港区まち創り研究会(まち研)ブログ

港区の情報、まちづくり情報をお伝えします。
海外の街あるきの報告もあります。

世界の街から93--ニューヨークの建築あれこれ その1

2013-07-21 12:27:52 | アメリカの街から
2007年、2009年に訪れたニューヨークの建築作品をいくつかご紹介する。
 ニューヨークはまさに、世界の建築家の作品の展示場でもある。私が見たのはほんの一端にすぎない。
1 ニューヨーク近代美術館MOMA
 MOMAは1932年から現在地にあるが、2004年、大増築され谷口吉生氏のコンペ案が採用された。この美術館、中央の吹き抜け大空間を中心に立体的に展示室が配置され、どこからもこの吹き抜け空間を見ることができドラマティックな建築空間を楽しめる。ガラスの壁面が多く、館全体が明るい。半透明のガラスの壁面も面白い。谷口さんらしく、細部まできちんとデザインされており、シャープで緩みがない。フィリップ・ジョンソン設計の中庭のデザインも前衛的で素晴らしい。館のカフェテリアから見下ろす中庭の景観がよい。MOMAは私の好きな建築作品の一つである。
 収蔵されている美術品も、ルソー、マティス、ゴッホ、モネ、セザンヌなどの名画がずらりとある。展示は絵画だけではなくデザイン、建築、アニメなど多岐にわたる。

2 グッゲンハイム美術館
 フランク・ロイド・ライトの晩年の傑作である。ライトはこの建物の完成を見ずして亡くなったそうである。円筒形の建物の中を緩やかなスロープを降りながら絵画を見るアイディアは今でも斬新である。ただ、建物は大分年数たって、古くはなってきている。
下から見上げるトップライトのデザインが印象的である。


MOMA入口

MOMA吹き抜け大空間

MOMA吹き抜け大空間

MOMAカフェ

MOMAカフェから中庭を見る

MOMA中庭を見る

MOMA半透明にしたガラス窓

MOMAシャープな細部のデザイン

マティスの絵

モネ睡蓮大作

ルソーの作品

MOMA吹き抜けを上から見る

MOMA中庭から建物を見る

MOMA中庭

グッゲンハイム美術館のトップライト

ライトの外観スケッチ

内部空間

内部空間

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世界の街から92--アメリカ デトロイト市の破産

2013-07-20 08:30:46 | アメリカの街から
今日(7月20日)の朝日新聞にデトロイト市の破産を一面で大きく伝えている。ほんとにショックである。なんでも負債は180億ドル(1兆8千億円)とのこと。
殺人事件が年400件、街灯の4割が点灯しない、救急車が1/3しか稼働しないという。保険金目当ての放火がしばしばおこっている。焼け跡から銅線などの金属を回収する人がいる。銅線目当てに電話線を切断する事件が相次ぎ、周囲が停電する騒ぎになったそうである。犯罪が解決に至る割合は8.7%しかない。恐怖の街としかいいようがない。人口は現在70万人であるが、ここ10年間で25%減。失業率が23.4%を記録したことがある。まさに、都市の終焉である。
 米国の自治体財政に詳しい沖縄国際大学の佐藤学教授の話では、米国の自治体の破産は主要産業の衰退で人口が大幅に流出した結果、道路、病院など社会資本を支えきれなくなるケースが多いという。米国では日本のような地方交付税のような仕組みはなく、自治体の自己資本だけで運営されるので、このような事態になるという。
 アメリカのゆきすぎた格差社会と隠れた人種差別などが都市を歪めていると考えられる。
 ニューヨークですら地区による格差が大きく、治安が危ぶまれるところが多くある。
 日本では夕張市の破産があり、地方都市の財政はどこも苦しい。東京だけに、人や富が集中していくことはいずれ問題が生じることが懸念される。国土の均衡ある発展、地方の振興を真剣に考えることが迫られている。
 また若い人や高齢者、貧しい人や富める人、サラリーマンや自営業者などいろいろな階層の人が住み、混在しながらしっかりしたコミュニティを形成することが魅力ある都市の条件の一つである。港区もそんな街を目指してほしい。
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世界の街から91--ワシントンD.C.

