万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新型コロナウイルス禍は‘事件’である

2020年04月22日 11時28分06秒 | 国際政治

 中国の武漢にあって新型コロナウイルスによる感染症が発生した当初から、武漢市民の間ではウイルス研究所からの流出説が囁かれていたそうです。アメリカでもトランプ大統領が同説に言及し、マスコミ各社も報じたことから、武漢のウイルス研究所の存在が全世界的に注目を集めるようになりました。

 アメリカが徹底調査の姿勢を見せる中、かねてより米国との間で軋轢が深まっていたWHOは、ファデラ・シャイーブ報道官を介して武漢にあるウイルス研究所からの流出を否定する見解を示しています。「客観的な証拠はこのウイルスが動物に由来するもので、研究所で誰かに細工されたものではないことを示している」と…。

 コロナ禍の発生以来、WHOは中国と結託して誤った情報を発信し続けてきたため、同発言も信頼性に乏しく、その信憑性を怪しむ人も少なくないはずです。実際に、HIV発見の功績でノーベル医学・生理学賞を受賞者したフランスのリュック・モンタニエ博士は、新型コロナウイルスは研究所で作成された人工ウイルスであると明言しています。同博士に先立って人工ウイルス説を唱えた研究者も少なくなく(中国国内では排除・処分されてしまう…)、WHOの見解が唯一絶対なわけではありません。もっとも、同ウイルスの目的については、モンタニエ博士は、HIV感染症のワクチン製造であったのではないかと善意に解釈しており、生物兵器説は支持していないようなのですが(南京軍事科学院も関与しているのでは?)、専門家の目からすれば、遺伝子の塩基配列の分析結果から人工ウイルスであることだけは間違いないようなのです。

 アメリカに続いて、フランス、イギリス、ドイツ等も情報を隠蔽してきた中国に対する批判を強めており、巨額の賠償問題にも発展する勢いを見せています。日に日に高まる国際社会における中国批判が、WHOをして中国擁護の発言をさせたのでしょうが、この展開、もはや新型コロナウイルス禍が‘災害一般’ではなく、‘事件化’していることを示しています。つまり、同ウイルスによる被害が発生しており、それが、故意、あるいは、過失に因るものであるならば、一般の刑事事件と同様に司法解決を要する事件となるのです。つまり、国際法廷にあって、中国は被告席に座り、他の被害を受けた諸国は原告団として裁判に臨む構図となるのです。主たる論点としては、(1)同ウイルスは人工ウイルスなのか、自然界の有害ウイルスなのか、(2)発生源は研究所なのか、海鮮市場なのか、(3)同ウイルスは、過失により漏洩したのか、故意に散布されたのか、(5)人民解放軍は関わっているのか、否か…などがあり、そして、これらの諸問題の如何に拘わらず、とりわけ、中国の情報隠蔽によるパンデミック化の責任は、確認されえている事実なだけに強く問われることになりましょう。

 新型コロナウイルス禍が国際犯罪であるとしますと、その手続きは、一般の刑事訴訟の手続きに準ずるべきものとなります。WHOは、国際司法機関ではありませんし、しかも、中国に与して偽情報を発信した過去がありますので、共犯者として被告席で中国と並ぶ立場ともなりかねません。また、仮に中国ともども‘無罪’を主張するならば、自らの潔白を示す証拠を提示する必要もありましょう。なお、シャイーブ報道官は‘客観的な証拠’と言葉でのみ述べていますが、同ウイルスに関する塩基配列に関する解析結果等が証拠として示されているわけではありません。

そして‘事件’である以上、現場検証、即ち、武漢ウイルス研究所の立ち入り捜査や関係書類の押収等も必要となりましょう(武漢ウイルス研究所は、既に、中国政府によって爆破されている?)。如何に中国やWHOが声高に‘無罪’を叫んだとしても、確たる証拠がない限り、少なくとも無実を証明することはできないのです。否、案外、全世界の研究機関によって、何らの政治的な圧力を受けることなく、中立・公平な立場から同ウイルスの塩基配列の徹底分析が一斉に行われれば、少なくとも人工ウイルスか否かについては、比較的容易に判定できるのではないでしょうか。

 南シナ海をめぐる常設仲裁裁判所の判決を‘紙屑’として破り捨てたぐらいですから、中国が国際裁判所に大人しく出頭するとは思えず、おそらく、無視を決め込むか、恫喝、買収、利益供与、マスコミ動員といったあらゆる手段を使って諸外国の対中断罪の動きを阻止しようとすることでしょう。しかしながら、アメリカでは既に対中賠償請求の手続きが進んでいるように、国際司法の場に引き出せないとすれば、国家レベルの司法制度を以って中国を裁くかもしれません。WHOの規約違反、情報隠蔽、並びに、必要措置を怠った怠慢といった事実のみで、十分に有罪判決を受ける可能性があります。有罪判決ともなれば、賠償責任をも問われ、中国政府、あるいは、共産党幹部が有する対外資産の差し押さえや売却といった事態も想定されましょう。

 新型コロナウイルスがパンデミック化し、多くの人々の命と健康を奪い、経済や社会を著しく損なっている現状にあって、中国は、同ウイルス禍による被害を‘内政問題’として言い逃れることは最早できなくなっています。中国には、他国の惨状に乗じて覇権を追及するよりも、人類に対する自らの大罪に向き合うべきではないかと思うのです。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする