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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮問題をめぐる中ロの対話路線のシナリオを読む

2017年07月09日 16時42分03秒 | 国際政治
北朝鮮ICBM、対応協議=半島非核の責務再確認―米中首脳
北朝鮮問題をめぐる中国とロシアによる対話路線の提唱は、その実、軍事バランスの崩壊を恐れた両国によるTHAAD撤廃交渉への誘導である可能性は濃厚です。それでは、中ロは、アメリカに対してどのような道筋でTHAAD撤廃に追い込もうとしているのでしょうか。

 先の中ロ共同宣言で示された交渉開始条件は、米朝両国による行動の一時停止です。北朝鮮に対しては核・ミサイル開発の凍結を求める一方で、アメリカには、米韓軍による大規模な軍事演習の中止を求めています。この段階では、THAADの撤廃問題は、交渉の枠外に置かれています。

 それでは、何時、核心となるTHAAD問題が持ち出されるのかと申しますと、それは、交渉開始後に予定されている非核化といった将来的な朝鮮半島のヴィジョンに関連する議題に移った時点ではないかと予測されます。この時、中ロは、北朝鮮による核・ミサイル開発の完全放棄と引き換えに、アメリカに対して、THAADの配備撤廃を要求することでしょう。つまり、核・ミサイル放棄とTHAAD撤廃を抱き合わせのセットにし、アメリカに同条件を呑ませることこそ、中ロの真の目的なのです。アメリカが交渉を決裂させれば、全世界のマスメディアを動員し、平和の破壊者として批判の矛先がアメリカに向くようにして…。

 この取引における最大の利得者が、中国とロシアの両国であることは確かです。何故ならば、中ロとも、自らの軍事力を削減することなく、一方的に、アメリカの軍事的優位性を削ぐことができるからです。核・ミサイル開発を放棄する義務を負うのは北朝鮮であり、中ロにとっては、痛くも痒くもありません。因みに、冷戦崩壊の過程では、ソ連邦は、アメリカのSDI構想を止めるために、アメリカとの直接交渉における核戦力を含めた大幅な軍事力削減という代償を払っています。

 現状を見ますと、中国は、経済制裁の鍵となる石油禁輸に踏み込んでおらず、ロシアも、半ば公然と北朝鮮を後方から経済支援しています。こうした消極的姿勢は、交渉において上記の交換条件を米朝に求める際に、北朝鮮に核・ミサイル放棄を強制する“最終手段”として留保しているとも考えられます。現段階では、伝家の宝刀を抜くのはまだ早いのです。

 北朝鮮の脅威が取り除かれたとしても、より高性能のICBMを中ロが保有・開発をしている限り、アメリカの安全は保障されません。となりますと、アメリカが迂闊に同交渉に応じますと、キングを捨ててビショップをとる手を打たされることとなります。今日、国際法を無視し、無法国家と化している中国やロシアの覇権主義的行動を見る限り、真の脅威が両国にあることは明白です。本シナリオは推測の域を出ませんが、中ロの行動を見ますと、可能性はかなり高いように思われるのです。

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コメント (2)
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