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夫婦って本当に理解しあっているのだろうか?「さざなみ45years」2015年制作

2016-10-20 16:01:55 | 映画

              
 イギリスの片田舎に住むジェフ(トム・コートネイ)とケイト(シャーロット・ランブリング)夫妻は、その週の土曜日に結婚45周年記念のパーティを予定している。信頼し助け合った夫婦のあかし。

 愛犬の散歩から帰ったケイトが結婚式で踊ったプラッターズの「煙が目に沁みる」を鼻歌交じりで手紙をジェフの前に置いた。ドイツ語で書かれた手紙には、50年前アルプスの山中で深いクレパスに落ちた女性カチャの遺体が発見されたという連絡だった。

 ジェフはケイトと結婚する前、カチャと同行していた。ジェフはカチャのことをすべてを話したと思っているが、ケイトは聞いたかもしれないがそんなことは忘れたという。しかし、カチャが発見されたことでジェフの心は50年前に戻ったようだ。

 初恋の女性は忘れられないと言うが、まさにそれがジェフに起こった。ことあるごとにカチャの名前が出る。そして決定的なのは「もし生きていれば結婚をした」とケイトの質問に答えたことだ。クレパスという溝が50年後にこの夫妻に溝をもたらし始めた。

 人生で教訓を学ぶとすれば、「絶対に過去のことは話すな」があるだろう。「今あるあなたが好き」これに尽きるのだ。ジェフはバカがつくほどの真面目人間だったのかもしれない。女性関係で揉まれていないと、独りよがりな男になる可能性が大きい。失恋も人生経験。痛みが分かってこそ、相手への気遣いが生まれる。

 ジェフの今の状態では、まさに独りよがりといえる。そして迎えた結婚45周年記念パーティ。ジェフはスピーチで「君と結婚できたことは人生で最高の選択だった。本当に申し訳ない。なぜなら、そのことを君に伝えてなかったからだ。僕にとって今がそのときなんだ。そのために今夜がある。僕の思いは伝えたよ。あとはひとつだけ、愛している。感謝している。こんなボクに長年付き合ってくれて。こらからも頼むよ」

 これは字幕の文章で、選択という言葉が気になる。選択という言葉は、多くの中からいいもの、目的にかなうものを選ぶという意味があるから、こういう結婚記念日には不適切だろう。実際、英語のスピーチではbest thingと聞こえた。「最良の出来事」がいい雰囲気に思うが。

 アンダーラインの部分は、「カチャと結婚した」発言を取り消しの印象だが、ケイトはどう受けとったんだろう。それは最後に明らかになる。女を怒らすと、本当に怖いという教訓がここにある。

 この映画の監督アンドリュー・ヘイは、リアリティにこだわるようで、鳥の鳴き声や犬が吠える声、風の音、部屋の時計の音、蛇口から落ちるしずくの音、遠くの車の音が混じる地球の雑音などが背景を飾る。また、ケイトが車を降りて鍵をかける場面があるが、これも日常の実際を映し出している。

 この映画は、ケイト役を演じたシャーロット・ランブリングのひときわ目立つ演技が余情豊かにしている。それもそのはず、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞している。

 この映画は、60代以上の人が観ると、多分自分が主人公になった錯覚を覚えるのではないだろうか。その年代の人をあまねく描いてあるからだ。若い人が観ると、未来を知見できるかも。劇場公開2016年5月

 
 

監督
アンドリュー・ヘイ出自不詳

キャスト
シャーロット・ランブリング1946年2月イギリス生まれ。
トム・コートネイ1937年2月イギリス、ヨークシャー州生まれ。本作でベルリン国際映画祭で銀熊賞(男優賞)受賞。

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