万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ大統領の方が日本国民を理解している?-移民大量送り込み発言

2018年06月17日 12時31分17秒 | 国際政治
トランプ氏、安倍首相に「日本に2500万人のメキシコ移民送れば君は退陣」
先日、カナダのラマルベーで開催されたG7において、トランプ米大統領が安倍首相に投げかけた発言が注目を集めています。その発言とは、「晋三、君はこの問題を抱えていないが、私なら日本に2500万人のメキシコ人を送り出すことができる。そうすれば君はあっという間に退陣することになる」というものです。

 メディアでは、暴言として扱っていますが、この発言、なかなか意味深長です。文脈としては、ヨーロッパ諸国で紛糾している移民問題に言及した際に放たれたとされています。おそらく、移民受け入れ政策に対する安倍首相の態度が、どちらかと言えば好意的であったのに対して、受け入れ反対の立場を貫くトランプ大統領としては、皮肉の一つでも言いたくなったのでしょう。そして、その皮肉が、移民政策に対する安倍首相と一般の日本国民との間に横たわる認識に‘ずれ’を衝いているところに、この発言の妙味があるように思えます。

 即ち、トランプ大統領は、一般の日本国民は、移民受け入れ政策に反対であるとする認識の下でこの発言をしているのであり、仮に、2500万人もの移民が日本国内に押し寄せることにでもなれば、当然に、日本国内の世論は一気に反安倍政権に傾き、内閣総辞職に追い込まれるか、もしくは、三選目はないであろう、と述べているのです。その真意は、もちろん、移民政策に反対である‘アメリカの立場を支持せよ’、というものなのでしょう。つまり、安倍首相は、移民反対への転換を暗に求められたこととなります。

 トランプ大統領が日本国側に反移民政策への転換を促していたとしますと、その後の安倍首相の対応は、その逆と言うことになります。何故ならば、メキシコ移民でもなく、2500万人とまではいかないまでも、昨日、閣議決定された「骨太方針2018」では、単純労働者を含む移民受け入れの拡大方針を示しているからです。安倍首相は、トランプ大統領の‘忠告’に耳を貸すこともなく、自らが政権の座を追われる可能性が高くなる道を、自ら選択しているのでしょうか。

日本国政府に対して政策の転換を示唆した点においてトランプ大統領の発言は確かに内政干渉的なのですが、その一方で、一般の日本国民の心情に基づいていると言う点では、むしろ、日本国民本位の提言であったことになります。日本国民を無視する日本国政府と、その目的はどこにあるにせよ、日本国民の心情を理解して日本国政府の政策に苦言を呈するアメリカの大統領。この両者のクロスした構図からしますと、トランプ発言を単なる暴言として批判することはできないように思えるのです。

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コメント (2)
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