Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『プレイヤー・ピアノ』

2016-05-12 19:59:47 | 読書。
読書。
『プレイヤー・ピアノ』 カート・ヴォネガット・ジュニア 浅倉久志 訳
を読んだ。

1952年に書かれた近未来小説。
現代を言い当てているようなところだとか、
現代からつながっていく近未来を感じさせるところもあります。
全体としてはレトロな未来ですけどね。
たとえば、個人のもつIDカードがパンチカードだったりする古さがあるし、
半導体はでてこなくて、真空管がでてきます。

駒を動かす盤ゲーム(チェスみたいなものかな?)
で人間を負かすための機械がつくられたり、
機械に仕事をとってかわられてリストラされたり、
格差のある階級社会になっていたり、
21世紀を予見している(洞察している)ところがでてくる。
内容そのものもとてもおもしろいです。

また、
AとBという対立があって、
たとえば作者はAの意見に同調しているとすれば
Aの意見をいうひとの描写やセリフはかきやすいのだろうけど、
ヴォネガットくらいになるとBの描写やセリフも卓越している。
敏腕弁護士以上に、
いろいろな立場や主張を理解してくみあげて表現する力があるよなあ、
と思いました。

この時代であっても、
機械に仕事を取って代わられないことが大事なんだよ、
という見抜きがあります。
社会に参加して役に立つ喜びややりがいは、
これからAIや機械が発達しても、
人間からむしりとられるべきではないのでしょうね。

作中にありましたが、ひとは、
二流の機械になるか、
機械の被保護者になるかの二者択一におちいるべきではないのです。

今後どういう形で機械が発達していくかわかりませんが、
そういうところは押さえないとおけませんね。
MITなんかじゃ、デジタルの次はバイオだ、と
もっと遠くを展望して未来を見透かしていたりするようですが、
いやはや、どうなることやら。

非常におもしろく読めました。


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