万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

自衛艦の旭日旗掲揚問題の背景とは-‘自衛隊封じ込め戦略’か?

2018年10月06日 11時32分52秒 | 日本政治
自衛艦 韓国派遣見送り 旭日旗自粛「受け入れられず」
今月11日、韓国政府は、14カ国が参加する国際観艦式を開催するそうです。日本国の海上自衛隊も護衛艦を派遣する予定でしたが、韓国側から思わぬ‘クレーム’が付いて、同護衛艦の見送りを決定したと報じられております。

 韓国側からの‘クレーム’とは、‘自衛艦旗として使用されている「旭日旗」は、韓国国民からは“侵略・軍国主義の象徴”と見なされており、この国民感情に配慮して、日本国側は、旭日旗の掲揚を自粛してほしい’というものです。ところが、自衛艦旗である旭日旗は、国内法、並びに、国際法の両者に照らしても掲揚義務があるため、韓国側の要請を無視して同旗の掲揚を敢行する選択肢もあったものの、結局、日本国政府は、自衛艦の韓国派遣を取りやめるという決断に至ったのです。

 こうして自衛艦の旭日旗掲揚問題は、日本国側が韓国側の国民感情に一定の配慮を示す形で一先ずは決着されるのですが、韓国側の‘クレーム’とは、国民感情のみが理由なのでしょうか。もしも韓国側が、今後とも、「旭日旗」を根拠として日本国の自衛艦の韓国領域への立ち入りを禁止する方針を貫くとしますと、当然に、朝鮮半島において有事が発生した場合には、同領域内での自衛艦の活動の一切が、韓国側から拒絶されることが予測されます。たとえ、安保法制上、日本国政府によって朝鮮半島有事が‘存立危機事態’と認定され、日米同盟における集団的自衛権の発動要件を満たしたとしても、韓国側の受け入れ拒否により、海上自衛隊による米軍支援さえブロックされるのです。想定される朝鮮半島有事の性格を考えれば、最も期待されている軍事力こそ、陸自でも空自でもなく、海上自衛隊に他なりません。そして、今般の国際観艦式への参加予定自衛艦が護衛艦であったところも気がかりな点なのです。

 旭日旗をめぐる日韓間の悶着がエスカレートしたのが3度目の南北首脳会談の後であったのは、単なる偶然なのでしょうか。親北派で知られる文在寅韓国大統領は、南北融和に傾斜するあまりに、今や、北朝鮮の‘代理人’、あるいは、‘メッセンジャー’とも見なされており、韓国の対日政策に北朝鮮の意向が反映されている可能性も否定はできません。さらには、北朝鮮の後ろには、中国やロシアが後ろ盾として控えていますので、これらの軍事大国の思惑が間接的に韓国の政治に及んでいるとする推測も成り立ちます。米中、並びに、米ロ関係が険悪化する中にあって、中国、ロシア、北朝鮮の三国は、日米離反、あるいは、有事に際しての日本国の‘自衛隊封じ’こそ、軍事的にアメリカに優るための有効な手段であると考えているはずです。

 このように考えますと、韓国における国民感情の反発は、文政権によるもっともらしい理由付けに過ぎず(日本国が相手ならば感情論でも通用すると考えているのでは…)、その背景には、アメリカとの対立の激化を見越した中国、ロシア、北朝鮮による‘自衛隊封じ込め戦略’が潜んでいるように思えます。今般の事件はその布石に過ぎず、国際観艦式に限定された一過性の問題でもないのかもしれません。日本国政府は、同盟国であるアメリカともに、その背景を含めて韓国の文政権の動きを慎重に分析すべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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