今年の大河ドラマ「平清盛」ですが、オープニングや劇中の音楽を聴いていて、その中のピアノの音が、「澄んでいて、心地よい」印象が残り、誰が演奏してるんだろう?と、あらためて確かめてみると、やはり「館野 泉(たての いずみ)」氏の演奏だったのですね。
「館野 泉」さんと言うと、最近では「左手のピアニスト」として有名になっているようですが、実は私は、彼がまだお若い頃、水戸で開かれた彼のコンサートに行って、生の音を聴いたことがあり、その当時からの密かなファンでした。
音楽の勉強を志していた、高校生くらいから、めぼしいコンサートには、手当たり次第?に行っていた私でしたが、お恥ずかしいことに、そもそもが「クラシック好き」から入った方ではないので、「眠くなってしまう」コンサートが多かったのも事実でした。特に、「知らない曲の時」や「ピアノだけの演奏」などは、その傾向が強かったですね。
その中で、唯一?「眠くならなかった」ピアニストが、「マルタ・アルゲリッチ」と「アシュケナージ」と「館野 泉」でした。前のお二人の場合、まるでオーケストラのような、迫力と多彩な色彩を感じされるような、ダイナミックな演奏をするタイプで、館野さんの場合、まるで「雪解け水のせせらぎ」のような、とにかく「澄んだ音色」が印象的でしたね。
そのとき演奏したのは、フィンランドの作曲家「シベリウス」の曲ばかりで、私にとっては、ほとんど聴いたことの無い曲でしたが、不思議に「眠くなる」こともなく、むしろ「惹き付けられる」ような感じに、聴き入ったのを憶えています。
その頃の館野さんの印象は、どことなく「志村けん」に似たような風貌で、有名な音楽家特有の「近寄りがたいようなオーラ」? みたいなのがなくて、まるで「近所のお兄さん」的なイメージでした。
そのコンサートにて、館野さんご自身が紹介されていた、自伝エッセイ本「貨物列車のピアニスト」という本があったので、私は、帰りがけにそれを購入し、楽しく読みました。(今でも、どこかにあるはずなんだけど...。) そこで言っている「貨物列車」とは、彼の別荘のことで、普段は、ヘルシンキ市内のアパートに住み(当時)、時々郊外にある別荘で過ごす生活をしていたそうで、その別荘というのが、遠くから見ると、なんとなく「貨物列車」のような形をしているので、現地の人たちから「貨物列車のピアニスト」と呼ばれていたそうです。
その館野さんのことが、ここ最近、大きく話題になったのは、「左手だけで演奏するピアニスト」という肩書きでしょうか。何でも、演奏中に倒れ、その後の後遺症で右半身に麻痺が残り、失望しているところへ、息子さんが「左手だけで演奏する楽譜」を見つけてきて、さりげなく置いといてくれたそうで、それを演奏してみて、自信を取り戻した.....というお話を、「徹子の部屋」で語っているのを聞きました。
その後は、友人の作曲家などに頼んで、「左手だけの曲」を作ってもらったりして、今では、「左手だけのコンサート」を、あちこちで開いているみたいですね。
お若いころの、「志村けん」似?のラフな印象しかない私でしたが、久しぶりに見た館野氏が、ロマンスグレーのステキな紳士になっていたので、「素敵な歳を重ねてきた」んだろうなァ、と感心したものです。
「平清盛」のサウンドトラックCDが出たら、購入しようかな。 (と思ったら、既に発売されてるようですね。
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