2013-07-17 09:02:50 | アメリカの街から
安藤がワシントンに訪れたのは2009年である。2日間の滞在なのでところどころ見た印象を記す。
ワシントンは計画都市の一つである。中心地区にあるナショナルモールは広い連続する緑地帯で、モールを中心に主要な施設が配置されている。
もとの構想はフランス人のエンジニアであったピエール・シャルル・ランファンによって18世紀末に計画された。当初、この計画は受け入れられなかったが、20世紀初頭、アメリカに広がった都市美運動からマクミラン上院議員らによって見直され実現に至ったのである。ワシントンD.C.はフランス人によって計画されたと聞くと納得できる。広い緑地が連続するナショナルモールの構成はパリの中心地区によく似ている。フランスの都市計画の手法、都市軸の基本とする都市計画が取り入れられている。国会議事堂とワシントン記念塔を結ぶ都市軸上にナショナルモールがあり、ナショナルモールを面して、ナショナルギャラリー、国立航空宇宙博物館、国立アメリカ歴史博物館、国立自然史美術館などが建ち並ぶ。
ワシントン記念塔の西側には、リンカーン記念館やあの映画「フォレストガンプ」の一シーンで有名なリフレクティングプールがある。
また、この近辺にはアメリカ合衆国最高裁判所、国立劇場、ホワイトハウスなど国を代表する施設が立地している。
 ワシントンD.Cには厳しい高さ制限がある。建物の高さが全面道路の幅員より20フィート(6.1m)を超えてはならないということが法律で定められている。
ナショナルモールから見える建物の高さは一直線にきちっと整えられ感動を覚える。
シンボルとなるワシントン記念塔は1885年に建設されたが、高さ169mあり、当時は世界一高い建物であった。設計は建築家ロバート・ミルズのデザインである。近年、ポストモダンの建築家マイケル・グレイブスにより改修されている。
大きなドームのある連邦議会議事堂はプロポーションのよい美しい建物で絵になる。
ナショナルギャラリー東館はI.M.ペイの作品である。単純で造形的な外観、ピラミッド型のトップライトによる大空間の内部など、ペイの傑作の一つと言われている。
ハーシュホーン美術館はSOMの作品で、ドーナッツのような円筒形の建物がピロティに支えられ空中に浮かんでいるような大胆なデザインである。
ナショナルモールに立地する建物は大きくデザイン的にも優れたものが多い。しかし、歩いてどの施設に行くのにも、かなり距離があり疲れてしまう。全体がヒューマンスケールを超えており、親しみにくい。国の権威、威厳を示すような都市設計になっている。
水陸両用船のダックツアーに乗った。ポトマック川を走り、川からの景観を楽しむことができ気持ちがよい。
一方、ポトマック川に面するジョージタウンは歴史を感じる落ち着いた街であった。川沿いの商業地は、雰囲気がありたくさんの人で賑わっていた。

ナショナルモール周辺の航空写真 グーグルアースより

ナショナルモール 遠くにワシントン記念塔

ナショナルモール 連邦議会議事堂

ワシントン記念塔

リフレクティングプール

ナショナルギャラリー東館

ナショナルギャラリー東館内部

東館内部

東館と西館との連絡通路

東館外観

ハーシュホーン美術館外観

ハーシュホーン美術館中庭とピロティ

航空宇宙博物館

国立アメリカ・インディアン博物館

ダックツアー 川からの景観

ダックツアー 川からの景観

ジョージタウン

ジョージタウン

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世界の街から62---アメリカ リッチモンド

2012-09-20 07:00:52 | アメリカの街から
今日は、3年前に訪れたアメリカのリッチモンドという街をご紹介する。
ほとんど予備知識はなかったが、私(安藤)の妻の友人がいるので、訪れることになった。
 リッチモンドはバージニア州の州都人口約20万人で、日本で言えば水戸市のような都市にあたる。南北戦争の時、被災地となり壊滅的な被害を受けた後、建設された比較的新しい都市である。
アメリカ人が考える理想の街とはこんな都市なのだろうということが実感できる。広い立派な道路が整備され、きれいに手入れされた前庭のある住宅が続いている。職住を備えた都市で中心市街地も立派なビルが建ち並ぶ。広い公園もある。街はどこもきれいである。
車さえあれば、どこにでも行ける車社会に適合した都市である。以下2日間滞在したこの街の印象を記す。
・広い大きな住宅ときれいな住宅地
  知り合いのアメリカ人A氏の家に案内されたが驚いた。4人家族であるが、ともかく敷地も広く家も広いのである。道路から家の玄関までかなり歩く。庭もきれいに手入れされている。職業は弁護士さんと言うことで、とびぬけてリッチなアメリカ人ではない。食堂と居間が客用と家族用それぞれ二つずつある。ビリヤード室まで備えている。家のあちこちを案内していただき、飾ってある調度品、写真などの説明まで受けた。家の中を案内することがお客に対する一般的な慣例のようだ。庭には、木製のジャングルジムまで備えている。とにかく、何から何までそろっている。
  住宅地はどこの家も敷地が広く、前庭は、きれいに芝が刈り込まれ大きな木がある。
・トーマス・ジェファーソンの設計の州立議会議事堂
 翌日、リッチモンドの主要な場所を案内された。まず案内されたのが、アメリカ建国の父で初代大統領トーマス・ジェファーソン設計の州立議会議事堂である。大統領が設計を?と驚くが、実はトーマス・ジェファーソンは知の巨人といわれる人で園芸学、古生物学、建築学などにいろいろな学問に精通し、発明家でもあったそうだ。確かにきれいな建物であるが、デザインはギリシャの神殿のようでやや古典的な感じである。アメリカ人にとって、トーマス・ジェファーソンが設計した建物があることが誇りになっているようだ。
・街路
 通りはどこも広く、道路も広く街路樹もしっかり植えられていて緑が豊かである。記念碑大通りは彫刻や記念碑が建ち並ぶ。彫刻や碑の大部分は南北戦争で戦死した英雄たちである。ただ、バスのような公共交通機関はあまりみかけなかった。
・ダウンタウン
 規模は小さいが高層ビルが建ち並び、働きやすそうな環境に整えられている。職と住のバランスのとれた街であることがうかがえる。
 何でもアメリカでは有数のバイオテクノロジーの拠点都市であるようだ。
・文化施設
 市立のオペラ劇場であるランドマーク劇場に案内された。中も見たが豪華ですばらしい。20万都市でこんな立派なオペラ劇場があるとは驚く。
 他にもいくつか劇場があり、美術館、博物館もあるようだ。文化的施設も十分に整っている。
・モンロー公園(約3ha)
 手入れの行き届いた広い美しい立派な公園である。池のある日本庭園まで備えている。
・商店街 アメリカの都市に見られる低層の商店街である。広い道路や駐車場を備えており、どこにでも車が止められ買物や食事ができる。便利である。

・リッチモンドのもう一つの顔
 一通り見た印象はとにかく豊か、日本の都市の何十倍も豊かであることを実感する。
広い家に住み、大きな馬力のある車を乗りまわし、通勤も車ですぐに行ける。
 緑にあふれ、立派な公園もある。文化施設も充実し、街はどこもきれいである。
 しかし、このリッチモンドはもう一つの顔がある。
 犯罪発生率が2004年でなんと全米一であるのだ。殺人発生率は最悪で1990~1995年では毎年10万人あたりの殺人が120人を超えている。
 どうも、この裏にあるのは格差社会にあるようだが、詳しい理由は私にはわからない。
 若いうちは、こんな理想の都市に住んだら素晴らしいなあと思うが、年取って一人暮らしになり御殿のような広い家に住んでいたら、犯罪の多いこの都市に住んでいるのは恐怖でしかない。理想の都市とは何か、豊かさとは何かもう一度考えてみたい。

