万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

非情な中国のマキャベリズム

2020年04月20日 12時25分15秒 | 国際政治

 

 新型コロナウイルス禍に多くの諸国が苦しむ中、メディアやネット上では、中国の軍事的行動が連日のように報じられるようになりました。武漢のみならず全国規模で都市封鎖を実施し、経済活動も一時的には殆ど休止状態にありましたので、中国が受けた傷は深く、その影響は長期に及ぶのではないか、とするのが一般的な見解でした。また、封鎖解除後にあっても、同ウイルスのパンデミック化の責任は同国にありますので、謝りはしないにせよ、国際社会に対しては低姿勢で接するものと予測されていたのです。

 しかしながら、この期待、あるいは、希望的観測は悉く裏切られ、中国は、医療物資の一大生産国である強みを以って他国に恩を着せる狡猾な戦略を遂行するのみならず、拡張主義的な活動を活発化させています。新疆ウイグル自治区のロプノール実験場にあって、核兵器の実験の動きが活発化しているとの報告に続き(核実験全面禁止条約違反…)、常設仲裁裁判所の判決で敗訴したはずの南シナ海でも、既成事実化を急ぐために一方的に自国の行政区を設置し、ベトナムとの間で緊張が走っています。また、日本国も例外ではなく、中国の公船による尖閣諸島周辺海域での活動は一向に収まる気配はありません。むしろ、コロナ前よりも中国の対外的な姿勢は積極的、かつ、挑発的になってきているのです。

 計画原理主義の共産主義国のことですから、習近平国家主席は、何としても当初の目的、即ち、一帯一路構想を完成させ、中国を頂点とした世界支配体制を確立したいのでしょう。そのためにはマキャベリズムの実践こそ近道であり、手段を択ばず、あらゆる状況を利用し尽くす決意を固めたのかもしれません。中国が目的の絶対化を特徴とする共産主義国家である点を考慮しますと、新型コロナウイルス禍による計画の遅れは許されず、むしろ、コロナ後にはこの遅れを取り戻すべくなりふり構わずにスパートをかけてくるとも予測されます。一般的な常識や良識に照らせば信じがたい暴挙ですが、徹底したマキャベリズムからしますと、中国にとりましてはコロナ禍のパンデミック化こそ最大のチャンスであり、軍事力の利用さえも合目的的な行動なのです。

 中国、あるいは、その背後に潜む組織による世界支配を歓迎する人は殆どおりませんので、今日の事態は人類の危機なのですが、中国に情けや容赦を期待しますとそれは災いとなって自らに返ってきます。獰猛な肉食動物は、弱い相手こそ格好の獲物ですし、否、追い詰めて弱わらせたところを狙うといった行動をもとります。人に対しては憐憫の情や同情を誘い、攻撃性を緩める効果が認められる‘弱さのアピール’も、中国に限っては逆効果となりかねないのです。
 
 そして、今般の新型コロナウイルスのパンデミック化についていささか穿った推理が許されるならば、昨年10月に武漢で開催された軍人オリンピックにも注目してみる必要があるように思われます。何故ならば、アメリカからの反論を受けて後には引き下げたものの、中国政府の高官は、同ウイルスの起源についてアメリカ発症説を唱えた際に、その根拠として‘同オリンピックではアメリカの軍人は一つも金メダルを獲得できなかった’と説明しているからです。この発言の意味するところは、‘既にアメリカ国内で感染が拡大していた‘インフルエンザ’の中には新型コロナウイルスが混じっており、後者に罹患した米軍の軍人が武漢に同ウイルスを持ち込んだ‘というものです。しかしながら、中国の主張とは逆のパターンもあり得ます。それは、同大会に参加した米軍の軍人が、同地にあって新型コロナウイルスに感染したというものです。武漢には人民解放軍とも関係のある各種のウイルス研究所が設けられていますので(もっとも、最有力の説は武漢ウイルス研究所からの漏洩…)、米軍人の優勝を阻むために、同ウイルスが使用された可能性も否定はできないのです。

米軍内部でも新型コロナウイルスの感染者が多数報告されており、軍事的な対中抑止力の低下が懸念されています。最悪を想定すれば、新型コロナウイルス禍も、パンデミック化も中国共産党の‘スケジュール’に書き込まれていたかもしれず、新型コロナウイルスの未解明な有毒性と同様に、一早くポスト・コロナとなった中国の行動については決して油断は許されないのでしょう。危機に際してはじめてその人の本性が現れるとも申しますが、今日の中国の行動を見る限り、その非道な獰猛性こそしっかりと見据えるべきではないかと思うのです。

コメント (2)
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