万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

世論調査は現実とは逆?

2021年03月08日 11時15分51秒 | 社会

 アメリカの大統領選挙は、マスメディアの中立性、並びに、事実に対する誠実性に疑問を投げかけることとなりました。前々回の大統領選挙では、ヒラリー候補優勢とするメディアの予測に反してトランプ候補が当選しましたし(報道内容と現実が一致しない…)、今般の選挙では、メディアを’共犯者’とする不正選挙問題が持ち上がることとなりました(不正行為で現実を報道内容に一致させる…)。かくして、かつてのようにマスメディアの報道を誰もが信じなくなってきたのですが、世論調査の結果につきましても、要注意なように思えます。

 

 これまでのメディア、あるいは、ジャーナリズムの立ち位置とは、’社会悪を暴く正義’の味方であり、’社会の木鐸’とも称されてきました。一般民衆の側に立って悪しき権力や権威に対峙する頼もしい存在であり、それ故に、多くの人々は、マスメディアの報じる情報を事実として信じてきたと言えましょう。しかしながら、今日、メディアと人々の信頼関係は、根底から崩れつつあるように思えます(日本国内では、朝日新聞社による慰安婦報道が問題視されるあたりからマスメディアの信頼性が著しく低下…)。上述したように、SNSを含めたマスメディアが人々を’騙す’ことを、自らの行動によって立証してしまったからです。しかも、悪しき権力や権威と闘うという姿勢もポーズに過ぎず、その真の姿は、特定組織、即ち、超国家権力体が操る情報統制・世論誘導機関であるとする疑いは濃くなる一方なのです。自らの’味方’と信じてきたメディアが、その実、’敵’であったわけですから、人々の認識の180度の転換は、両者の関係に修復不可能なほどの亀裂を生み出してしまったとも言えましょう。

 

メディアとその受け手との間の信頼関係が崩れつつも、なおもメディアは様々な情報を毎日発信し続けています。自らが超国家権力体のフロントであることを白状するはずもありませんし、世論誘導の思惑も認めようとはしないことでしょう。ここに、あくまでも誠実な情報発信者として振舞うメディアと、その正体を見抜いて疑う国民、という緊張関係が両者の間に生じるに至るのです。それでは、オーウェルの『1984年』をも彷彿される状態にあって、メディアが従来通りの方針で世論誘導を行おうとしますと、どのような現象が起きるのでしょうか。

 

 推測されるのは、情報の受け手の側が発信者の意図を読み取り、報道内容の逆を事実として推定する’逆解釈現象’です。例えば、先日、ワクチン接種に関して’直ぐに接種を受けたい’とする回答数が増加したとする報道がありました。今般のワクチンは、遺伝子ワクチンであるとする情報は、国民の間で広く拡散していますし、科学的な事実に基づく懸念を打ち消すほどの情報も今のところはありません(中長期的な副反応に関するエビデンスは存在するはずもない…)。常識的に考えれば、ワクチンに不安を抱く人の数の方が増加するはずです。ところが、世論調査の結果は逆なのです。この不可思議な現象の謎も、マスメディアの目的が世論誘導であると理解すれば氷解します。現実にあって接種希望者が少ないからこそ、’増加傾向’を演出し、同調圧力をかけようとしていると推理されるからです。また、菅内閣の支持率が上昇したとする世論調査の結果も、現実はその逆であるからこその’肩入れ’なのかもしれないのです(内閣支持率が低下する要因はあっても、積極的に支持率が上昇する要因は見当たらない…)。

 

 政府やメディアが発信する情報に対して、常に国民がその逆を推測し、裏を読もうとする状態が健全な社会であるとは思えません。同問題には、メディアには外部チェックが働かないというシステムとしての欠陥が潜んでいますので、まずは、マスメディアの発信する情報を外部からチェックする制御の仕組みが必要となりましょう(権力分立によるチェックアンドバランスの仕組み…)。メディア側が内部や身内で設けたファクトチェックは役に立たないどころか、’悪しき権力と権威’をバックにフェイクをファクト化するという意味では有害でさえあるのです。情報化時代であればこそ、事実に基づく情報発信が常態となる健全な社会の実現は、どこか怪しげな地球環境問題にもまして重要な人類の共通課題ではないかと思うのです。

コメント (4)
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