A氏邸 広大な敷地 アプローチが長い

A氏邸 手入れの行き届いた庭

A氏邸 木製のジャングルジムもある

A氏邸 食堂や居間も二つある

A氏邸 ビリヤード室

住宅地の景観

トーマス・ジェファーソンの設計した州立議事堂

州立議事堂

記念碑大通りの記念碑

緑豊かな街路

高層ビルが建ち並ぶダウンタウン

ランドマーク劇場

劇場内部 豪華である

公園の日本庭園入り口

日本庭園の池

A氏の乗り回している大きな車

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「アメリカの都市計画の誕生」という本から

2012-01-31 17:31:12 | アメリカの街から

昨年、12月に発行された分厚い「アメリカ都市計画の誕生」(鹿島出版会)という本を読んだ。かなり、専門的な固い本なので、その一部をご紹介したい。
アメリカで最初に都市計画のきっかけとなったのが、1902年のワシントンの「総合都市計画」である。マクミランという上院議員が建築家とタイアップして、広いモール(百周年大通り)を中心に官公庁施設を配置する案を提案した。見事に描かれた鳥瞰図で示している。現在のワシントンの街並みの原型となった。
 また、1897年から1902年にかけて、アメリカ各地のいろいろな団体で都市美運動が広がっていた。自治体芸術、村落改良、公共空間改良、野外芸術を推進する組織同士が交流しあい、アイディアを共有しあい始めた。都市美運動がアメリカ全土に広がり、マクミランの計画を歓迎した。
 その一つのモデルがハリスバーク市の運動である。最初の取り組みは婦人団体からで、家庭園芸、清潔な街路、公共ごみ箱、河岸でのごみ廃棄の禁止など様々な目標を掲げて活動した。マイラ・ロイド・ドックという婦人活動家が「都市美」について、あちこちで講演会を開いて、啓発活動を行った。これらの運動から「ハリスバーク自治体改良連盟」が組織され、市議会に起債限度の引き上げ、計画案を実施する公共事業委員会を創設することに成功した。さらに、改良事業に着手し、公園緑地システム、河岸散歩道、広範囲の街路舗装、上水道濾過、洪水防止などを行った。ハリスバークの計画が全国に広がっていった。
 私が感銘を受けたのは、アメリカの都市計画の出発がまさに、市民運動から始まっていることである。市民運動のさらに発端となったのは、婦人団体というのがうなずける。
 普段、地域のこと、生活のことをきちんと考えているのは、女性だからである。
 日本の場合、都市計画は役所主導で、さらに男性が主体となって計画している。日本の場合、市民団体の活動の歴史が浅くまた貧弱である。
 ワシントンの場合は、一人の政治家と一枚の鳥瞰図が人を動かしたといえる。
 日本では、このようにビジョンと実行力を持った政治家が少なかったと言える。
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世界の街から23---シカゴ

2011-10-01 15:26:46 | アメリカの街から
世界の街から23---シカゴところどころ

ミシガン湖から見るダウンタウン景観
 シカゴは、人口300万人を超えるアメリカ第3の都市である。アメリカ在住の建築家柴山正隆氏の案内でざっと一日歩いて見て回っただけなので、ところどころ印象に残った点を述べてみたい。
 1871年、大火災が発生し、街全体が燃え尽きたといわれている。それから計画都市が定められ、煉瓦、石造、鉄製の建築が推奨された。

1871年大火災の後

サリヴァンの設計 証券取引所
そのため、建築家が大活躍し高層建築物が次々建てられた。シカゴはアメリカ建築の発祥の地といわれるゆえんである。「形態は機能にしたがう」という言葉で有名なルイス・サリヴァンがこの時代に活躍し、高層建築の礎を築いた。フランク・ロイド・ライトもこのサリヴァンの事務所で働いていたことがある。
・高層建築のまち
 シカゴ中心部は高層建築が林立しているが、一定のゾーンだけである。高層建築物は、どれもそれなりにデザインされており、さすがシカゴと感じさせる。

