最新の治療法など、地元の医療情報を提供する「メディカルはこだて」の編集長雑記。

函館で地域限定の医療・介護雑誌を発刊している超零細出版社「メディカルはこだて」編集長の孤軍奮闘よれよれ・ときどき山便り。

世界でも限られた外科医だけしか行わない「低侵襲多枝冠動脈バイパス術」を実施

2021年04月11日 10時59分10秒 | メディカルはこだて
第77号のトピックスニュースは「世界でも限られた外科医だけしか行わない「低侵襲多枝冠動脈バイパス術」を実施」。

血液を全身に循環させる心臓の状態が悪くなる心疾患(心臓病)は、日本人の死因では悪性新生物(がん)に次いで2番目に多い。厚生労働省の2019年人口動態統計によると、心疾患では1年間に20万7714人が亡くなっている。日本における心疾患の患者数は高齢化の進展や不規則な食生活や運動不足などにより増えているが、それに伴って心臓外科領域での手術数も年々増加している。
函館五稜郭病院(中田智昭病院長)の心臓血管外科は、平成8年より日本胸部外科学会における指定施設に選定され、現在は心臓血管外科専門医認定機構の認定修練施設の基幹施設にも認定されている。心臓血管外科関連の手術は年間350例以上行っている。
手術が必要な主な心疾患は狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症、大動脈瘤や大動脈解離、下肢静脈瘤などがあるが、同病院では心臓血管外科領域全ての分野において「低侵襲手術」対応が可能だ。同病院心臓血管外科の橘一俊科長に話を聞いた。橘医師は平成15年札幌医科大学卒業。札幌医科大学付属病院や循環器専門のセンター病院である榊原記念病院(東京都府中市)等を経て、平成29年函館五稜郭病院に着任。心臓血管外科専門医・修練指導者、日本脈管学会認定脈管専門医の資格を有している。
冠動脈バイパス術で用いるグラフトは内胸動脈と大伏在静脈の組み合わせが主流になりつつありますが、当院では2本の両側内胸動脈と1本の胃大網動脈を使用しています。静脈使用のメリットは血管縫合などの扱いやすさにあります。動脈は静脈より術後開存率などの成績も良好で、脳梗塞の可能性も少ないとされています」。グラフトで胃大網動脈使用の手術は日本人が最初だ。冠動脈バイパス術で多枝全動脈グラフトは珍しく、国際冠動脈外科学会で橘医師が講演したのもそれが理由だった。
橘医師が小開胸による低侵襲心臓手術(MICS)を開始したのは2年前。さらに低侵襲冠動脈バイパス術(MICSーCABG)に多枝動脈グラフトを用いるようになったのは昨年2月からで、これまでに14例の手術を行ってきた。橘医師が手がける「低侵襲多枝冠動脈バイパス術」を行っているのは国内だけではなく、世界でも限られた心臓血管外科医だけだ。


心臓の模型を使って低侵襲冠動脈バイパス術の説明をする橘医師


低侵襲多枝冠動脈バイパス術後のCT画像


MICSーCABG専用器具にて手術施行。MICSーCABGでは術中の輸血はほとんど必要ない


低侵襲多枝冠動脈バイパス術のVR(バーチャルリアリティ)による手術シミュレーションは世界で初めての試み

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