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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中ロにとっての北朝鮮問題の核心はTHAAD配備問題か?

2017年07月08日 15時06分07秒 | 国際政治
THAAD迎撃実験、近く実施=ICBM発射の北朝鮮に対抗―米軍
 北朝鮮によるICBM発射実験を機に、米中ロの三国関係は、新たな段階に入ったように見えます。それでは、この三国には、どのような変化が見られるのでしょうか。

 まず、ロシアの動きですが、ロシアはここに来て、北朝鮮の後ろ盾であることを最早隠さなくなり、露骨なまでに北朝鮮擁護論を展開しています。かねてより北朝鮮の核・ミサイル実験にはロシアによる秘密裏の技術支援が指摘されておりましたが、事実上、これを認めたと言っても過言ではありません。この行為は、核保有国に核兵器の不拡散を義務付けたNPTにも違反しますので、国際社会では、ロシアに対する批判も起きることでしょう。

 次に中国を見ますと、中国は、ロシアと共に北朝鮮問題解決のための共同声明を発表し、ロシアと足並みを揃える姿勢に転じています。同共同声明では、話し合い解決の道筋を提案し、徹底的な経済制裁による解決には反対していますので、仮に米中合意として北朝鮮問題に関する「百日計画」が存在しているとしますと、この合意は反故にされたことを意味するのです。因みに、話し合い解決の道筋とは、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結すると同時に、米韓も大規模合同演習を停止し、しかる後に交渉に入るというものです。

それでは、最後にアメリカの動きに注目しますと、アメリカの当問題に関する中国への期待は急速に萎んでいるように見えます。上述した中ロ共同声明が決定打となったのでしょうが、国連安保理においてヘイリー米国連大使から軍事行動への言及があったことに加えて、トランプ大統領も、北朝鮮に対して「悪い振る舞いは結果を伴う」と述べ“強力な対応”を表明しています(もっとも、その後、マティス国防長官はトーンダウンしたコメントを公表…)。

 いわば、中国がロシアに鞍替えした格好になりますが、その背景には、両国とも、THAAD配備反対における共闘関係があります。否、真に対話による解決を望んでいるのは北朝鮮ではなく、この問題を契機にアメリカとTHAAD撤廃交渉を開始したい中国とロシアであるとする見方もできます(おそらく、上述した対話路線には、北朝鮮の核・ミサイル放棄の見返りとして、アメリカのTHAAD撤廃も条件として含まれるはず…)。THAAD撤廃こそ中ロの真の目的であり、かつ、アメリカにとりましてもTHAADこそ核ミサイル攻撃から自国を守る切り札であるとしますと、アメリカが、THAAD撤廃に易々と同意するとは思えないのです。

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コメント (2)
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