シカゴ川沿いの景観

ダウンタウンの高層建築物
 シカゴ川を挟んで、ミシガン湖に近いゾーンに高層建築物が並ぶ。
344mのジョン・ハンコック・センターから街を見下ろすとほば中心地区の感じがわかる。

ジョン・ハンコック・センターの49階から市街地を見る
近代建築の3大巨匠の一人ミース・ファン・デル・ローエの有名なレイクショアドライブ・アパートメントを見る。L字型の2棟の高層アパートメントの配置が絶妙である。50年以上の前の建物であるが、今でもきちんと使われている。1階のピロティや周囲の緑地が素晴らしい。

レイクショアドライブ・アパートメント
・広場と道路
 シカゴの中心地区にあるミレニアムパークを見る。野外コンサートホール、劇場などがある10haの公園である。野外コンサートホールは建築家フランク・オー・ゲーリーの未来的な建物である。その他、外の景色を映す円形のガラスの建物と水が流れる塔とかいろいろな仕掛けがおもしろい。

ミレニアムパーク全体図

水が流れる塔

フランク・オー・ゲーリーの野外コンサートホール

野外コンサートホール

ミレニアムパークにある景色を映す建物
 火災の体験から道路は広く、歩道の横が緑化されて歩いて気持ちがよい。

広い歩道と緑地

・住宅地
 住宅地は意外に戸建てが多く、高級住宅地は前庭がきちんと整備されている。柴山氏の話では、このような住宅に住む人は、芝刈りなど前庭の手入れにかなり時間をさいているそうである。柴山氏の住宅のまわりも緑が多く、子どもものびのびと遊べる空間が一杯ありうらやましい。

高級住宅地

高級住宅地 芝生の手入れが大変そう

柴山邸周辺のオープンスペース

・おわりに
 高層建築物の林立する街の模型が博物館にあったり、シカゴ建築写真集が書店で販売されていたり、建築が文化の一つになっている都市で、高層建築物など見応えがある。しかし、都市全体はメリハリがあり、きちんとコントロールされている。ミシガン湖やシカゴ川などの景観もうまく生かしている。

フランク・ロイド・ライトのロビー邸が名所の一つ

ロビー邸内部

博物館にある市街地の模型

柴山氏と筆者
 
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世界の街から22--アメリカ ミルウォーキー美術館

2011-09-19 10:00:46 | アメリカの街から
世界の街から22 都市を象徴する建築アメリカ ミルウォーキー美術館

今回は、一つの建築の作品を紹介したい。
アメリカ在住の建築家柴山正隆氏の案内で、シカゴから車で建築家カラトラバの傑作ミルウォーキー美術館を見に行った。これほど独創的で美しい建築は今まで見たことがなく、久しぶりに建築作品で感動した。
 カラトラバはスペイン人で建築、美術を学んだ後、スイスのチューリッヒ大学で土木工学を学んだ。建築構造学に詳しく、生命体の構造・骨格にヒントを得ていると言われている。美術館は、ミシガン湖のほとり、公共施設が集まっているゾーンにある。
旧館は、フィンランド生まれで、ケネディ空港TWAターミナルビルの設計などで有名なエーロ・サーリネンの作品である。旧館と新館は長い通路で連絡している。

遠くに見えるのが旧館の美術館
 全体は鳥が飛び立つような形態で、骨組みは鳥の骨格のようである。屋根は吊られている。屋根の一部がなんと開閉するのである。屋根が開けられた状態では、ホールにふんだんに光が入り、閉館時間には羽を閉じるように屋根が閉められる。



閉館時間にだんだん閉じられる

閉じられつつある

完全に閉じた状態


道路と庭園にかけられた吊り橋から入る


ミシガン湖からの姿

ダイナミックな内部空間

内部空間

下の階に続く吹き抜け

連絡通路の空間

柔らかい光

通路の空間

光をうまく取り入れている

カフェ

駐車場

 立面も平面もほとんど優雅な曲線で構成されており、宇宙船の中にいるようで未来的である。しかし、構造力学に裏付けされた形態は、無理がなくどこを見ても合理的で美しい。
カラトラバが美しい橋をいくつも設計しているのが頷ける。間接的に取り入れられた光も演出も柔らかく優美である。単調で暗くなりがちな駐車場も造形的な柱の構成で、見応えのある空間になっている。
 また、ミシガン湖側から見る美術館の姿も素晴らしい。シドニーのオペラハウスとともに、一つの建築が都市を象徴する好例である。
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世界の街から11ーーーニューヨークに学ぶオープンスペースのあり方

