The Last Mile は2007年に発行されたアメリカの映画俳優ステーブマックイーンの写真集の中の一つの名前である。50歳という若さでこの世を去ったマックイーンの最後の妻であったバーバラとの4年間を追って集めた写真集である。
マックイーンは俳優にならなかったらカーレーサーになれたと言われた程の運転に対する腕を持っており、最高のカーチェースシーンと言われる映画Bullitt(ブリッツ)においても自らマスタングのステアリングを握っての撮影であった。彼の写真集には必ずクルマが登場するが、それは映画でもプライベートでも彼はクルマが好きであったからである。
それ程にクルマ好きなマックイーンだが彼はジャガーやポルシェの様なスポーツカーだけが好きな訳ではなかった。この写真は1953年のフォードピックアップトラックである。手に持っているのはコーヒーのマグカップではなく何故かクアーズの缶ビール。The Last Mile の写真集の中で僕が好きな写真の一つである。なぜこの写真が好きか?というと、クルマがカッコイイのではなく、クルマに乗る人がカッコ好く見えるからである。
では、なぜカッコいいのか?って考えたらそれには2つのポイントがあると僕は勝手に思っている。まず以外と思われるかも知れないが、クルマという物に対するこだわりが無い。これは彼自身がクルマを使って走らせて楽しむ事をクルマに求めている姿勢から感じた。そしてもう一つは映画ブリッツのマスタングを観ても分かるが愛車はピカピカでは無く多少の傷凹みがある。またこのフォードピックアップの様に多少のヤレや錆も容認するクルマに対する寛容な姿勢である。
The Last Mile という写真集の題目の表現は少し悲しい表現であると感じる。ハリウッドスターとして成功したマックイーンには華々しい実績の裏には孤独や寂しさがあったのであろう。しかし、そんなマックイーンだがクルマのステアリングを握っている姿は実に活き活きとしている。別の表現だがクルマに癒されている様にも感じる。
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クルマって大事にし過ぎて磨いて車庫に置いておくだけだと、逆にオーナーの気持ちは束縛されてゆくのかも知れない。たとえ旧車であったとしても、使って走らせて人の為に働いてもらうのが車にとってもオーナーにとっても活き活きしているって思う。
自分の乗っているクルマがかっこいいと言われるのは嬉しい。更にそのクルマに乗るのにマックイーンと同じ様な気持ちを持っていれば容姿に関係なくそのクルマが似合うという事です。このマックイーンのクルマに対する姿勢がクルマ生活を楽しむという事への一つのヒントになるかも知れないと思っている。