万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

財政出動なき景気回復はあり得るのか?

2009年01月23日 11時06分17秒 | 日本経済
短期社債の買い切り決める…日銀政策決定会合(読売新聞) - goo ニュース
 財政の財源が、国民や企業から徴収した税金であることを考えますと、本来、不景気の度に、巨額の財政出動を行うことは望ましくはありません。結局それは、国民の強制借金に過ぎず、最終的には、全て国民負担となるからです。そこで政府は、不景気にあって、如何に財政出動を最低限に抑えながら、景気回復策を行うのかという、大変、難しい課題に取り組まねばならなくなるのです。

 かつては、自国の通貨安誘導する”近隣窮乏化政策”を取り、輸出力を強化するという方法もありましたが、近年では、この手法は自己中心的な行為と見なされ、あまり用いられなくなりました(昨今の円高は、行き過ぎの観がありますが・・・)。対外通貨政策も”ダメ!”となりますと、残された手段は限られてきます。

1)そこで、最も期待されるのが、中央銀行の金融政策です。現在、日銀は、3兆円のCPの買取を決定したと言われておりますが、今般の不況の原因が、金融危機であることを考えますと、バブル崩壊の損失を”封じ込める”手法は、財務省の国債発効よりも、中央銀行の債権保有の方がまだ安全と考えられます。何故ならば、国債の場合には、政府に償還と利払いの義務が発生しますが、中央銀行の債権買取には、この負担はありません(むしろ、利払いを受ける権利が発生・・・)。また、この手法は、民間の金融機関の貸出能力を向上させますので、民間企業の資金繰りを支えることになります。倒産を防ぐことができれば、雇用や所得の維持にもつながります。

2)次に考えられるのが、バブルを元に状態に戻す政策としてのローンなどの借り換えやモラトリアムの促進です。これは、日本国よりも、アメリカで行う方が効果的かもしれませんが、個人倒産や企業倒産を避けるために、中央銀行の低金利政策の効果を末端まで及ぼす必要があります。この政策には、民間金融機関の協力か、あるいは、法整備が必要となるかもしれません。

3)また、銀行の自己資本比率規制の緩和も、検討課題の一つです。BIS規制では、自己資本比率を下回る場合には、金融機関が経営の危機に直面します。国際基準としての8%や国内基準としての4%が妥当な比率であるとする合理的な根拠は脆弱であり、また、証券化という抜け道もあります。規制の緩和により金融機関の倒産を防ぐことができれば、連鎖倒産を回避することができますし、金融機関は、安心して不良債権の処理を進めることもできます。

4)さらに、景気の回復には、消費の喚起が必要です。定額給付金のような”ばらまき”を避けるとしますと、新たな製品開発や技術開発に資する規制緩和は、政府の打てる手の一つであるかもしれません。企業が、マーケティングの調査を行い、不況下でも消費者が欲しがる新たな製品を作ることができれば、市場を持続的な成長路線に戻すことができます。

 もし、どうしても財政出動を行うならば、1)企業の収益構造を改善する投資(流通コストの低下に繋がるもの・・・)、2)失業対策と雇用ネットワークの整備、3)将来性の高い技術・研究開発への投資(エネルギー開発や環境技術・・・)4)新産業育成のための人材養成と教育の強化・・・などを挙げることができます。市場のメカニズムが正常化するよう環境を整えることこそ、政府が、最優先して取り組むべき課題ではないか、と思うのです。

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コメント (10)
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