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映画 ヒラリー・スワンク、クリント・イーストウッド、「ミリオンダラー・ベイビー(04)」

2006-01-08 13:24:06 | 映画
 人工呼吸器を止めて永遠の眠りにいざなう注射を一本。そこには頬を伝う感謝の涙のあとを残したマギー(ヒラリー・スワンク)のおだやかな表情があった。男は病院の暗い廊下から外に出て立ち去る。扉が静かに戻ってきてカタンという音とともに閉まる。男が“サヨナラ”と言ったように聞こえる。男はマギーのトレーナー フランキー・ダン(クリント・イーストウッド)。
               
 マギー・フィッツジェラルド、31歳。レストランのウェイトレスをしながら、客の食べ残したのを持ち帰って食費を切り詰める生活。それもボクシングに魅せられたから。
 ボクシングの魔力、限界を超えた苦痛に耐え肋骨が折れ腎臓が破裂し網膜が剥離しても闘い続ける。自分だけに見える夢にすべてを賭ける力を持つという、このスポーツが楽しいからというマギーもフランキーのトレーニングを受ければ、チャンピオンも夢ではないという野望も見え隠れする。そして念願のトレーニングが始まり試合は勝ち続ける。思わぬアクシデントがWBA世界ウェルター級チャンピオンとの対戦で起こる。ダメージは脊髄の損傷で一生全身麻痺が残り動かせるのは眼球だけ。
             
 この映画は余計なものをそぎ落とし一人のひたむきな女の生きざまをストレートに描いている。と同時に、娘に宛てた手紙がその都度返却されてくるという見捨てられたフランキー。マギーの方は、試合で稼いだ金で故郷に住む母親に家を買ってやったはいいが、所有者名が母親になると生活保護が打ち切られるといい、相談もなしにと嫌味まで言う母親。
 全身麻痺で入院するととたんに家の名義変更の書類を持参しサインを求める。しかもディズニー・ランドで買ったTシャツを着てその帰りに。こんな孤独な二人の生きざまでもある。そんな二人を見守るスクラップ(モーガン・フリーマン)の眼差しは暖かい。
               
 イーストウッドはラヴ・ストーリーだと言っている。究極の選択を迫られる生か死の重いテーマは、「彼女の人生に悔いはない筈だ」の一言で、神に背き法を犯してまで、人間にしか出来ない愛を貫く。

 ヘビー級に劣らず迫力のある映像やトレーニングするマギーの躍動する肉体の美しさ、余韻の残るイーストウッド作曲のテーマ曲とともに、最後に扉のカタンと閉まる音は忘れられない。
               
 アカデミー賞は、作品賞、ヒラリー・スワンクの主演女優賞、モーガン・フリーマンの助演男優賞、クリント・イーストウッドの監督賞に輝き、ほかに全米批評家協会賞、NY批評家協会賞、ゴールデン・グローブ、放送映画批評家協会賞などで受賞している。

 クリント・イーストウッド1930年5月生れ。ヒラリー・スワンク1937年6月ネブラスカ州生れ。スポーツ万能。水泳はオリンピックの地元選考会にも出場しているという。99年「ボーイズ・ドント・クライ」でアカデミー主演女優賞を受賞。モーガン・フリーマン1937年6月テネシー州メンフィス生れ。
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