万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

グローバリズムと政治家

2021年03月19日 14時37分33秒 | 国際政治

 グローバリズムと言えば、国境を越えてモノ、サービス、マネー、情報、テクノロジー、そして人などが自由に行き来する状態を未来像として想定していますので、経済分野における現象として理解されがちです。しかしながら、今日、アメリカにあって大統領選挙に多大な影響を与えたように、グローバリズムは、政治問題として人々の意識の表面に浮上してきています。本日の記事では、日本国を事例として、グローバリズムと政治家との関係についてその一面を探ってみたいと思います。

 

 グローバリズムは世界を一つの市場と見なしますので、国境線によって細分化されている地図上の政治的枠組みとは一致しません。このため、グローバリズムは、国家との間に摩擦や軋轢を生みこそすれ、その’親和性’については特別な関心を払われてきませんでした。しかしながら、今日、全世界の諸国は自国の枠組みが融解する危機に直面しており、それは、国家を基盤として成立してきた民主主義の危機でもあります。先のアメリカ大統領選挙にあって、’グローバリスト政党’とも言える米民主党と中国との結託による選挙不正工作が強く疑われ、今日なおも払拭し切れずにバイデン政権の正当性を揺るがし続けているのも、政治的現象というものが、もはや一国の国内状況のみでは説明し切れなくなった現状を現わしていると言えましょう。

 

 それでは、日本国の政治は、グローバリズムとは無縁なのでしょうか。今日、自民党と公明党による保守系の連立政権が成立しており、保守=独立堅持=自国優先=安定志向=伝統重視といった従来の定式に照らせば、グローバリズムとは対極にあるはずです。しかしながら、今日における自公連立政権の政策はもはや保守政党のものとも思えず、言葉では保守を装いつつも、自国を’保ち’、国民を’守る’ことにも無関心です。否、偽旗作戦よろしく、保守の看板によって保守傾向の強い国民を騙しているようにも見えるのです。

 

 日本国内から保守政党が消えてしまいますと、日本国の政界は、全て’反日政党’、あるいは、’グローバリスト政党’になりかねないのですが、保守政党の急激な変質の一員は、グローバリズムに求めることができましょう。政治とマネーの問題は、古くて新しく、グローバリズムの時代に固有のものではありません。かつての保守政党に対する主たる批判点は、自らを国会に送り込んだ地元選挙区への利益誘導でした。’仕事を持ってくる’は、政治家の’仕事’と見なされていた時代もあったのです。また、大企業からの多額の献金も、政治腐敗の要因として指摘されてきました。

 

 政治とマネーの問題は、人類を苦しめてきた普遍的な問題なのですが、従来型の政治腐敗とグローバル時代のそれとでは、違いがあるように思えます。その違いとは、経済的な国境が低くなる、あるいは、なくなることによって、海外の’政治とマネーが国内に流入して’内部化されてしまうところにあるのかもしれません。利益誘導は、より強いマネーの力を有する国やグローバル企業へと向かい、規模において劣位する日本企業、あるいは、日本経済は、国際競争力において負け組となってしまうのです。しかも、資金力やマスコミによる誘導・捏造、あるいは、不正選挙等によって民主主義も形骸化しており、国民の声は政治には届きません。グローバル時代の政治家とは、海外勢力の’悪代官’、あるいは、’代理人’に過ぎないのかもしれません。

 

 新型コロナウイルス禍にあっても、日本政府は、海外企業からのワクチン調達を優先し、自国企業の治療薬やワクチン開発を支援するどころか、積極的に’邪魔、あるいは、妨害’しているようにも見えます。デジタル化による情報の漏洩やLINEの問題等も、元を質せば、同分野において日本国政府が自国企業を育てなかったところに求めることができるかもしれません。今日、政治分野におけるグローバリズムの影響について真剣に考えませんと、いつの間にか、日本国は、グローバリズムの旗手である中国、あるいは、その背後に控える超国家権力体の’属国’、あるいは、’植民地’にされてしまうかもしれないと危惧するのです。


  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする