万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アジア人差別問題-日本国は名誉の回復を

2021年03月26日 12時09分43秒 | 国際政治

 新型コロナウイルスのパンデミックが武漢から始まり、かつ、同地のウイルス研究所に置いて開発されていた人工ウイルスの疑いも濃いことから、世界各国では反中感情が広がっています。ウイグル弾圧も多くの人々が知るところとなり、アメリカでは、中国人と間違われた日本人が襲撃される事件も発生しています。アジアの人々が中国の悪行の’巻き添え’になるという、忌々しき事態が起きているのです。

 

 この状態が続きますと、アジア人差別は激化する怖れもあります。とりわけ、ヨーロッパ諸国には、モンゴル軍の来襲により多大なる被害を被った歴史がありますので、もとより、アジア人に対する感情は芳しくはありません。かのノストラダムスも、この世の終わりとして’アングルモアの大王’の再来を予言しておりますので、西欧の人々は、その深層心理においてモンゴル人、あるいは、モンゴロイド系の人々に対して恐れを抱いているのでしょう。残忍を極め、大量虐殺によって自らを滅ぼしかねない存在として…。近現代に至っても、ドイツ帝国のヴィルヘルム3世は’黄禍論’を唱え、脅威を煽っていました。そして、今日、中国は、あたかもノストラダムスの予言を的中させるかのように、全世界に災いを振りまき、その強大な軍事力は、人民解放軍という名の’現代のモンゴル軍’による世界支配を予感させるのです。

 

 どのような理由であれ、アジア人であることを理由に暴力を振るう行為は許されませんし、こうした行為は、れっきとした犯罪です。マスメディアでも、アジア人差別を糾弾する論調が支配的です。しかしながら、その一方で、人とは、他者をその言葉や行動で評価し、自然に好悪の感情が湧くものですので、中国に対する悪感情の広がりは理解に難くありません。日本国内でも、対中感情は年々悪化の一途を辿っており、その率は、アメリカをも上回っています。犯罪や違法行為には及ばなくとも、中国人が、全世界の人々から嫌われたり、忌避されることは十分にあり得ることなのです。

 

 同問題の解決策として、’差別をやめよう’と訴えることは簡単です。リベラル派の人々は、’差別反対’を万能薬と見なしているかのようです。しかしながら、国際法のみならず、人道に反する加害行為を繰り返し、他の諸国の人々に実害と潜在的脅威を与えている中国側に根本的な原因がありますので、同問題を解決策するには、中国自身が自らの行為を恥じて改心し、利己的他害行為を止める以外に他にありません。因果関係の順序は、中国が’因’なのですから。

 

それでは、中国は、自らを変えることができるのでしょうか。少なくとも、全ての責任を他者に転化し、法を破り、他者を害しながら平然と自らの正当性を主張する現体制の体質にあって、中国に’革命的な変化’を期待しても虚しくなるばかりです。否、狡猾な中国のことですから、’差別反対’を大義名分として、他の諸国の人々に対して’被害の甘受’、あるいは、’泣き寝入り’を強いるかもしれません。中国に対する正当な批判も、’差別発言’として取り合わないか、あるいは、あらゆる手段を使い、’ヘイトスピーチ’として封殺しようとすることでしょう。

 

中国が現状のままであるとすれば、日本人を含め、他の地域の人々から中国人との見分けがつかないアジアの人々は、正真正銘の’いわれなき差別’に苦しめられることとなります。これでは、中国人のみならず、全アジア人が非文明人として扱われてしまいかねません。中国の悪行の罪を他のアジアの人々まで背負わされるという状態は決して望ましくなく、ここで、何らかの対応策を考えるべきと言えましょう。そして、今こそ、日本国の’出番’でもあるのかもしれないのです。

 

まず考えられる策とは、日本国が、中国と明確に一線を画することです。日中間の価値観、国柄、並びに国民性等には大きな隔たりがあります。一党独裁体制を敷き、国際法を遵守せず、かつ、人権弾圧を常とする中国とは与せず、日本国は、自らの発言や行動でアジア諸国は中国のような国ばかりではないことを全世界に向けてアピールするのです。この点、ミサイル発射によって威嚇を繰り返す北朝鮮は、アジアのイメージを一層悪化させ、中国を利する‘裏切者’とも言えましょう。もっとも、二階幹事長が陰にあって仕切る菅政権も、中国との間の親和性において不安なところです。

 

中国としては、アジア差別は共通の課題として日本国に共闘を持ち掛けるでしょうが、日本国政府は、むしろ、中国人と間違われることによって発生する自国民への‘いわれなき差別’から自国民を護り、そして自国、並びに、アジアの名誉のためにも、民主主義、自由、法の支配、並びに、人権を尊重する文明国として立場を明確にすべきではないでしょうか。傍若無人に振舞う中国に対して批判を躊躇するようでは、アジア差別の問題解決は、遠のくのみではないかと思うのです。


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