフィーにとって貴重であり恐ろしい体験だった。子供の父親だろうか、自殺なのか殺されたのかは分からない。いずれにしても子供は、親を亡くした。子供には親の死を伝えず、そのロープを持って井戸の現場に引き返す。

 途中民兵の道路封鎖で迂回を余儀なくされながら、マンブルゥは井戸に入って死体の引き上げを開始した。ところが動きが急停止した。「どうしたんだ」と叫んでみても返事がない。井戸から出てみると国連軍の指揮官とメンバーたちが話している。

 国連軍の要点は、「ここは危険区域。管轄権が地元になった。死体の移動は違法。移動の許可は裁判官に求めて……。裁判官は地元の有力者から選出する。あなた方に権限はない。住民のために例外を認めろと言うが、それはムリ。和平合意は尊重しなければならない。明快です。死体には触れない」

 こんなやり取りを聞きながら、マンブルゥは車にもたれてあきらめ顔。こういうシーンを何度も見てきたのだろう。融通のきかない規則だけが重要な官僚的な軍隊。こんな軍隊に各国が金を出し、人員を提供している。ホントあほらしい。まるで道を渡るのに信号機のある場所でしか渡ってはいけないという論理に思える。

 この映画のスペインの監督、腹にすえかねるのかエンディング・ロールに世界で一番有名な反戦歌といわれる「花はどこへ行ったWhere have all the flowers gone」をマレーネ・ディートリヒの歌唱で流している。

 私が無声映画時代の有名女優クララ・ボウと聞いてもピンとこないのと同様、マレーネ・ディートリヒと聞いてもピンとこない人も多いことだろう。しかし、この曲は聴いたことがあると思う。思い出して下さい。この曲をどうぞ!
  
 ところで死体のほうは天の恵みというか住民にとっていい結果になった。皮肉な画面と原題の「A Perfect Day」もかなり皮肉ぼいもので溜飲を下げて下さい。
  
  
  
  

 さて、魅力的な女優オルガ・キュリレンコ。東洋的な風貌に少しのお色気もあってなかなかコケティッシュ。
  
2015年制作 劇場公開2018年2月

監督
フェルナンド・レオン・デ・アラノア1968年5月スペイン生まれ。

キャスト
ベニチオ・デル・トロ1967年2月プエルトリコ生まれ。2000年「トラフィック」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
ティム・ロビンス1958年10月カリフォルニア生まれ。2003年「ミスティック・リバー」でアカデミー賞助演男優賞受賞。
オルガ・キュリレンコ1978年11月ウクライナ生まれ。
メラニー・ティエリー1981年7月フランス生まれ。
フェジャ・ストゥカン1974年ユーゴスラヴィア生まれ。
コメント (1)
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