正恩氏、交渉姿勢維持=中止に驚きも目標変わらず
北朝鮮が米朝首脳会談の開催を申し出た思惑とは、アメリカを‘段階的核放棄’という、同国の核温存戦略に巻き込むためであったと推測されます。しかしながら、この思惑は外れ、現実には、自国を瀬戸際に追い詰める‘悪手’であったのかもしれません。
同会談の中止をめぐる米朝間の応酬は、結局、北朝鮮が半ば同会談の開催をアメリカに懇願する展開となりました。軍事制裁をも辞さずの態度を以って米朝首脳会談の中止を決断したトランプ大統領に対し、北朝鮮側は、即座に金桂寛外務次官が再考を促す談話を発表しています。
凡そ8つの内容から成る同談話一読すると、北朝鮮の弁明のように解されるのですが、起承転結風に再編集すれば、(1)米朝首脳会談は、世界の平和と安定を願う人類の念願である、(2)北朝鮮は、同会談で解決するための努力を続けてきた、(3)にも拘らず、アメリカは、一方的な核放棄を迫った、(4)それ故に、米朝首脳会談は‘良いスタート’として開催されるべきである、となります。このように整理しますと、北朝鮮が詐術的な詭弁を弄していることは明らかとなります。
第一に、人類の念願は、米朝首脳会談の開催ではなく、あくまでも‘北朝鮮の核放棄’です。北朝鮮は、巧妙に両者を入れ替えることで、同会談の中止を平和に反する反人類的な行為と認定し、‘人類の平和’の名の下でトランプ大統領を断罪しているのです。
第二に注目されるのは、(2)と(3)との繋がりです。ここでも、北朝鮮は、会談中止の責任をアメリカに転嫁しています。北朝鮮側の努力を無にしたのは、アメリカが‘即時的核放棄’を要求したからと述べているからです。つまり、間接的に、アメリカに対して同要求を放棄し、自国が主張する“段階的核放棄”の路線に同意せよ、と迫っているのです。
そして、北朝鮮による‘即時的核放棄’要求の拒否は、(4)の‘良いスタート’という言葉によっても示唆されます。上述したように、北朝鮮の基本路線は、核兵器温存と経済的見返りの両目的を獲得できる‘段階的核放棄’です。‘スタート’と表現している以上、同会談で全てを決めるわけではなく、北朝鮮は、長期的な継続的協議を想定していることが分かります。第三の指摘し得る点は、北朝鮮が決して自らの主張を諦めていないことです。
以上に主要な論理上の問題点を述べてきましたが、ここから分かることは、金桂寛外務次官の談話は、北朝鮮の路線変更を意味しておらず、その前後において何らの変わりもないことです。しかも、同談話は、同国の独裁者である金正恩委員長が発表したものでもありませんので、逃げ道を残しているとも言えます。否、国家のトップとして正々堂々とトランプ大統領と向き合わず、自分は部下の蔭に隠れているのですから、何とも情けのない独裁者とも言えるかもしれません。
何れにしましても、北朝鮮がアメリカの要求する‘即時的核放棄’を受け入れない限り、同会談が開催されることは殆どあり得ませんので、金桂寛外務次官の談話を以って開催の可能性が高まったと判断するのは早計のように思えます。結局、北朝鮮が、アメリカの要求通りの核放棄か、軍事制裁を含む制裁強化かの、二者択一の瀬戸際にあることには変わりはないのではないでしょうか。
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北朝鮮が米朝首脳会談の開催を申し出た思惑とは、アメリカを‘段階的核放棄’という、同国の核温存戦略に巻き込むためであったと推測されます。しかしながら、この思惑は外れ、現実には、自国を瀬戸際に追い詰める‘悪手’であったのかもしれません。
同会談の中止をめぐる米朝間の応酬は、結局、北朝鮮が半ば同会談の開催をアメリカに懇願する展開となりました。軍事制裁をも辞さずの態度を以って米朝首脳会談の中止を決断したトランプ大統領に対し、北朝鮮側は、即座に金桂寛外務次官が再考を促す談話を発表しています。
凡そ8つの内容から成る同談話一読すると、北朝鮮の弁明のように解されるのですが、起承転結風に再編集すれば、(1)米朝首脳会談は、世界の平和と安定を願う人類の念願である、(2)北朝鮮は、同会談で解決するための努力を続けてきた、(3)にも拘らず、アメリカは、一方的な核放棄を迫った、(4)それ故に、米朝首脳会談は‘良いスタート’として開催されるべきである、となります。このように整理しますと、北朝鮮が詐術的な詭弁を弄していることは明らかとなります。
第一に、人類の念願は、米朝首脳会談の開催ではなく、あくまでも‘北朝鮮の核放棄’です。北朝鮮は、巧妙に両者を入れ替えることで、同会談の中止を平和に反する反人類的な行為と認定し、‘人類の平和’の名の下でトランプ大統領を断罪しているのです。
第二に注目されるのは、(2)と(3)との繋がりです。ここでも、北朝鮮は、会談中止の責任をアメリカに転嫁しています。北朝鮮側の努力を無にしたのは、アメリカが‘即時的核放棄’を要求したからと述べているからです。つまり、間接的に、アメリカに対して同要求を放棄し、自国が主張する“段階的核放棄”の路線に同意せよ、と迫っているのです。
そして、北朝鮮による‘即時的核放棄’要求の拒否は、(4)の‘良いスタート’という言葉によっても示唆されます。上述したように、北朝鮮の基本路線は、核兵器温存と経済的見返りの両目的を獲得できる‘段階的核放棄’です。‘スタート’と表現している以上、同会談で全てを決めるわけではなく、北朝鮮は、長期的な継続的協議を想定していることが分かります。第三の指摘し得る点は、北朝鮮が決して自らの主張を諦めていないことです。
以上に主要な論理上の問題点を述べてきましたが、ここから分かることは、金桂寛外務次官の談話は、北朝鮮の路線変更を意味しておらず、その前後において何らの変わりもないことです。しかも、同談話は、同国の独裁者である金正恩委員長が発表したものでもありませんので、逃げ道を残しているとも言えます。否、国家のトップとして正々堂々とトランプ大統領と向き合わず、自分は部下の蔭に隠れているのですから、何とも情けのない独裁者とも言えるかもしれません。
何れにしましても、北朝鮮がアメリカの要求する‘即時的核放棄’を受け入れない限り、同会談が開催されることは殆どあり得ませんので、金桂寛外務次官の談話を以って開催の可能性が高まったと判断するのは早計のように思えます。結局、北朝鮮が、アメリカの要求通りの核放棄か、軍事制裁を含む制裁強化かの、二者択一の瀬戸際にあることには変わりはないのではないでしょうか。
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