1903年に世界で初めて有人動力飛行を成功させたのはアメリカのライト兄弟である事は、今日多くの人々が既に知っている事である。しかし、その兄弟が発足させたライト社は今日ロッキードマーティン社として別物に姿を変えて存在している事はあまり知られていない。当時、ライト兄弟は Wright Cycle Co.(ライト自転車商会)を営みながらその自転車製作の技術を応用し有人動力飛行機、ライトフライヤー号での飛行をノースカロライナの海岸で成功させた。初飛行の影に自転車技術の蓄積と応用が存在した。
これがライトフライヤー号です。
場所はスミソニアン航空博物館(National Air and Space Museum )内の一角です。
飛行機の素材は、ほとんど木とキャンバスですね。
1903 WRIGHT FLYER
機体の左側に操縦士が這いつくばって操縦の棒を握ります。
そして、左側にエンジンが座り、
左右の重量バランスを考慮している事が分ります。
機体の左側に搭載された12HP4気筒のエンジンのクランクから左右のプロペラにチェーンが伸びており、エンジンの動力が後方の2つのプロペラを回して機体を押進める構造である。
人間を乗せて動力で空を飛んだという事は、当時としては画期的な出来事だった。
人々は空を見上げて、まだ観ない未来を見たのだ。
...
しかし、僕はその未来という時間場所から当時を観る。
注目したのはこれ、
ライト兄弟が製作した自転車。
今回のDC滞在目的の一つは、この自転車を眺める事であった。
彼らのブランドはVAN CLEVE という名称だった...らしい。
実物、ライト兄弟のライトサイクルカンパニーが製作した自転車。
当時のロードレーサーです。
早く走る為に空気抵抗を考慮したドロップハンドル。
今では、セミドロップと呼ぶのかな。
脇を広げて腕を曲げての前乗り姿勢ですね。
100年以上昔に製作されたとは思えないです。
リムはおそらく木製です。
ケースから出して、またがってペダルを踏むと、
おそらく今でも問題なく使える事でしょう。
自転車の基本的なダイヤモンドフレーム構造は今日まで変わっていない。
自転車は密封された厚いガラスケース内に展示してあり、周りの鑑賞者達の気配と気分を考慮しながら写真撮影しましたので、写真のクオリティは悪いですが、(腕も)お許し下さい。この自転車を観て、当時のアメリカの物作りの渋さを感じさせられます、一日中眺めていても飽きませんよ。それ程味のある造りです。
歴史が残した一台の自転車。この一台の自転車をアメリカ人が観ると、彼ら彼女らは自信と誇りを取り戻すであろう。日本人の僕が観るとアメリカという国の脅威を感じるのだ。アメリカの匠の技は今日も静かにその存在を示している。物造りで日本はアメリカに勝ったなどとは言うな、思いもするな。謙遜でいい。そう言うのは学者や経済者の書いたベストセラー本ではなくて、たった一台の自転車の存在なのだ。