2011-08-04 06:50:01 | アメリカの街から

ニューヨークに学ぶオープンスペースのあり方     安藤 洋一


1 高層ビル周囲のオープンスペース
 建築界の巨匠ミース・ファンデル・ローエの設計によるシーグラム・ビルは、50年前に建てられたオフィス・ビルであるが、未だに古さを感じないどころか周囲のビルと比較しても輝いて見える。ニューヨークでも家賃の高い方のビルである。前にあるオープンスペースが素晴らしい。ミースは、斜線規制をきらい、箱状の形態のビルにするために、前面道路から、セットバックし、広いオープンスペースを確保した。周囲のビルと比較しても、段違いに広く、ビルに風格を与えている。高層ビル周囲のオープンスペースの重要性がこのビルから認識できる。水をあしらい、ミースらしいすきのないデザインとなっているが、通りから誰でも利用できる。公開空地の取り方の手本となるビルである。

シーグラムビルと公開空地1

シーグラムビルと公開空地2

2 ポケットパーク

 1967年頃から、小さな空地を利用した小公園がいくつもつくられるようになった。たまたま通りかかって見かけたポケットパークである。

ポケットパーク1

ポケットパーク2
港区にも小公園はあるが、ニューヨークのポケットパークと港区の小公園の違いは次のような点である。

・ ポケットパークは、主に大人のくつろぎの空間で子どもだけを対象にしていない。
・ 大きな通りに面しており、間口より奥行きがあるが、通りからよく見える。
・ ビルの壁面を生かしている。水を流したり、花やつたなどの植栽で飾ったりしている。
・ 全体にお金をかけており、デザインの質が高い。
港区でも、オフィス街などに、こんな公園があったらかなり利用されるのではないかと思う。


3 ブライアントパーク
 ニューヨークのど真ん中、公共図書館前にある公園で、何度もいきたくなる居心地のよさそうな公園である。大勢の人が思い思いのスタイルで楽しそうに利用していた。こんな公園が港区にもできれば、住む人も働いている人も利用できるのにと考えてしまう。

ブライアントパーク1 それぞれが自分のスタイルで楽しむ

ブライアントパーク2 明るく、にぎわいがある

つたがすばらしい

すずかけのきの植栽

 実は、この公園、かってはドラッグの売買、売春、ホームレスのたまり場など犯罪の温床になっていた。造園計画に問題があったようだ。1988年に造園家の手で再生され、多くの人が利用するようになり、かっての暗いイメージが一掃されたとのこと。造園計画が社会に及ぼす影響を示すよい例であろう。下の部分に葉が茂らないスズカケノキの植栽で、公園を明るく見せている。ツタの植栽も魅力的である。


4 セントラルパーク

 高層ビルが林立するニューヨークで信じられないが、人口一人あたりの公園面積はなんと29.3㎡もある。港区の一人あたり公園面積は6.59㎡で、ニューヨークのわずか22%しかない。ニューヨークのほぼ中央にあるセントラルパークは面積341haもある。公園・緑地は、大きくまとまればまとまるほど、動植物の生態や都市の環境を保全する役割が大きくなる。ニューヨークのマンハッタンは、高層ビルが林立しても、ヒートアイランドはあまり問題となっていない。それは、マンハッタンが東西、河に挟まれており、南は海に面し、中央に大きなセントラルパークがあるので、水と緑に囲まれているためと考えられる。港区、東京とは環境面で根本的に違うのである。港区は決してニューヨークの高層ビルの林立を手本にしてはいけないのである。セントラルパーク東側周辺のマンションは、ニューヨークでも最も価格が高い高級住宅地になっている。公園の存在が経済価値を生んでいる。

