私は初老男である。
数日前に「マツコの知らない世界」なる番組をやっていた。
この番組はとても面白い。
マツコ・デラックスという人のシニカルな感覚は、やはりあの風貌によるオネエであることに由来しているのだろう。
そうした中でも、完全に完成してぶれないシニカルさを身に着けている彼女のこの番組でのリアクションは信用していいと思う。
今までの回においても、不自然さの無い表情を見せているし、達者な切り返しで笑いも取っている。
今回のテーマ「包丁」。
この回をみのがした人もいるだろうから、ちょっと説明するが・・・・。
カナダ人のビヨン氏が例の如くマツコに、自分の知識・自慢の品の包丁を紹介している。
すでにお忘れの貴兄も多いかと思うが・・・。
私は包丁人である。
当然であるが包丁には一家言ある。
ついつい、口をはさみたくなる。
紹介されたのは
「堺兼近作銀三本鍛錬22000円の三徳包丁」
三徳包丁という括りで言えば、まず最高級であろう。
まず、三徳包丁というのは完全なる「家庭用」であり、万能的な調理のためにできている。
このレベルであれば、刺身を切ることさえ安物の柳葉包丁よりきれいに切れるはずだ。
そして次に
「多和ダマスカスVG10ペティナイフ 12500円」
ペティナイフは、基本的に一般家庭では必要ない。
それこそ、こだわって細かい作業をする人でないと先ほどの切れる三徳包丁があれば必要ない。
そして、
「多和ハイス鋼柳刃9寸47000円」
このレベルの包丁はプロの中でもかなりの腕のある人でないと、その真価を引き出せない。
包丁の切れが調理に直結しているのは「言うに及ばず」。
そこに価値を見出さなければ成立しない話ではあるが・・・。
次に彼のコレクション
「MACMK-40モーニングナイフ 2808円」
しなるタイプの万能ペティ。これは、実は決定的な欠点があるがそれは後述。
一つ飛ばして最後は
「堺兼近作青二鋼ダマスカス黒染め出刃包丁 270000円」
もはや、これは工芸品に近い。ビヨン氏も使ったことは無く眺めているだけだという。使う気もないという。
こうした番組は、本当に楽しい。
マツコも本当に素の反応をしている。決してオーバーではないリアクションだ。
ビヨン氏が再三番組の中で言っているが・・・。
包丁というモノは、その刃を充分に使って「押して」(ないし引いて)切るようにできている。
大抵の人は大げさに言えば「真下」に向かって包丁を動かして物を切ろうとする。
「斜め前下」(斜め後ろ下)に向かって大きく包丁を動かすのが正しい。
最後の最後に「ケチ」をつける。
最大のツッコミどころは
「包丁の手入れ(研ぐ)のこと」
を紹介していないことだ。
紹介された包丁は、たしかに切れるしその切れ味はかなり保つ。
だが、必ず「研がなければ」ならない。
そして、その包丁が高価であればあるほど「研ぐのがむずかしい」ようにできている。
高価でなくてもMACMK-40モーニングナイフのような、特殊な包丁はさらに研ぎがむずかしくなる。
そのことを紹介しないで、番組を終えるのはあまりに「不親切」である。
紹介された包丁を自分ですべて手入れできる人など、プロであってもほとんどいないといえる。
テレビ番組は、えてしてそうしたもので、それくらいに思ってみるべきなのだろう。
って、分かっていなかったのは私だけか?
今回も最後までお付き合いいただきありがとう。これを読んでいる皆さんも、自分の身にあった包丁を使いますように。
May
私の持っている柳刃はスェーデン鋼の9寸20000円が最高であるが、私には身にあったモノだと納得している。残念ながら多和ハイス鋼柳刃9寸47000円は使いこなせる自信がない。
そして、いかに工芸品に近い「堺兼近作青二鋼ダマスカス黒染め出刃包丁」であっても「道具」であるなら、使ってやらなければ包丁にも作った包丁鍛冶にも失礼だ。
あくまでも、あくまでも私の個人的な感覚を書きましたのでお許しください。
そんな批判っぽい、読む人が嫌な気持ちになる文章じゃなくて
もっと前向きに書けばいいのに。
研ごうと刃を砥石に押し付けるとしなっちゃって
馴れてる人じゃないと刃付けは難しいかもね。
研ぐ事を前提とするなら人には勧めにくいな。
後たぶんだが、あの人は包丁屋ではあっても
研ぎのプロでは無いから騙すカス研いじゃったら
騙すカスの文様が消えちゃうから手が出せないんだよ。
ブルーイング(黒染め)にも別の技術がいるんで
そこまで研究したりと言った熱意は無いのだろう。
そうですよね・・・
使用してたら・・研ぐ必要ありますよね。
ペティの身の丈にあったものを購入します。
ただ、料理のプロは包丁研ぎもうまいですよ。
それこそ、毎日に近いレベルで研ぎますし。
10年もやってれば嫌でもうまくなりますよ。
お互い、リスペクトを忘れたらあかんですね。残念です。