私は初老男である。
様々な心乱れる事柄に流されている初老男である。
しかし、そうしたことをすべて飲み込んでの日常を過ごして行こうと思っている。
この歳になる睡眠が不安定になる。
変に目が冴えて眠れないのに、早くに目が覚めたり・・・・。
大きく朝寝坊してしまったり。
今週の初めに、朝方4時頃に目が覚めた。
真っ暗である。
眼を閉じるが・・・眠れない。
そうした時にはラジオのスイッチを入れる。
すると。
なつかしい声が聞こえてきた。
三遊亭圓生が「百川」を演っている。
実はこのCDは持っている。
最近は落語ディーパや落語会に行ったりで、CDを聴いていない。
噺は終盤。
田舎者の百兵衛が魚河岸の若い衆に使いに出されるところ。
なんとも「たまらく可笑しい」
百兵衛が若い衆に常磐津の師匠を呼びにやらされるシーン。
三遊亭圓生という人は、多人数の演じ分けが富にうまかった。
百兵衛は訛りがひどくて、簡単に演じ分けられると落語初心者は思うであろう。
しかし、その訛りが少しでも滞って聞こえると台無しなのである。
そのヒドイ訛りの百兵衛と相対する江戸っ子の河岸の若い衆を瞬時に演じ分けること。
これが「百川」の真骨頂だろう。
「ひ」が「し」と自然に発音してしまうくらいに圓生は江戸っ子を演じきっている。(実は大阪出身なんだな)
そこに大看板になるまでの彼の練られた芸の凄みを感じるのだ。
寝床の中でクスクス笑いながら、オチを聴く。
「全部じゃぁねぇたった一字だ」
もともと、この「百川」という話は一度くらい聴いても全く意味が分からない。
「四神剣」(しじんけん)がなんのことなのか?
それを百兵衛が「主人家」(しゅじんけ)を訛って言ってしまうことで、若い衆が聞き間違えるとか。
「今朝から魚河岸の若い衆が4、5人来てるから常磐津語りの女歌女文字(かめもじ)を呼んで来い」と言われたのを
「袈裟懸けに斬られた若い衆が4、5人いるから外科医の鴨池玄林(かもちげんりん)」を連れてくるとか
こうした言い回しや、言葉の意味はある程度聴き込んだり、調べたりしないと理解できないはずだ。
ただ、逆にそれらを調べると江戸時代から明治期かけての東京の風景・暮らし・人間の気質みたいなものが生き生きと感じられるのだ。
・・・・落語はいい・・・・。
今回も最後までお付き合いいただきありがとう。これを読んでいる皆さんも「楽しむ」ための努力を怠りませんように。
May
落語で最初から「爆笑」したいなら・・・。まあ、やっぱり「桂枝雀の軽い噺(時うどん・八五郎坊主とか)」から始めることをおススメします。確実に笑えます。とにかく「笑わせる」ことを突き詰めた噺家さんですから。
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