セントラルパーク

セントラルパーク

上から見たセントラルパークとマンハッタン  グーグルアースより

南の海から見たマンハッタン


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世界の街から3--保存と開発が調和したまち アメリカ ボストン

2011-07-05 05:27:27 | アメリカの街から
保存と開発が調和したまち アメリカ ボストン

筆者(安藤 洋一)ボストンは2度訪れている。いずれも5月と7月の季節のよい時ではあるが、冬は零下20度以下になることもあるようだ。
古い街並みを大事にしているが、超高層のオフィスもかなりあり、新旧の建物を上手に混在させながら美しいまちになっている。
まちの特徴を見ると、港区とも類似した点もあり、港区が目指すまちの一つのモデルと思われる。
●歴史のある街

 ボストンはアメリカで最も早くからできた都市である。17世紀から人が住み始めている。
ボストン茶会事件はイギリスから独立運動のきっかけとなった事件である。
ボストン人はまちの歴史に誇りをもっている。そのため、歴史的建造物を大切に残しているし、古い建物をうまく再利用している。
ビーコンヒルやニューベリー、・ファニエルマーケットプレイスなど古い建物をうまく生かした地域が輝いているまちである。
●教育のまち

MITの校内
ボストンには、ハーバード大学、MIT、ボストン大学など、大学が60を超える。
学生も多く、まちが若い人の活気にあふれている。大学研究者がまちづくりにもいろいろ提案している。
●文化のまち

ボストン美術館新館 I.Mペイの作品
 ボストン交響楽団、ボストン美術館、ボストンマラソンなど世界に誇れる文化がある。
●海を生かしたまち

▼広い海の遊歩道

▼遊歩道からの景観

▼遊歩道に面したオーブンスペース
 海岸沿いに広い遊歩道があり、多くの市民が散歩している。
 また、遊歩道の近くに広々したオープンスペースがあり、気持ちがよい。
 海沿いの土地利用を厳しく規制している。 
 港区でも海岸沿いに広い遊歩道を整備して、またオープンスペースを確保するなど海を生かしたまちづくりを期待したい。
●ウォーキングシティ

植栽と広い歩道
 アメリカの都市の中では、比較的コンパクトなまちで、歩く人の割合が最も高いまちである。それ故、ウォーキングシティといわれている。自転車の利用率も高い。
●市民意識が高い
 イギリスから独立するきっかけとなった事件の発祥の地である。伝統的に市民意識が高い都市である。ビーコンヒル周辺で50mの高級高層マンションの建設に反対し、集団で公聴会に出席しそれを阻止したり、ボストンコモン周囲の道路の拡幅を許さなかったりしている。
●ボストンのまちのみどころ
・ボストンコモン




 ボストン中心部にあるアメリカ最古の公園。面積20ha。もともと、共有地・入会地であったようだ。市民の憩いの公園になっている。
・フリーダムトレイル




赤い線が引かれており、線をたどるとアメリカの独立と関係ある歴史的な重要建造物を見て歩くことができる。出発は、ボストンコモンである。16ヶ所、全長4km。
ボストンの観光名所になっている。
・ビーコンヒル



18世紀末に開発された住宅地。ジョージア形式のレンガ造りの集合住宅地。今でもボストン市民のシンボルになっており、最も地価の高い高級住宅地である。
・ニューベリー



ボストンで最もおしゃれな商店街。古いレンガの集合住宅を改造して商店街にしている。
カフェ、ブティック、画廊、美容院などの店舗が連続している。
・ファニアルマーケットプレイス

古い倉庫街を改造して商業地にリニューアルした。広場では大道芸などが常時行われて楽しい空間になっている。
・高速道路の地下化

▼高速道路地下化 筆者が訪れた時はまだ工事中であった。現在完成している。
海岸部と商業地の間にある高架の高速道路を地下道路とし、道路の上部をオープンスペースに開放した。海岸周辺の景観を尊重したまちづくりの考え方はすごい。
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